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第十話 「冗談みたいな悪夢」

 自分が悲鳴をあげたかどうか、それすら理沙は覚えていなかった。

 ただ、覚えているのは、自分の足を掴んだのが白い手だということ。

 穴から虚ろな目で自分を見つめてきたのは、丁髷を結った老人だということ。

 そして、その老人が、生きていないこと。


 それだけだ。


 カチッ

 カチッ

 カチッ

 

 理沙が自分の置かれている状況を把握できたのは、この音のせい。


 拳銃の引き金の音。


 その音が発する意味まで理解が及んだとき、理沙は、自分がさらに悪い状況に追い込まれていることに気づいた。

 

 すでに、弾丸は、ない。

 

 足を掴まれた理沙は、パニック状態のまま、老人目がけて、老人が、腕を吹き飛ばされ、頭を砕かれ、奈落の底へ堕ちていくまで、撃ち続けた。

 


 理沙は護身の術を失った。



 穴の淵に何人もの亡者が取りついた。


 こちらに向かってくるのは時間の問題だ。


 理沙には、それをどうすることも出来ない。

 

 理沙には、自分を護る術すら、存在しない。

 

 出来ることは二つ。


 ここで殺されるか、それとも―――。


 理沙はとっさに逃げ出そうとして、動きを封じられた。

 ハンドバックを、誰かが掴んでいる。

 そして、背後からは、この世のモノとは思えないようなうめき声が聞こえてくる。

 「じ、冗談じゃないわよぉ!」

 泣きそうになりながら、理沙は力任せにハンドバックを引っ張ったせいで、ハンドバックが引きちぎられ、中に入っていた化粧品やその他諸々が床を転がっていく。

 その中に、理沙は光明を見いだした。

 

 それは、小さく畳まれた封筒。


 中身は―――。


 

 理沙は、とっさにそれを掴むと、出口へ向けて駆けだした。

 

 幸い、亡者の動きは鈍い。


 出口まで出た理沙は、一挙動で拳銃の空薬莢を抜き取り、破り捨てた封筒の中から取りだした、新たな弾丸を装填した。

 

 ―――今度、あの子に会ったら、キスくらいしてあげよう。


 理沙はそう思った。


 法儀式済み水銀弾。

 加納重工が近衛軍向けのみに製造している対妖魔戦闘用特殊弾。

 純銀製マケドニウム加工弾殻で覆われた法儀式済み水銀弾頭を採用した超高級品。

 一発で妖魔を撃破することができる、騎士以外の人間が使える最も有効な「兵器」。

 警視庁所属の理沙がどうしたって手に入る代物ではない。

 

 (もしもの時、使って)

 

 そういって、38口径弾10発を理沙に託したのは。水瀬だった。


 (危険な仕事ばっかりだから……ごめんね)


 使うはずはない。

 そう思っていたのは、私の甘さだ。

 水瀬クンは、万一に備えてくれていた。

 だから、今度、会えたら……


 弾を込め終わった理沙は決めた。


 「とりあえず、一発殴るか」


 うん。それがいい。

 私はショタコンじゃない。

 私のストライクは―――


 理沙は、白いモビルスーツ―――ではなく、少なくとも、ゴツサではいい勝負の上司の顔を思い浮かべながら、片手で携帯電話をかけ続けの状態にして、地面に置いた。

 異常事態が発生していることは、これで署に知れる。

 しかも、ここは住宅街だ。

 ここで発砲すれば、いやでも通報が、そして。仲間が―――

 

 ちらりと後ろを見る。

 パトカーのエンジンはかけっぱなしのままだ。

 万一の時はすぐ逃げられる。 


 理沙の準備が整うのを待っていたように、出口からは、緩慢な動きで亡者達がはい出てくる。

 先頭の亡者は白い着物姿。

 首がないのは、斬首された亡者なんだろうか?

 その後ろにも、何人もの亡者がいる。

 まともな死に方をしていないのは、その姿でわかる。

 唯一、幸いなのは、地下室からの通路が狭いため、一体ずつしか出てこない。ただ、それだけだ。

 

 「登場する作品、間違ってるわよ?」

 理沙は舌なめずりしながら言った。

 「この作品は、手に汗握る美貌の女警察官のサクセスストーリーなのよ」

 

 理沙は、引き金を引いた。


 

 3発

 

 4発


 5発



 まるでゲームセンターの感覚だ。

 

 1発ごとに、確実に亡者は倒れ、そして動かなくなる。


 だが、亡者を5体も倒した勇者であるべき理沙は、発砲の度、恐怖心を強くしていた。

 

 あと、4発

 あと、3発

 あと―――



 そう。

 撃てば撃つだけ、護身の術が減るのだ。

 つまり、理沙の置かれた状況は、よくなるどころか、逆に悪化するだけ。

 

 「やっぱり殴る!」


 理沙は叫んだ。


 水瀬クンは、遠回しに私を殺すつもりだったんだ!


 でなければ、弾丸10発なんて少なすぎる!


 護るつもりなら機関銃もってこい!弾丸100万発くらいつけて!


 「水瀬クンのバカぁ!」


 カチンッ!

 

 そのセリフに気を悪くしたのか、銃がいうことを聞かなくなった。


 「―――え?」

  

 弾丸が水瀬のモノだったのがまずかったのか、引き金が引けない。

 「くっ―――このぉ!」

 渾身の力を込めても、引き金が作動しない。


 「こんな時に!」

 

 理沙は、銃を亡者目がけて渾身の力で投げつけた。

  

 顔面を直撃された、磔にされた女だろう亡者が仰向けになって倒れ、後続の亡者達も将棋倒しになって倒れていく。

 

 「冗談じゃないわよ!」

 理沙は、パトカーの運転席に飛び乗り、ギアをバックに入れ、動きを止めた。


 周囲を、街の景色を、見たからだ。


 逢魔が時

 

 昔の人は、そう呼んだ刻


 実際、私は魔に出会っている。

 

 だけど―――


 家々に灯された灯りは、そこに人が、理沙が護らねばならない人々がいるということだ。

 

 理沙は悟った。

 

 水瀬クンなんか関係ない。

 

 最初から、逃げ場はなかったんだ、と。




 ここで食い止めなければ、どんな事態になるか。


 理沙は考えたくすらなかった。

 

 亡者達は出口から続々と出てきている。

 ここで、止めなければならない。

 

 重機が入りやすいように作られた坂を登り切るのも時間の問題だ。

 何としても、ここで止めなくては!


 「やるしかないっての!?」


 理沙は、ギアをドライブにたたき込むと、アクセルを力任せに踏み込んだ。

  

 「―――くっ!」

 坂に飛び込む直前、パトカーから飛び出す。

 鈍い音に爆発音が続く。

 

 「痛ったぁ〜っ……」

 こんなこと、熱血刑事ドラマの中だけだと思っていた。

 まさか、こんなことまでやるハメになるなんて……。

 

 「もう、最低……」

 黒い帳に包まれようとする空には、星がまたたいていた。

 「……星」

 理沙は、地面に大の字に転がりながらぼやいた。

 

 星

 

 目指したのは、星

 

 一度は手にした星


 だけど、今は手を伸ばしても届かない、星―――


 今の私は―――



 「―――私、どこまで転がり落ちるんだろう」


 キャリアがまたたく星なら、今の私は、星くずか?燃え尽きようとする流星か?

 全く、今年に入ってから、始末書だけで何枚書いたんだろう?

 何度、上司に怒鳴られたろう?


 そして……


 泣きたくなる位、痛む体にむち打って起きあがった理沙の目の前で、パトカーが燃えていた。

 地下室の出入り口にめり込んだ時に、燃料が漏れ出たんだろう。

 新車のパトカー一台、ダメにした。

 拳銃もだ。

 警察手帳は、確かハンドバックの中だ。

 

 また、始末書、何枚書くんだろう。

 減棒は、確定だろう。

 また、カップラーメンが主食の日々に逆戻りだ。


 「クスン……私、いつになったら、白いご飯が食べられるの?」


 あまりといえばあまりのことに、目の前がぼやけてくる。


 遠くからサイレンの音が聞こえてくるのを聞きながら、理沙はもう一度、大の字に転がって星を見つめた。

 

 

 坂を転がる石のようなわが身の痛みを感じつつ―――。

 






 発砲。パトカー炎上。

 およそ閑静な住宅街で起きていいことではない。

 だから、住民達は110番へ通報し、野次馬となった。


 「全く、どういう騒ぎだ?」

 理沙にとって恐怖の上司、岩田警部が、理沙からの事情説明を本部に報告し終わったらしい。

 「これは一体、何の冗談だ?」

 黒こげになったパトカーを一瞥した岩田の質問に理沙は言った。

 「ホラー映画に出演したんですよ」

 絆創膏を貼り終わった理沙は、岩田から拳銃を受け取ると、弾倉を確認した。

 対人用の通常弾頭。

 それが屍鬼相手に気休め程度でしかないことは分かり切っている。

 あの穴からはい上がる亡者を思いだし、理沙は戦慄した。

 「後一歩でスプラッターに趣旨替えでした」

 良くできた冗談だと思った。

 だが、受けた相手は表情を崩さなかった。

 「俺にとっては、悪夢だよ。あのパトカー、俺が使うはずだったんだぞ?」

 「私もです」

 

 制服組による付近の封鎖が始まった。

 「公には事故だ。いいな?」

 「私のせいですか?」

 「不審者への威嚇発砲の末、逃走した不審者を追跡しようしたとた所、ギアの操作を間違え、パトカーは大破・炎上した。筋書きとしてはこんなところだ。安心しろ。始末書は書かなくていい」

 「何故です?」

 「ん?」

 「何故、今回はそこまで破格の扱いなんですか?」

 「……よく考えてみろ」

 岩田は言った。

 「住宅街のど真ん中に、「亡者だか屍鬼の巣窟があります」なんて公に出来るか?パニックが起きるのは目に見えている。その責任を、誰が、どう、とれるというんだ?」

 「……」

 「村田、お前はよくやった。少なくとも、連中を外に出さなかっただけでも、大したモンだ」

 「この後は?」

 「夜、近衛が内密に始末する。それまではあくまで、事故だ」


 ●尚武地下倉庫


 カリカリカリカリ……


 倉庫の壁の一部が崩れ、ベニアが貼り付けられている。

 その向こうから聞こえてくる、奇妙な音。

 それが、亡者達がベニアをひっかく音だと聞かされた時、博雅には、このベニアこそが、この世とあの世の境目だとすら思え、背筋が寒くなった。

 不安を隠すことが出来ず、博雅が水瀬達を見た時、


 ゴツンッ!!

 「いったぁ〜〜っ!!」

 倉庫中に響きわたるような悲鳴が上がった。

 理沙が水瀬の頭を殴った音だった。


 「ったく、で?どうするの?」


 手をさすりさすり、理沙は水瀬に訊ねた。

 「向こう側は、屍鬼封じの符が効いているから、連中が出ることはないけど」

 「このベニア外して突入。区画単位で潰しながら行く」

 「あっそ、単純なんだ」

 「シンプルイズバスト、だよ?」

 水瀬が、あれっ?という顔をしたとき、すでに遅かった。

 ガンッ!!

 「このエロガキが!どこ見て今のセリフ吐きやがったぁ!?」

 「あ、あの、警部補、その辺で」

 恐る恐る声をかけてきたのは、博雅だった。

 「セクハラは万死に値する犯罪行為だって知らないの!?」

 「き、気持ちは察しますが、ここで水瀬に死なれると、大変困るわけで」

 肩で息をしながら、水瀬の胸ぐらを掴む理沙をなだめすかす博雅は、とにかく、理沙の手から拳銃だけは取り上げた。

 「銃尻で人を殴るのは警察官、というより、人としても問題が」

 「まあ、いいわ」

 理沙は呼吸を整えた後、言った。

 「長生きしたかったら、言葉には気をつけなさい!」

 

 「ううっ、ヒドイ目にあった」

 装備を調えながらぼやく水瀬と

 「自業自得」 

 同じく、装備を調えながら冷たい視線のルシフェルが叱るように言う。

 「綾乃ちゃんに言いつけるから」

 「な、なんで?」

 「叱ってもらう」

 「これで桜井さんがいれば、完璧なんだがな」

 博雅のため息混じりの言葉に、二人は黙った。

 「とにかく、助けなくちゃ」

 「うん」

 「で?どうやって?」

 「まずは―――」

 水瀬は、足下にあったバスケットから黒い、大きな筒を取りだした。

 「何ソレ?」

 「対戦車用大型手榴弾。まず、これを投げ込んで」

 筒を床に置くと、その横にルシフェルが四角い段ボール箱のようなモノを置く。

 「超高燃焼カクテル爆弾。これで穴の中を高温で焼き払って」

 最後に二人が取りだしたのは、巨大な箱に入った手榴弾の山。

 「片っ端からこれを投げ込んで始末します」

 「ちょっと待て」

 理沙が頭痛を抑えながら水瀬とルシフェルに言った。

 「ようするに、爆弾よね?そんなことしたら、中はどうなるの?」

 「ぐちゃぐちゃの黒こげ」

 ルシフェルも無言で頷く。

 博雅は二人の横で頭を抱えている。

 「あんた達、魔法騎士でしょう!?こう、魔法で何とかできないの!?」

 「……」

 「……」

 ちらりとお互いを見た後、水瀬が言った。

 「だって面倒くさいし」

 うんうん。とルシフェルも肯定している。

 「近所迷惑だから止めなさい!」

 「警部補、それはそれで違うんでは?」

 

 結局、「爆発音と衝撃が、穴にどんな影響を与えるかわからないため」という建前。本音は「魔法騎士らしいことをマジメにやれ!」という理由で、

水瀬達は普通に穴に侵入することになった。


 「せめて閃光弾くらいはいいでしょ?」

 「音が出なければね」

 「うん。じゃ、ルシフェ。いくよ?」

 「了解」

 サングラスをかけ、突入体勢をとる二人。

 「せぇの」

 水瀬が手榴弾を投げ込んだ。


 バンッ


 破裂音と共に、ベニア板の隙間から強い光が漏れてくる。

 バリッ!

 ベニア板が蹴り破られ、水瀬とルシフェルが突入する。

 強い閃光に邪魔され、何が起きたのか、理沙にも博雅にもわからない。

 「入り口は確保したよ?」

 閃光が止み、視界が復活した時、穴の向こうからひょっこり顔を出した水瀬にそう言われ、ようやく突入に成功したことを知っただけだった。

  

 博雅は恐る恐る穴をのぞき込んだ。


 深い。


 上から照明で照らされているから、底を見ることは出来るが、20メートルはあるだろう。


 そして

  

 「あの下の白いのは―――」

 「亡者」ルシフェルが事務的なまでにきっぱりと言った。

 「屍鬼のお仲間。大丈夫。始末してあるから」

 「死にきれないって言葉はあるけど、本当にあるんだなぁ」

 「死にたくて死ぬ訳じゃないもの」

 「でも、人はみんなそうだ」

 「そう。でも、ここで死んだ連中のほとんどは、この世の業が強すぎるのよ」

 「業?」

 「うん。罪を犯し、その罪の代償として与えられた死だもの。この世への執念ともいえるかしら。普通なら、ああよく生きたって思えるのに、業が強いから、死にたくないって念が、自分は殺されるっていう恨みとなって」

 「魄ってやつか」

 「そう」

 博雅はため息まじりにぼやいた。

 「俺は、畳の上で大往生したいよ」

 「腹上死ってヤツ?」

 水瀬のポツリとした言葉を、周囲は聞き逃さなかった。


 「わーんっ!ルシフェの薄情者ぉ!」

 穴底へ、文字通り蹴り落とされた水瀬が、亡者のなれの果ての中から大声で文句を言った。

 「ちょっとした冗談なのにぃ!」

 返事のかわりにルシフェルが穴底に投げ込んだのは、先程の爆弾。

 

 鼓膜がどうにかなったかと思うような爆発音と、地震と間違えるような振動が部屋を揺るがした。


 「ル、ルシフェル!」

 博雅が残った手榴弾の山を投げ込もうとするルシフェルを羽交い締めにして止める。

 「落ち着いて!これだけやれば、いくらアイツだって懲りる!」

 「……信じられない」

 「わかった!事が終わったらどうとでもしていい!だけど、これ以上はダメだ!いいね!?」

 「……わかった」

 残念そうに箱を床に置いたルシフェルが博雅に言った。

 「穴に降りるけど、博雅君。笛をお願い」

 「あ?ああ」

 「30分位は最低でも。村田警部補、あと、お願いします」

 「わかったわ。一応、騎士警備部が外に控えてくれているから。大丈夫よ」

 

 そして、ルシフェルは穴の中へ向け、宙を舞った。


 博雅が懐から笛を取り出すのを眺めながら、理沙は博雅に言った。

 「君、浮気したら殺されるわよ?」

 「わかってます。男として、悲しくなるくらい……」

 

 

 穴の底に降り立ったルシフェルがまずしたこと。

 それは、パートナーの捜索だ。

 「水瀬君?」

 「こ、ここだよぉ……」

 足下から声がする。

 「なんだ。まだ生きていたんだ」

 「どいてぇ……」




 「ヒドイよぉ。防御シールドの展開、あと少し遅れたらBBQだったんだから」

 「ハンバーガーとどっちがよかった?」

 「……つみれの方。つくねでもいいよ?」


 立ち上がる水瀬には、何の外傷もない。


 「なんだか、最近、こういうのが多いなぁ。……僕」

 「自業自得。最近、やたらとセクハラ発言が目立つよ?」

 「二課の人達と一緒だと、こういうの当たり前だから」

 「朱に交われば赤くなるっていうけど、ダメ。立場考えなきゃ。仮にも近衛の」

 「はぁい……」

 「とにかく、綾乃ちゃんと桜井さんにはいいつけるからね」

 「だからそれ止めてってば!」

 

 穴の上から笛の音が聞こえてくる。

 博雅の演奏、水瀬達にとって心強い支援が始まった。

 

 「どっち?」

 「こっちね」

 ルシフェルが指さす方向には、ぽっかりと横穴が開いていた。

 「じゃ、行こう。トラップ回避のため、飛行して」

 「了解」

  

 途端、二人の体は重力の束縛から解放されたかのように宙を舞い、そして横穴へ向けゆっくりと進んでいった。


 穴の先にいるのは、あの時一緒に遊んだ智代であり、大切なクラスメートの美奈子。


 どっちにしても後味が悪いことになるだろう。


 「ねぇ、水瀬君」

 「何?」

 「斬れる?」

 「……斬りたくない」

 「私、斬ろうか?」

 「いい」

 水瀬は言った。

 「ルシフェルにそんなマネさせたくない。ルシフェルにとっても、大切な友達でしょう?」

 「――うん」

 「今は、桜井さんを元通りにする方法を考えよう」

 「元通りに戻ったら、何て言う?」

 水瀬は、少し迷った様子で、言った。



 「はじめまして、かな?」


 

 






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