預言者の言うとおり
※途中、イメージ挿絵有
預言者は突然、目の前に指を絡ませた。
人差し指と親指を摘まむような恰好で。
僕「それは何ですか?」
預言者「エンドサークルの模様」
僕「風がスース―するんですけど?」
預言者「当然だ。君はこれから別の場所へ向かうのだから」
僕「見違えるような体験が得られるんでしょうか?」
預言者「父から離れた後は母を求めると」
エンドサークルに従えばこれから別世界へ向かい、母と会えるというのか?
もしそうなら、亡き母はどのような姿で僕を迎えるのだろうか?
少し興味がある。
暗闇に眩暈がするような円が描かれた。
それはまるで目を霞めるような痛みを放った。
8050という問題なんかよりも、もう少しマシな時は訪れないのか?
あの時「父は何処へと向かったのだろう」と思った。
30という年齢差で起きうる事、それは離反と言うのだろう。
形は違えど同じ思いを持つはずだと信じていた。
だが、それは遠縁のようにも感じられる気がした。
預言者「もう、いいだろう」
僕「一体‐―――?」
預言者「君の発つ場所が決まったのだよ」
僕「え?黄色いこの場所は?」
預言者「三途が見えるね?」
僕「青・黄・緑・・・赤?」
預言者「99.1を示した。善なる行いが示されたのだ」
僕「赤なるコレが善なの?」
預言者「さてね・・・君がこれからどうするか、楽しみだよ」
そう言い残して、老父は立ち去った。
僕はそのままその場に留まる様だった。
何故か不思議と懐かしい、感じがしている。
あの父の狂気ぶりは何だったのだろうかとも。
そして僕はそのまま少し前にへと進んだ。
―――――――――――
甘い香り、そして緑の深い匂い、青く澄んだ空気を全体に吸った。
とても気持ちがいいここは一体、何処なのだろう?
そう言っている内に土の上に歩を進めていた。
何故か森が続く道へと出てきたのだ。
僕「エンドサークルが99.15を示した。悪い予感がするコレは一体?」
?「あなたは誰?」
森から声が漂った。
サーっと風が吹くとそのまま目前に何かが現れた。
目の前に在るのは円形のブヨブヨした生物?
形状を保てないのだろうか、様子が変だ――――、
僕「君は一体、何者?」
?「ボクはスライム・・・ブヨと呼んでいいよ」
僕「ブヨ・・・、君は一体どうして現れたの?」
ブヨ「風が水を運んだ。ボクはそうして生まれるんだよ」
僕「ブヨは風と水で生まれるの?変なの・・・」
ブヨ「へへへ・・・面白いでしょ~」
バカに馴れ馴れしい会話をする。
父を追い駆けていた筈なのに、預言者の言うとおりに向かっている。
そこで出逢ったのがスライムだって事に少し驚いた。
50歳にもなって不思議なのが13歳の感覚に戻っていた事だ。
あの時、GAMEにスライムってのが現れて倒した事が在る。
そう、手が覚えているのだ。
その倒した時の感触を・・・痛かったろうな・・・。
僕「ねぇ、ブヨ、僕はこれからどこへ向かうのかな?」
ブヨ「段々感覚が戻ってきたようだね」
僕「何のことだい?」
ブヨ「あの時、僕を殴ったのは君なんだろう?痛くて潰れちゃってね~経験値沢山貰えた筈だよ~?」
何を言ってんだろう、経験値って、あのレベルアップするタイプのものだろう?
僕はエンドサークルを見てみると99.2の数値となっていた。
ああ、悪い事をしたんだ。
たかが経験値を稼ぐために叩いてしまった。
ブヨの言い方、少し痛みを感じた。
彼は生きていたのに僕が潰してしまったからか・・・。
ブヨ「気にしなくていいよ。生きる為でしょ?」
僕「え・・・でも、話してばかりじゃ進まなくてどうしよう?」
ブヨ「一緒に行こう。ボクは悪いヤツじゃないから」
僕「町へ行っても退治されない?」
ブヨ「大丈夫だよ。みんな平和を愛するからね」
エンドサークルの数値が90.3に減った。
これが89.9になれば世界は終わる。
善も悪もコントロールしなくては、数値が爆弾みたいになってしまうだろう。少し行動を改めて慎重に動いて行かないともしかすると、訳の分からない場所へ向かうと思うのだ。注意しよう。
―――――――――――
ブヨ「着いたよ」
僕「町だ。凄く広いね・・・へぇ」
ブヨ「ここはね、水が多いんだ。だからボクはそのままで居られるんだよ」
僕「平和なんだね本当に。少し水を飲みたいな・・・」
町人「どうしたんだい?スライム連れて遊びに来たの?」
ブヨ「うん、そんな感じだよ」
僕「実はお母さんを探していて」
町人「そうなんだ。訳ありなんだね、ゆっくりして行きな~」
そういうと、町人は去っていった。
少し歩いただけなのに、長く歩いていたみたいだ。
だから喉が渇くことを感じられたのか。
エンドサークルの数値は90.1を指している。
これも善なる行動だというのか、焦ってしまう。
ブヨは何処か僕の様子を窺うだけだし、困ったな。
僕「ブヨ、僕は次にどこへ向かえばいいんだろう?」
ブヨ「決めなくていい。ゆっくり水飲んで」
僕「何か食べ物は無いのかな?」
ブヨ「僕の頭を千切ってみて!」
まじかよ。
”ブチ”
ブヨ「何が食べたいのか想像してみて」
僕「ショートケーキ3個がいいな」
”ポヨッ”
ブヨ「どう?これで食べられるでしょ?」
僕「確かに、でもどういう原理なんだこれ?」
ブヨ「ボクは風と水さえあれば、幾らでも元に戻るんだよ~」
僕「おいしい!まじかよ、君って万能なんだね!」
ブヨ「だから連れて行けば、いいボーナスを貰えるって事なんだよ」
何か、奇妙な関係だな。
友達を千切って食べているような感覚がする。
吐くほどの事じゃないにしろ、経験値にしていた頃を思い返すような気分だ。
少し、変だろこの関係は。
――――――――――
僕「お金、そういえば無いね」
ブヨ「お金は必要ないんだよ」
僕「どういう事なの?」
ブヨ「ここでは人と話すだけで食事や寝床が手に入るんだよ」
僕「何てことだ?それじゃエンドサークルが?」
ブヨ「君って変な事を言うね。関係ないじゃん、放っとけば?」
確かにそうだ。
街を歩く度に、色んな風景が目に移る。
茶色の屋根とか灰色の壁、多色の旗とか服装とか。
買わなくていいんだろうか。
店員「兄ちゃん、お似合いの服はいかがかな?」
僕「え?」
ブヨ「ほらほら、早速だ。ほら、何か欲しい服を選ぶんだよ~」
僕「え、う~んと、じゃぁ黄色の服を貰おうかな~?」
店員「これだな?なめし革の布服だ、持っていけ!」
僕「うわっ!?」
ブヨ「そう、一瞬で服装が変わるんだ。面白いだろ?」
店員「なんだ君は、初心者か?この世界の仕組みを知らないとか?」
僕「初心者?世界の仕組み?一体それはどういう意味なんですか?」
色々教えてくれた。
ここはニューワールドとかいう世界だそう。
ここでは人もモンスターも一緒に暮らしているという。
それにお金もお腹を満たす食材なんかも水・風・火・土で手に入るという。
不思議にも程があるし、エンドサークルの数値は91.2。
流石にタダで貰えるというのは都合が悪いのだろう。
数値に従い世界を旅するという、仕組み・・・何か難しいな・・・。
――――――――――――
ブヨ「色々と貰えたね」
僕「確かに。でも13歳の体になるとはね」
ブヨ「ボクとの初体験と同じだ」
僕「そうか、ここってGAMEワールドだった・・・」
こうして父を追い掛けること、母を探す旅が始まったのである。
初めてのパートナー、預言者の指すエンドサークルの警告・・・。
色々と考えて行動しなくてはいけないようだ。




