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かみさま

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/03/22

 昔。

 私を祀った者達がいた。


「社を建てよう」

「神を祀ろう」

「神へ祈ろう」


 人々の想いにより私は祀られた。

 平和な時代を生きた。

 豊かな時代を過ごした。


 ある日。

 大きな戦争が起こり人々は私に願った。


「力をください」

「生きる力を」

「勝つ力を」


 私は可能な限りの力を貸した。

 動けないままこの社で。


 戦は続いた。

 私を祀った者達は段々と姿を消した。

 死んだのかもしれない。


 やがて。

 誰も来なくなった。

 寂れた社で私はそのまま凍った。

 石のように。



 *



「あなたは?」


 声がした。

 苔の生えた瞼が自然と開いた。


「この地の神か?」


 久方ぶりに見た人間だった。


「神だ。この地の神だ」


 返事をする。

 すると久方振りに見た人間は笑う。

 その笑みは実に純粋で。

 明るく、美しさほど感じるほどだった。

 肌の色が違うことなど気にもならないほどに。


 故に私は問う。


「白い人間よ。私を祀っていた黄色い人間はどこへ消えた?」


 白い人間は笑顔を打ち消した。

 そのまま意図の掴めぬ謝罪を一つして。

 それっきり。



 今や、社は荒れ果てた。

 この場所はこうして朽ちていくのだろう、と思った。


 風がぴゅうと吹いた。

 だが、それっきりだ。

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