8、夕陽も泣いているのだろう
「だ、誰のせいよ! あんたが勝手に突っ走るから、わたしが仕事しなきゃいけなくなったんでしょ!」
チハたんとはあとでじっくり話し合うとして、先ずはドローンの発進ね。
「5(ジャン!)、4(ジャン!)、3(ジャン!)、2(ジャン!)、1(ズモモモモォ!)、DRONES ARE GO! チャンチャカチャーン♪ チャチャチャチャンチャカチャンチャンチャ♪」
【何ですかそれ。自分で効果音まで付けて。ペネロープさんが呆れて見てますよ】
「やっぱり知ってたわね!」
【……じゃ、ドローン出しますね】
「今⁈ タイミング!」
ドローンが飛び出してしばらくすると徐々に周辺の状況が判って来た。
鬱蒼とした森林なのは相変わらずだけど、所々木々がまばらになっている場所がある。人の気配や人工物らしきものも見当たらない。ドローンを止める必要もなさそうなので、そのまま進ませる。
うーん。こっちは特に変わったモノはなさそうね。でっかい魔物の方に向かってる子に期待かなぁ。
「チハたん。でっかい魔物までどれくらい?」
【あと10分少々で見えてくるかと思います】
魔物に向かってるドローンもあまり変わり映えのしない景色を映し出している。この森、一体どれくらいの広さなんだろう。
「ねぇ、周りを飛んでる子の高度って上げられない? 森の全景が見たいんだけど」
【おそらく全景は確認できません。飛行限界高度も20メートル程ですし、望遠機能は付いていませんので】
「なんだか結構使い勝手が悪いわねぇ……」
【使用目的が違いますので。広範囲を探る場合は、高高度偵察機を使うか、現在飛ばしているドローンでしたら、20機程を全周囲に派遣することをお勧め致します】
「で、その高高度偵察機とか、20機のドローンはどこにあるのかな」
【現在、どちらも所持しておりません】
「うん。知ってた」
そんな、中身のない非建設的な会話をしているうちに、魔物へ向けて派遣していたドローンが、ついに目的の対象を発見した。
「ぐぎゃ! デッカい蜘蛛!」
うっわぁ、蜘蛛かぁ……。苦手なんだよね。田舎育ちだから虫はわりと平気なんだけど、蜘蛛とGだけは勘弁。
実家のお風呂が別棟で外にあるんだけど、そこの天井の隅にデッカいのが張り付いてて、油断すると飛んでくるのよね。あれはトラウマ。
その、風呂場の蜘蛛にデッカいとか言ったらその子が恥ずか死ぬんじゃ無いかってくらい巨大な蜘蛛が目の前にいる。
しかも鎌みたいなの付いてるし。鎌が奴に付いてる。
スパイダー、カマ付いてるヤツ……。
仲間に星3つ付いてて、時間ですよ!って叫んだりするのが居ないよね。
そんなの居たら、夕陽じゃなくわたしが泣いちゃうよ。
【夕焼けー♪】
「歌うなし! 心読むなし! てかなんで知ってる? 前から思ってたんだけど、ちょくちょく『なんで知ってる⁈』的なボケとツッコミ挟んで来るよね」
【データベースに記録があります】
「あっそ……。あるなら仕方ないわね。わたしもうっすら戦車の事わかって来たし、そゆ事もあるんでしょ。一応そう言うことにしときましょ」
なんだろう。そのうち私とチハたんが一体になったりしないよね。あまり深く聞いちゃいけないような気がして、あっさり流したけど……。
漠然とした不安はあるけど、考えてどうなるものでもなさそうだし……。
よし、秘技『分からんことは気にしない』発動!
さてと、この巨大な蜘蛛さん、こっちに向かってくるみたいだけど、遭遇したらヤバいかな。
体の大きさだけで戦車と同じくらい、足まで入れたら4倍くらいはありそうよね。
「ねぇ、チハたん。この蜘蛛って、きっと大きな魔石を持ってるよね。それと、資材として使えそうな部位があったりする?」
【未知の生物につき、詳細は不明です。解体するまで判断は保留いたします】
「戦ったら倒せる?」
【それも不明です。ですが、所詮ただの生物ですので、主砲を使用すれば討伐は可能かと推測されます】
この巨大蜘蛛カマヤツさん(仮)の移動速度がこのままなら、戦車と遭遇するまでおよそ1時間。すぐにわたしが移動すれば遭遇は避けられる。どうしようかなぁ。魔石も資材も欲しいけど、そこまで切実に必要ってわけでもないんだよなぁ。
「ねぇ、チハたん。どうしよう? 戦うべき? 避けるべき?」
【決定するのは『コマンダー』であるあなたです。私に尋ねられても無意味です】
「えー、そんなこと言わないでよ! わたしたち、本当の意味で一心同体じゃない。ちょっとくらい考えてくれたっていいじゃん」
【……では、判断材料を提供します。これを元にご検討ください。戦う場合、センサーで読み取った数値から判断するに、対象生物カマヤツさん(仮)の外皮は主砲に耐えることはできないかと】
「ほーん。こっちの攻撃は通りそうって事ね」
【カマヤツさん(仮)の第一脚にある鎌状の物による物理攻撃。これによって魔導シールド及び車体装甲を貫ける可能性は5パーセント以下です。また、何らかの魔法攻撃手段を持っていたとしても、相手が一体であるならば対魔シールドで充分対処可能です】
「ふむふむ、戦っても負けることはなさそうね」
【また、カマヤツさん(仮)を資源として見た場合、要否の判断は早めが良いかも知れません】
そっか、一頭でいる今がチャンスなわけか。じゃあ、待ち伏せして有利な状態で戦いを挑むのが良さそうね。
「ありがとう、チハたん。余裕で戦えそうじゃん!」
【ですが、相手が私達の常識の範囲内の生物であるという前提です。理を外れた未知の力を持つ生物にはこの推測は当てはまりません】
「おーい! 結局どっちやねん!」
短編【桜、終焉の記憶】も併せて
ご一読よろしくお願いします。
https://ncode.syosetu.com/n1164ld/
『マノマナ、自転車を買う(試乗編)』
先日ピストバイクを買ったよって言う自慢話しの続きです。
ピストバイクの動画とか観てると、後輪を滑らせてズシャ! って感じで華麗に止まったり、止まったまま足を着かずにスタンディングをキープしたり、シュルシュルってバックしたり。
みなさん楽しそうに乗ってはります。
ですが、これがなかなか大変。早々にカッコいい技は諦めて普通に乗る事にしました。
これがなかなか楽しい乗り物で、足の動きがダイレクトに車輪に伝わるため、普通の自転車より手足感がすごくって。自分で操ってるって満足感がまんちくりんです。
坂道も変速機が無い分大変だろうなって思ってたけど、足でコグ→車輪が回る→進む→車輪の回転→コグ力を後押し、って感じで案外楽なんですよね。
ただ、下り坂が大変。そ、車輪とクランクが連動してるから、足休める間無し。
きっと見てる人は「あの人下り坂やのに必死にイキって漕いではるわ」って思ってるはず……。
▼登場人(?)物▼
カマヤツさん(仮)
巨大な蜘蛛
とにかく大きい。アラクノフォビアな人は一目見たら、身体の穴という穴から体液をダダ漏らしする事待った無し。
生態不明。
詳細は後日報告いたします。
あ、評価もよろしくお願いします




