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『無限の付与術士』~追放されたバフ魔法使い、無限の魔力で世界最強に~  作者: LA軍@呪具師(250万部)アニメ化決定ッ


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第4話「燃える少女」

 ゲギャァッァアアア!!


「うわぁぁぁああ!」


 ダダダダっ!


 猛烈な勢いで迫りくるゴブリンに驚いて、全力疾走で駆けるキャシアス。

 しかし、薄暗い洞窟は凸凹していて今にも足を取られそうだ。にもかかわらず、ゴブリンは慣れた足さばきで一気に迫ってくる。


「ひ、ひぃ! ひぃぃいい!」


 死ぬ!

 殺される!!


「だれだよ、ゴブリンが低ランクモンスターだなんて言った奴ぅぅ!」


 死に物狂いで洞窟から脱出を図るキャシアス。

 冒険者になった初めてのクエストがこれだ!


 『町はずれの洞窟でゴブリンを討伐』


 だって、一番ランクが低くて、キャシアスにもできそうなクエストがこれしか残っていなかったのだ。


 他にも初心者用として紹介されたものには、

 『薬草採取』『隣町への配達』『どぶ攫い』

 など色々あったのだが、そのどれもがキャシアスには困難だったからだ。


 まず薬草採取は、薬草に対する知識が乏しく、オマケにモンスターの沸く森での採取が一般的だ。つまり戦闘力がいるし、知識もいる。……論外だ。

 配達だってそうだ。隣町とはいえ、歩いて丸一日。街道は安全とはいえ、モンスターが出ないわけじゃないし、盗賊だってでる。……論外だ。


 そして、最後に悩んだのがどぶ攫い。これは町のどぶを清掃する仕事だけど、半日以上掃除をしてたったの銅貨2枚しかもらえない。これじゃパンしか買えないし、借金を返すこともできない。おまけにどぶにはスライムが沸くこともある。……論外だ!!


 そして、悩みに悩んだ末、選んだのが町はずれの洞窟に住み着いたゴブリンの討伐だが、これがなんと一体あたり銅貨5枚となかなかの破格なのだ。

 つまり何体か倒せば借金も返せるし、宿にも泊まれる──ひゃっほーい♪


 って、

「──論外だぁぁあああ!」



 ゲギャァァァアア!!


 頭上を掠めたゴブリンの一撃を紙一重で躱すと、なんとか見え始めた洞窟に入口に気づいて涙がでそうになる。


「やった!」


 やっと、やっと出口だ!

 ……え? 反撃しろって?


 できるかよ!


 念のため持ってきた木の棒はとっくに失くしたよ!!


「──うわっぁああああああ!」


 ばっ!


 そうして、命からがら洞窟から脱出すると、明るい世界に全身の細胞が歓喜の声を上げた。

 そのまま後ろを振り向くと、憎々し気に顔を歪めたゴブリンがいたが、それ以上追うつもりはないのか、汚い唾を吐いて、颯爽と洞窟の奥へと帰っていくのだった。



「「はぁ……死ぬかと思った」わ」


 ……ん?

 いま、声が──。


 さっきは気づかなかったけど、へたりこんだキャシアスの傍には、同じような格好をしたボロボロの少女が一人。


「な、なによ、アンタ! 文句あんの?!」

「え? も、文句は別に──」


 どうやら、洞窟の別の入り口から逃げてきた子らしい。

 勝気な瞳にくすんだ赤毛のツインテール。年のころはキャシアスと同年代で、装備はショートソードに皮の胸当て。

 ……どれもボロボロの中古品ッぽいけど、どうやら同業者のようだ。


「ぼ、僕はキャシアス。キャシアス・オーブ……あ、ただのキャシアスだよ」

 おっと、オーブリー家は勘当されていたんだっけ。

 家名を名乗ることはできない。だから、ただのキャシアス──……。

「は? 名前なんて聞いてないんだけど? っていうか、ただのって何よ」


 う……。


「いや、その──」

 どうやら、貴族の常識は通用しないらしい。


 ま、まぁ確かに、いきなり名乗られても困るか──。


「ご、ごめん」

「なんで謝んのよ──それより、どきなさいよ。アタシもう一回いってくるから」


 え?

 あそこにもう一回?!


「あ、危ないよ! 見たところ君もレベル1くらいの初心者でしょ?!」

「そーよ! だから、借金があんの!」


 うわっ。

 僕と同じだ──。


 キャシアスはまったく同じ境遇の、鏡移しのような彼女を見て、苦笑しかできない。

 しかし、そうこうしているうちに腰の埃を払った彼女はショートソードを手に、洞窟へ再度突入していった。


「す、すげぇ……」


 さすが冒険者。……あ、僕もか。

 しかし、あんな怖い目にあってすぐに入れる彼女の度胸には脱帽ものだ。もちろん、魔法使いと戦士という違いもあるだろう。


「剣を持ってたし──剣士さんかな?……あ、戻ってきた!」

「うきゃぁぁあああああ!」


 今度は早い。

 まぁ、さっきキャシアスを追いかけまわしていたゴブリンが近くにいただろうしね。


「はぁはぁはぁ、ぜえぜえ……もーいやぁぁ!」

「だ、大丈夫?」


「なによ! まだいたの?!」


 いや、まだも何も、10秒くらいしかたってないけど──。


「笑ってんじゃないわよ!」

「わ、笑っては──……それにもう無理だよ」


 見た感じボロボロだし。


「なによ! アタシは冒険者やんなきゃなんないの!! アンタみたいな趣味の奴と一緒にしないでよ!」

「しゅ、趣味?!」


「ふんっ! 趣味じゃなかったらなんなのよ! 綺麗な服にスリッパで丸腰ぃ?──……冒険者なめんじゃないわよ!」

「うぐ」


 そ、それは、だって──。

 しょうがないじゃん……。


「それに一回で諦めちゃって、だっさ~い!……こっちはね、生活がかかってんの! 家を追い出された農家の3女なんて、キモデブの嫁になるか、娼婦になるかの二択しかないの!」


 だったら!


「冒険者として生きていくほうが何倍もマシよ!」


 フンッ!

 そういって鼻息荒く再び洞窟に向かう彼女をみて、どこか既視感を覚えたキャシアス。


 いや、既視感だなんてとんでもない。


 キャシアスは漫然と生きて、運悪く家を追い出された。

 ……だけど、彼女は生まれたときから運命が決まっていた──……身体を売るしか道がないそんな世界に、真っ向から立ち向かった。


 キャシアスの生き様に似ているようで、まったく違う。

 つよい。強い少女だった。


「ま、待って──」

「あによぉ」


 ジロリと睨まれ思わずすくむキャシアス。

 だけど、怯まない。


「そ、そのままじゃ何度やっても勝てないよ」

「あ゛?」


 う、睨むなよ……。


「ぼ、僕、付与術士なんだ」

「ふよじゅつしー? なにそれ?」


 あ、知らない人か。

 えっと、


「その、装備とかに身体に魔法効果を付与できる魔法使い──……って、言えばわかる?」

「わかんない」


 ずるっ。


「え、えっとー。ま、まぁ、その試しに使ってみる?」

「……何が目的よ」


 え?


「いや、別に──」

 でもそうか。

 他人にタダで施すモノほど怪しいものはない。

「ふんっ。怪しいわね──。でもいいわ、付き合ったげる。その『ふよじゅつし』とか言うの頂戴よ、魔法なんでしょ?」

「う、うん。でも、『ふよじゅつし』じゃなくて『付与術(エンチャント)』ね。えっと」


 どうやら試してみる気になったらしい彼女に、付与術をかけようと試みるキャシアス。

 とはいえ、なんだかんだで初めてだ。


 ただし、魔法の使い方自体はジョブに着く前から実家で基礎から叩き込まれているのでわかる。

 それにジョブについたことで今はステータスが使用可能だ。


  ブゥゥン!


 念じると、ステータス画面が出現。

 そして、Lv1の付与術士が最初から覚えている付与術がひとつあった。



  ※ ※ ※


 レベル:1

 名 前:キャシアス

 ジョブ:付与術士

 ギフト:魔力無限


 ● 能力値


 体 力: 15

 筋 力: 11

 防御力:  8

 魔 力: (∞)

 敏 捷: 13

 抵抗力: 87


 ● 魔 法(付与術)


 ファイヤーエンチャント(Lv1)



(──なるほど。初期の魔法は、ファイヤーエンチャントだけか。……火属性の付与術みたいだな)


 ※ ※ ※ ※ ※

 ・ファイヤーエンチャント(Lv1)


  → 火の属性攻撃(Lv1)を装備に付与する。

    使用中1秒につき魔力を1消費する。

 ※ ※ ※ ※ ※



 うん。

 これを試そう。


「……剣を構えて」

「え? こ、こう?」


 身体の中にある魔力を練り上げて手の先にもっていく感覚。


 ……あった、この魔力だ!


「いくよ!」


 ファイヤーエンチャント!


「きゃ!」


 ボーボー!


「きゃ、きゃああ、あつい! あつ……くない?」

「はぁはぁ、う、うまくいった?」


 実は初めての使用だ。

 なんとなく(だる)さを感じたが、すぐにそれは消えた。……なにせ、魔力無限だしね。


「ど、どうかな?」

「……ど、どうって言われても──剣燃えてるんだけど」

「う、うん。それが『付与術(エンチャント)』だよ。火属性の攻撃(バフ)がついてる」

「へー。……魔法剣みたいね?」


 魔法剣?

 ……あぁ、それに似てるかも。


 ちなみに魔法剣とは、魔道具の一種でダンジョンなどで稀に発見されるアーティファクトだ。

 それには、なんと永続的に魔法効果がついており途切れない。そして、魔力を使用しないこともあり、相当高値で取り引きされるのだ。


 もちろん、ランダム産出なので、狙った効果の魔道具がでることはない。だから、基本的にかなり希少であるとされている。

 なかには、ピカピカ光るだけの鎧なんてのもあったりする。


「──まぁ、そんな大層(たいそう)なもんじゃないけどね。でも、僕の魔力が続く限りは、火属性の攻撃がずっと使えるよ」

 まぁ、

 魔力無限なんだけど。

「へ、へー。いいわ。これで試してあげる。ちょっとそこで待ってなさいよ!」


 え?

 ええ? 待つの?!


「今から行ってくるぅー!」


 そう言うなり、剣を構えて洞窟に再々度突入していく少女。


 ちょ!?

「げ、元気だなー……」


 つーか、名前も聞いてないし、

 そもそもなんで待たなきゃダメなの?


「……まぁいいか、やることないし」


 自分もゴブリン狩りのクエストを受けているというのに、すっかり忘れて空を見上げてボーっとするキャシアスなのであった。


 その間、なんだかよくわからないけど、

 さっきからず~っとながれているステータス画面に映る文字を見ながら──。



   『経験値を2ポイント獲得』

    『経験値を3ポイント獲得』

     『経験値を1ポイント獲得』



 ……なんだろこれ?

 経験値??──なんだっけか、これ?


 んー。


「どっかで聞いたような──」


 ……いや、それよりもあの子いつ戻ってくるの?

 かれこれ1時間ばかり待ってるんだけど──。 



 ……。

 …………。



「もう帰ろっかなー」




 それから数時間待っても彼女は戻ってこず、さすがに遭難を心配したキャシアスは一応ギルドに報告するのであった。

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