7、ああ、あ、あああ、林道一直線
「ねぇ。バキバキ木を踏み倒してるけど大丈夫?」
ゴブリンたちのおかげで魔素も最低ラインの5パーセントを大きく上回り15パーセントに届きそうなくらい溜まった。
贅沢さえしなければ普通に活動できるようになったので、戦車の補修用資材や、車載備品製作用資材など色々足りない物を探しに行く事にした。
もっとも帝国の前線基地か補給基地が見つかればそれが一番いいんだけど。
とは言ってもわたしにはココがドコかもわかんないし、どっちへ行けば良いのかもわかんないので、進行方向はチハたんにお任せ……ってやってたら。
木々をベキバキへし折りながらただただ真っ直ぐ進みやがるの。
エルフとか森の妖精に怒られたらどうすんのよ。
【薄くではありますが魔導シールドも展開していますし、この程度の木でしたら障害にはなりません】
「そうじゃなくって、何の配慮もなく木を踏み倒してるけど、生態系ってのに影響出たりしないの?」
確か、森を切り拓いて道路を作る時、動物の移動を妨げないようにするとか、そんなことをテレビで言ってたような気がする。
よその世界にお邪魔してるんだからいつも以上に気をつけないとよ。
【問題ありません。これらと同様の道状のラインが、この森の中に無数に張り巡らされております。おそらく大型の魔獣により付けられた跡かと推測されます】
「誰かがやってるから自分もOKとか大間違いだよ!」
子供の頃、親にもよく言われたなぁ。
『ミクちゃんエンジェルムーンの自転車買ってもらったんだって。わたしにも買ってよ』
『ヨソはヨソ、ウチはウチ! ミクちゃんが死ぬって言ったらチーちゃんも死ぬんか!』
まあ、深い意味はなくて、ただ買わないための言い訳が半分以上混じってたんだろうけど。
そしてホントのとこ、友だちが死ぬって言ったら付き合う子も稀に居たりするんだよね……。
なんで簡単に死んじゃうかなぁ。人間もいつかは死ぬんだろうけど、それって絶対今じゃないよ。
あの子だって……。
あ“ぁ! なんかイヤなこと思い出しちゃうじゃない!
「ふぅふぅひー」っと。
ま、まあだけど『死ぬよりマシだから』『死ぬ事に比べたら』って言うのも、なんか違う気がする。
比べるものじゃないんだよね。価値観の違うもの、物差しの違うものを比べたって意味がない。
だって、自転車のバーテープが4,000円! でもカッコいいし綺麗だし欲しいよなぁ……。部活帰りにコンビニでから揚げとかサンドイッチとか買い食いする数日分だと思えば買えるかぁ、よし買っちゃえ! って買った後、コンビニに屯する友だちを見て、しまったなぁって思う事度々だったし。
あ、森バキバキの話だった。いや、それより気になる事があったんだ。
「大型の魔獣ってコレより大きい感じ? そしてそんなのがこの辺をウロウロしてるって事?」
呑気に進んでたけど、そんなのといきなり出会っちゃったらびっくりどころじゃないわよ。
【センサー範囲内に大型が2体。こちらより少し小さめの個体が6です。気になるようでしたらマイクロドローンを全機派遣しますが】
「うん。すっごい気になるからドローン出しちゃって。でも全部出しちゃっても大丈夫?」
【問題有りません。それに全機と言っても2機だけですし】
「2機! マイクロっていうくらいだから小ちゃいんでしょ」
【3ミリ程ですから小さいですね】
「それが2機しかないの」
【2機しか無いですね】
「…………」
【…………】
「そういうのって、周囲に何十機も一気に飛ばして偵察するとかじゃないの?」
【そうですね。通常の作戦ではは10機でワンセット、それを5セット程運用します】
「それが2機」
【それが2機ですね】
「…………。だ、大丈夫なの? 早く基地とか探さないとマズくない?」
でっかい大砲用の弾はまだ少し余裕があるみたいだけど、その他色々足りない気がする。
消耗品や交換部品は、材料さえあれば車内で作れるって話だけど、何でも作れるわけじゃなさそうだし、そもそもその資源も見つかってないんだもんね。
うーん。ちょっと気合を入れてこの世界を調査した方がいいかもね。『食』に関しては、大気からも一定の魔素は取り込めるし、魔石からも抽出出来るから一先ず大丈夫として、『衣』充実のためにも資源の探索は急務よね。
魔物からも魔石以外に素材が取れたりすると良いんだけど。
『住』はこの世界にあるのかな? チハたんの話しからすると、この世界とチハたんの世界は別な気がする。
通信が繋がらない。コレ一輌だけポツンと。魔素が薄いらしい。ゴブを知らなかった。魔石の存在もね。
チハたんの世界って転送とか出来るっぽいので、そのエラーか何かで異世界転送されちゃったとか。それにわたしも巻き込まれたのか、巻き込んだのかわかんないけどなんか二人(?)してこっちに来ちゃったっと。その方がしっくりくるよね。
【基地に関しては今の所情報が有りませんので地道に探すしか無いかと思われます】
「で、今進んでる方向に何かあるの?」
【いえ。情報が無いので判りません】
「へ? じゃなんでこっちに進んでるわけ?」
【車体の向いていた方向にただ前進しているだけです】
チハたんってば、カシコの人かと思ってたのにアホの子だったとは……。
出発する時、わたしには何の目標も当ても無かったので行き先は任せるわって言ったら、直ぐに進み始めたから……。
まさかのノープランだったとは。
「自信満々で進み出すから何か目的地があるのかと思ってたわよ。まったく」
【私はあくまでオペレーターです。作戦行動は全て『コマンダー』が主体ですので、命令通り前進したまでです】
「それで、脇目も振らず一直線に進んでたわけね。進んだ跡が林道みたいになってるじゃない。これ見たら近藤さんも足でピアノ弾いちゃうわよ! 」
【『ネコ踏んじゃった』ですか?】
「曲名とか細かい事はええねん!」
ほんと、融通が利かないにも程があるわね!
「ま、いいわ。まず一旦停止して、ドローン1機を大型魔獣のこちらに近い方に派遣して。残り1機はここから螺旋を描きながら偵察。画像は両方リアルタイムでわたしが確認するわ。ドローンのコントロールだけチハたんやってね」
ふぅ。何か起こるまでのんびり寝てようっと思ったのに、仕事させられるわぁ。
【了解致しました。ドローン発進します。もう立派な『コマンダー』ですね。やれば出来るじゃないですか】
「だ、誰のせいよ!」
短編【桜、終焉の記憶】も併せて
ご一読よろしくお願いします。
https://ncode.syosetu.com/n1164ld/
『マノマナ、自転車を買う』
おニューの自転車を買いました。
「おニュー」と言っても、実は中古のピストバイク(競輪とかトラックレースで使うやつね)です。
ロードバイクだと何十万円もするメーカーのピストバイクが、何万円かで某フリマサイトに出品されていました。
「ピストかあ、乗りにくいだろうなあ。でもこのメーカーのは飾ってるだけでもいいよね」と思い、ポチりました。
で、初乗り。もちろん保安部品はすべて装備済みです。
ギアが固定されているので、足を休めることができない。気を抜くと足が下から持ち上げられる。
信号
乗り始めは「何じゃこりゃ!」って感じでしたが、慣れるとこれが楽しいんです。
その面白さについては、また次の機会にでも。
どう楽しいかはまた後日。
▼チハ搭載装備▼
【魔導シールド】
正式名称:対物理力魔法障壁
行動時は常に展開している。
物理的なダメージを防ぐことに特化しており、魔法攻撃に対する効果は少ない。
魔法攻撃に対しては、「対魔シールド」を展開する必要がある。
「対魔シールド」は術式を消滅させて防ぐため、「魔導シールド」との重ね掛けはできない。
戦闘車両には、攻撃に対応するシールドを素早く切り替えるために開発されたソフト「叩いて被ってジャンケンポン」が搭載されている。
【マイクロドローン】
正式名称:偵察用超小型オーニソプター
国家魔導技師のミミ・モットー・カブーンによって開発された、帝国でも最小の自立式ドローンである。
小さいため、蚊と見間違えられるが、形状はトンボに似ている。
各種センサーを備えた偵察専用機で、戦闘機能はないが、唯一の攻撃方法として、対象が睡眠中に耳元を飛び回り、安眠を妨害することができる。
大気中の魔素を取り込んで稼働するため、機体が損傷しない限り稼働時間は無限だと考えられている。




