9、もうすぐ〜わたしきっと……
チハたんから出された情報は、結局自分で判断しろってことね。役に立ちそうにない。
知らないこと、わからないことだらけのこの世界。積極的に動かなきゃ、何も始まらない。
「よし、待ち伏せするわよ。迎撃準備! 左翼に重槍歩兵隊を伏せよ! 右翼の樹上には長距離狙撃弓兵隊を配置!」
【……そんな部隊、いませんが?】
「うん、知ってた……」
ちょ、ちょっと言ってみたかっただけだし。
「もう少し時間もあるし、予測進路を塞ぐのに良さそうな場所でも探そっか」
戦うなら、少し開けた場所がいいかな。それとも木が密集した、動きにくそうな場所だろうか。
「チハたん、カマヤツさん(仮)はこの森の中を自由に動けそう?」
【機動力はありそうですが、あの巨体ですから、森が深いこの辺りではそこまで自由度はないかもしれません。今も移動は、獣道を第一脚の鎌で強引に広げながら進んでいます】
そっか、獲物を狩るのも糸を張って待ち伏せせず、見つけ次第ヒャッハーって襲いかかる感じなのね。
「戦車って弾撃つ時って砲塔を回して撃つの?」
【主砲と副砲は砲塔を回転させて砲撃しますが、小火器は車体下部に固定ですので、ゴブリンの殲滅時の様に超信地旋回する必要が有ります】
「超電磁ロボだっけ? それでグルングルンの時は素早くスムーズに回ってたけど、砲塔も同じ感じ?」
【『レッツ! コンバイン!!』って叫んだりしませんから。超信地旋回です】
「し、知ってたし……」
【……砲塔でしたね。砲塔は瞬時に回転します。人間が首を振る感覚ですね。コマンダーも時々動かしてますよ】
ん? 動かしてたっけ? 周囲が一度に見えるから、わざわざ振ってる気は無かったんだけどね。
まあいいや。それくらいスムーズって事よね。弾の無駄使いはしたく無いから、攻撃はグルングルン主体の小火器でって事になるわね。
戦車を使いこなすなら開けた場所が良さそうだけど、機動力はカマヤツさん(仮)の方が高そうだし……。
「よし適度に木がまばらで、グルングルンしやすそうな場所で待ち伏せするわよ」
【了解しました】
「レッツ! コンバイン‼︎」
【……掛け声の使いか間違っています】
ぐぬぬぬ……。
◆
カマヤツさん(仮)に付けてるドローンからは特に変わった様子は見受けられない。
カマヤツさん(仮)、このまま道草せず、真っ直ぐこっちに来てくれると良いんだけど。
「確実に誘き寄せるため、餌としてゴブリンたちの死体持って来たら良かったね」
【取りに戻る時間はありますがいかがいたします?】
「え、冗談よ。あんなバッチイモノまた収納するなんて。それにズンバラリンした痕から色んなモノ出てたし。それにカマヤツさん(仮)肉食かどうか分かんないし」
戦車=わたしって感覚がなかった時ならまだしも、徐々にではあるけど、戦車がわたしなんだって自覚が生まれて来た今じゃ、あんなの体内に入れたくないわ。
【あの牙の形状では確実に肉食でしょう】
「うんだよね。それより、周辺を捜索しているドローンの方をもう一頭のデッカイ魔獣へ移動させてくれる」
【了解です】
カマヤツさん(仮)を倒して、素材とかが役立ちそうなら、もう一頭の方も確保しないと。
カマヤツさん(仮)と同じ子なら問題なく頂きますしましょう。違う子なら同じように様子を見つつ、その時の状況で判断って感じ。
ふふふ、わたしの『できる子』度も増してきたわね。
【薄ら笑い、キモイですよ】
「キモイって言うな! って、顔とかわからないのに、薄ら笑いってなぜわかるのよ」
【雰囲気?】
「あんたねぇ……」
っと、無駄話をしているうちに、良い感じの待ち伏せ場所が見つかった。
【目標の予測進路に到達。待機態勢に移行します】
チハたんがそう告げると、すべてのシステム音がぴたりと止まった。まるで世界からわたしだけが切り離されたみたいに。
「ふぅ。作戦通り、ここで待ち伏せってわけね。勝てるとは言ってたけど、やっぱり緊張するなぁ」
【勝てるとは言っていません。相手が常識の範囲内の生物であれば問題ないと言ったまでです】
「ぐぬぬ。戦いは気構えが大事なのよ! しっかりドローン確認しながら待つわよ!」
KMO撃退の準備は出来た。
チャッチャ チャチャチャチャン♪
もやし、万能です。
軽く湯がいて塩胡椒またはポン酢、だし醤油で味付けるだけでグッドですね。
ごま油とスープの素でナムル風にも出来ますし。
もやし単品で炒めるだけでも、味付け次第で毎日飽きずに楽しめます。
他のお野菜に比べて栄養価は低めだったりしますけど、なにより価格がお安い!
食物繊維は豊富だし。低カロリーで満腹感も得られるのでダイエットにも役立ちます。
ただ難点は日持ちがしない。
大量に購入すると3日目には一気にカサが減って、大丈夫?食べられる? って見た目に変貌しやがるの。
かといって、毎日スーパーにもやしを買いに行くのは、少し面倒で気が引けますよね。
この日持ち問題を解決する方法はないものでしょうか?
▼要らないって評判の用語解説▼
【超信地旋回】
左右のキャタピラを互い違いに回転させてその場でグルングルン回る機動を指す。
キャタピラが壊れたり、外れたり、地面がぐちゃぐちゃになったりでデメリットも多い。
帝国戦車はそのデメリットをなくすため、キャタピラと地面との設置面に魔法で良い感じに抵抗を軽減させている。
また、風魔法を使用し空気の層で車体を浮かせキャタピラを使用する事なく旋回させる機能を搭載した戦車もある。
この空気の層を『浮遊層』と呼んでおり、装備している戦車は全体の約2.75%である。さらに超が付く『超浮遊層』は僅か約0.21%である。
『帝国経済統制局ニョムラ総研調べ』
短編【桜、終焉の記憶】も併せて
ご一読よろしくお願いします。
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