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転生したら……えっ! 戦車⁈   作者: 真野真名


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4、アイスクリーム ユースクリーム




「はぁぁあ! わ、わたしが戦車⁈」



 異世界転生って言ったら、青銀髪美少女エルフとか、ReLIFEやりなおし)な金髪縦ロールの悪役令嬢とかじゃないのよ!?

 

 なによ戦車って!


 まさか異世界といっても、女子高生が戦車でドンパチしたり、ふね っぽい娘さんがお風呂に入ったりするアレ系の世界かな。それとも、顔がついたイギリスの某機関車みたいな感じ?


 ああ! 二重太陽っていうのは、機械の身体になるための前振りだったのか!


 どっちにしても、これじゃドラゴン肉ウマーとか、スイーツの知識チートでウハウハとか、それどころか街にすら入れないじゃない! どうしてくれるのよ、わたしの異世界のんびりライフ!


「ふー、ふー、ふー。ま、いいわ。戦車ね。あなたもわたしも戦車ってことね。それで、何かに絶賛襲われ中らしいけど、それは大丈夫なの?」


 まあなっちゃったものは仕方ないし、分からないことで悩む時間ももったいない。とりあえずあのゴンゴンうるさい音だけでも止めないと。

 ご近所迷惑すぎるわよね。


【投石と植物由来の鈍器での攻撃ですので全く問題は有りません。攻撃の様子はモニターにて確認頂けます】


「モニター? 外は真っ暗で何も見えないわよ」


【前部カメラでは無く、ターレット上部の360°全周モニターをナイトビジョンに切り替えて下さい】


「そんなこと出来ないわよ。左右だってちょびっとしか見えなかったんだから」


【了解致しました。直接映像をお送りします】


 ナイトビジョンっていうから、白黒でタヌキの目が光って見えるアレかと思ってたら、昼間と変わらないクッキリハッキリした映像がわたしの頭の中に拡がった。


 そこにはダークグリーンの戦車これがたぶんわたしを、離れた所から取り囲む人影が見えた。少し距離があるせいか、詳細は分からない。何匹かが石を投げているようだけど、車体に当たって跳ね返ったり、届く前に砕けたりと、攻撃になっていない。


 あのカンコンうるさい音の原因は、こいつらだったのね。


 石を投げてる奴らってなんか猿っぽいな。よく見えない、と思ったらいきなりそのお猿さんがズームアップされて、姿がはっきりと見えた。


 うへ、なんか小汚い。これは異世界定番の下っ端魔物、ゴブリンに違いない。スライム、ツノウサギに次いで現れる、始まりの村名物のゴブリンよね。


 知らんけど……。


「ねぇ。ゴブリンたち石とか投げて来てるだけ?」


【先程、7体が本機に近づき棍棒の様な物で車体に攻撃を仕掛けましたが、魔素反応装甲による反撃でその辺りに転がっていると思います】


「魔素反応装甲って人型巨大決戦兵器のバリアみたいなもの?」


【いいえ。ローレンツ力で弾き返すシールドではなく、敵性物質の近接または接触を魔力で感知し、装甲板に塗布された化学剤を爆発燃焼させることによって物理攻撃の威力を相殺する物です。魔素量不足のため、魔導障壁の展開が不可能ですので、魔素反応装甲のみで対処しております。本機の魔素反応装甲は改良型であり、開発当初の物は塗布剤の表面に防弾板を設置し、それを飛ばすことで相殺していましたが、効率や車体への反作用、周辺の味方への影響が大きいため、一時開発が中止されていましたが、塗布剤の進化と……】


「……ごめん。聞いた私が悪かったわ。とりあえず、私の思ってるバリア? シールド? とは違う、何かってことね」


【……そうですね】


 チハたん、オタクだったのね。

普段無口なのに、自分の好きな話になるとおしゃべりが止まらない弟の智舗ともすけ)そっくり。

 

 まあとりあえず、ゴブリンたちは放っておいても危険はなさそうね。ご近所に誰も住んでなさそうだし、音はもう慣れたし。


 それよりココはどこなんだろ。戦車って事はそれなりに文明は発達してるのかな。


「周囲の状況は分かったけど、この後どうするの? そしてわたしって動けるの?」


【システム的には問題ありません。ただ、エネルギーとなる魔素の充填にしばらく時間がかかります】


「それってどれくらい?」


【今の充填スピードですと、フル充填までおよそ2年かと】


「に、に、にねん!? ずっとここにいるの!? JAF的な助けって呼べないの?」


 2年なんて、女子高生のブランドを無駄に過ごすことになるじゃない!

 ん? 女子高生? 2年間……。私って年を取るのかな? こんなイカつい身体で女子高生って言っても、説得力ないし……。


【救助または補給要請は、通信が途絶しているため不可能です。ただ、移動だけであれば魔素が5パーセントまで回復すれば可能です。本格的な戦闘はできませんが】


「どこか上の方に行けば電波拾えたりしない?」


【短距離の移動は可能ですが、現状態で高度を稼ぐために移動すると、最低限のシステム維持に必要な魔素まで不足します。それに、高度を上げても通信状態に変化はありません。司令部との通信は魔素を介したCMTSを使用しており、障害物等に阻まれることはありません。また、サブシステムとして魔素とは別に電磁波を使用した長距離通信システム……】


「わかった! わかったからもういい!」


 しまった。チハたんにうっかり質問すると大変なことになるってこと、忘れてたわ。遠くには行けないし、助けも呼べないってことは分かった。しばらくはここでじっとして、魔素が溜まるまで待つしかないのか。


「その5パーセントまではどのくらいよ」


【順調に溜まれば約840時間です】


「840時間、えーっと24で割って……1ヶ月ちょい……長ぁー。それでもそんなにかかるのかあ」


 ここでの1ヶ月がどうだかわからないし、チハたんの言う1時間が私の1時間と同じかどうかも分からないけど、まあ、とんでもなくズレてるってこともないでしょうし。体感時間なんてそれぞれだもんね。


 お年寄りは1年が早いっていうし、あれって経験してきた時間の差だって誰かが言ってたっけ。10歳の子の1年は1/10、60歳の人の1年は1/60って感覚なんだって。

 ホントかウソかは知らないけど、なんとなく納得させられたのよね。


 って、そんなことじゃなく、1ヶ月かぁ。じっとしてたら暇だろうな……。


「ねぇ。なにかヒマつぶしできることない?」


【暇潰しですか? ……リーマン予想の証明等は如何でしょう】


 リーマン予想? なんだろ。気になるけど聞いちゃいけない気がする。きっとまたあの無駄なオタク知識をダラダラ聞かされそう。


「ああ、リーマンね。それはもういいわ。飽きちゃったから。そうだ、今鳴ってる鐘の音でも数えて暇つぶすよ」


【そこまで暇つぶしをする必要はありません。周辺の大気中の魔素は少ないですが、周辺に転がっている生命体の死骸からも魔素反応がありますので、そこからの吸収もできるかと。反応からそれなりの吸収量は見込めます】


「え、そうなの? じゃ早く吸収して。チューチューやっちゃいなさいよ。ホーレ! チューウ、チュウチュチュ夏のお嬢さん〜」


 よくわかんない歌のフレーズが頭の浮かんだけど、それよりうまくいけばすぐにでも動けるってことでしょ。早く吸って、どんどん吸って。


【別に体液を直接吸収する訳では有りません。おそらく体内に魔素を蓄積している器官が有るのだと考察します。それにもしチュウチュウチュチュするのであればそれは『コマンダー』である貴女でも有るのですよ】


「うげ!」






短編【桜、終焉の記憶】も併せて

ご一読よろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n1164ld/


 なんとかひーふー言いながら最低一日一回投稿をこなしております。


 たったの四回目でこの(てい)たらく。がんばろ……。




▼登場人物紹介▼


陸路千波(むつろちなみ)

高校ニ年生

異世界にて神聖大八洲魔導帝国製九七式主力中戦車チハのコマンダーに転生。

生来の気質か転生の影響か不明だが戦車になっている事をあまり苦にしていない。


【チハたん】

シリアルナンバーHME-00975089MTK 神聖大八洲おおやしま)魔導帝国帝都防衛隊所属九七式中戦車チハ搭載オペレーションシステムCSOS-0659

帝国暦597年製造

基本スペック:軍機保護法により全て非公開

『コマンダー』の疑似人格受信時のエラーにより、千波の人格が上書きされた際、本来無人格であるサポートシステムにも千波汚染が広がった模様。



陸路智舗(むつろともすけ)

中学二年生

千波の弟。

姉からは「弟はオタクで厨二病でいじめられっ子の三重苦では無いか」と疑われているが、本人は到って健康的な普通の中二生活を送っていると思っている。




▼用語解説風言い訳▼


【帝国製車載型魔素反応装甲】

 類似の付加装甲として、地球で開発されていた放電衝撃方式の電磁装甲がある。

 敵弾を感知するセンサーに魔力が使用されている所が大きく異なる。

 搭載されている改良型は飛ばす防弾板が『面』ではなく『点』で射出される為、周辺への被害も少なく複数回対応が可能になった。


【ローレンツ力】

 魔導学者ライアー・フォールス・ローレンツが発見した魔力場の中で運動する魔素が受ける力の事である。

 同様の研究も各国の魔導師、魔導学者によってなされていたが、いち早く発見発表したのがローレンツだった。

 遅れをとった学者達は

「だ、誰じゃ先を越しおった奴は! なんじゃと!」

「「「「「ローレンツか!」」」」」

と叫んだとか叫ばなかったとか。

 因みに『ツングースカ大爆発』はツングースりょく)によって引き起こされた物ではありません。


【CMTS(Closed Magic element Transmission System)】

 魔素を介した通信システム。

 閉鎖した魔空間での魔力に指向性を持たせた魔素による魔力伝達システム。他からの魔力的な介入も魔力的な妨害も、魔力的な魔力防御が完璧に防ぐ魔力を利用した魔力通信伝達システムである。

 ひゃっほう! ビバ魔力!



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