腐敗した街
エンドサークルの数値が99.8を示していた。
危ない匂いがする。
なぜ、こんな溶けた大地が存在するのか?
さっきまで平地だった緑と水、風の吹く景色は?
ブヨはどうして平然としているのか?
僕には分からない。
さっきまで親父の麻薬の話をしていたのに。
ブヨ「君が望む場所が現れた」
僕「どういう意味だ?さっきまで晴れてた」
ブヨ「君が”麻薬”は”苦く”て”緑”なんて思ったからだよ」
そんな簡単に思ったことが現実になるのか?
普通、好きな女の子が居たら告白するだろ?
そうしたら通報されて一気に警察行きでそのままだ。
画像撮影されてその姿がサイトに晒されるんだ。
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なんでそんな簡単な事を簡単過ぎる解答用紙になるんだ。
エンドサークルの数値だって高いままになってる。
世界滅亡だぞ?ブヨ、お前は何とも思わないのかい?
ブヨ「あの井戸、枯れているだろ?」
僕「気持ち悪いな。そのまま沼地を抜けろって?」
ブヨ「無理。ボクの体は通過できないんだよ」
僕「なぜ?」
ブヨ「スライムの体系は水と風って言ったでしょ?」
僕「そうだけど・・・なに?」
ブヨ「沼地は水が沈むんだ。浮かないんだよ」
僕「普通、水は浮くだろ。沈殿物は下へ落ちる」
ブヨ「違う。この世界じゃ落ちるんだ」
原理が違う。
この世界は僕の居た世界と真逆の法則で保たれている。
つまりブヨじゃなく、ゲロになるって事か?
今の聞いたら、吐き気がしそうだ。
体千切ったら、何にだって成るんだろ?
どうしてグロなんだ。
ブヨ「町は異臭がこもる。ここは危険だったっけ」
僕「だからさっきそう言ったろ?」
ブヨ「分からないんだ。ここは違うスライムが居そうで」
僕「ほら、足に浸けた。泥だし毒じゃない沼地だ」
ブヨ「君、前見えないの?ほら、そこだよ」
僕「・・・?」
目の前に見えるのは、スライムの死骸だった。
そこは既に人が住んで居ないし、何処かへ逃げたらしい。
どうも苦しそうでもなく寧ろ楽しそうに見える。
なんで、ゲームと違って苦しまないのかな?
勇者だってダメージ受けるんだぞ?
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ブヨ「勇気を出して踏み入れる事だ」
僕「お前も来いよ。ダメもとで」
ブヨ「じゃあ、千切って何かへ変えてよ」
僕「え~~?無理言わないでくれ」
ブヨ「ほらっ、ダメージ喰らったね」
僕「え?あ、いけない・・・」
エンドサークルの数値が99.9に進んだ。
なんて機嫌の悪い代物なんだろう。
今回は拒否したら進むのか・・・。
じゃあ、逆に機嫌を直してやろう。
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僕はブヨの言うとおり千切ってあげた。
とても柔らかくて、水が弾ける様に裂ける。
何とも不思議な感触がする。
これはもう”バブル”のよう。
泡って意味だけど・・・。
僕「雲に変われ!」
ブヨ、モコ、モわっ、ふかふか・・・
僕「水が風に乗って霧になり雲になった、のか?」
ぽよ、ぽよ、「やぁ、出来たね」ぽむ、ぽよよ
僕「へぇ、話せるんだ?ところで、街を探索するんだろ?」
ブヨ「そうだよ。人は居ないから宝物みたいなのを探そう」
僕とブヨはレンガの崩れた町を探索した。
布や土が所々で吸い込まれるように溶けている。
辺りを見回した、けど、宝物らしくモノは何処にも見当たらない。
どこへ向かえばあるんだろう?
エンドサークルの数値が99.7に下がった。
未だチャンスはある、大丈夫だ!
ブヨ「ほら、あの四角い扉の建物、鉄が錆びてるヤツ」
僕「よし、ぎぎぎぎぎ~~~っと開いたよ?どれどれ」
ブヨ「そこの本棚、光ってるね。そこどうかな?」
僕「ん?あ、鍵だな。どれどこの鍵だろう?細いな~」
ブヨ「左に箱がある。鍵が掛かってるよ?」
僕「よし、開けられるかな・・・ガチ、開いたよ、どれ?」
ブヨ「うんん~~、これは地図だね」
地図らしきものを発見した。
そこには記号や文書文字が連なっている。
色んな形の枠があって、何を書いているか分からない。
ブヨは分かるのかな?
僕「見てくれ。僕には理解できないよ」
ブヨ「どれ、霧を降らせてみよう」
すると、僕にも分かるように枠や記号、文字が見え始めた。
どうやら、この街を抜けた先に洞窟があって、泉があるらしい。
でも、泉なんかに何があるんだろう?女神でも居るんだろうか?
ブヨ「お楽しみだね。もしかすると力が増すかも」
僕「まぁ、お前は水で出来ているから膨らむかもね?」
そういって街の北側から洞窟へ向かう事にした。
何の手掛かりも無く、目的の無い旅だったなら危ない。
母を探して親父の事を知りたい。
なぜ精神科医とか学園の社長が親父と組んだのか。
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ところでスライムって何で水色なんだろう。
もしかしたら毒で出来てるんじゃないの?
アメーバ―体とも言われているし・・・
多分、片栗粉に水を溶かしただけかも?
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そしてエンドサークルの示す預言者の世界滅亡とは?
一体、何が起きるのか想像するだけで妙な気分になる。
別の世界へ迷い込むとか、元の時代へ戻るとか?
色んな本を読んでみたけど、ゲームとか史実どおりって妙だよな。
ブヨ「んん?、史実通りの縁なんて創りモノさ」
ブヨは単なる歴史に過ぎないと笑い、結構な道を歩いていく。
僕がもしここでのあの世界の史実の人なら、薬など飲まなかっただろう。
ジグザグ道を左へ避けては右へ避けると道が開かれてきた。
腐った街から暫くは樹木さえ枯れてしまっていた。
風はあるのに水は無い、だから泉が必要なのか?
ブヨ「まだ十分、保てるよ。問題ない~」
僕「意地張ってるだけだろ?少し揺れてるよ」
ブヨ「君も意地張ってるね、溶けそうだよ~」
地道に入り組む倒れた枝に絡む根っこ。
危うく足を引っかけそうだった。
もし、この先の洞窟でレベルアップできるならいいけど?
ブヨ「経験値は入らないよ?今の僕は食べ物にもならないからね」
僕「そんな~~」
なんだかんだ人助け。
既に避難した人達は再び戻って来るのか?
そして、数値は97.6に落ちい着いていたーーー。




