20、撃つというのなら、私諸共撃ちなさい!
えんやこらさんズ(仮)が現れた。
仲間になりたそうにこちらを見ている。
よし! これで勝つる!
「えんやこらさんズ(仮)いらっしゃい。 待ってたよ」
[来たよー][来た来た][今来たよー][どやさー]
[なになに用事ー?][ここにもでっかいのがいる][キモイ][長ーい]
『ふぅ……』
ん? チハたんが脱力した。
「まだまだこれからなのに、気を抜くの早いわよ」
『失礼しました。心配事が一つ片付いたのでつい』
どうせ細かいことをちまちま考えてたんだろうけど、そのうちハゲるんじゃないかしら。
「えんやこらさんズ(仮)にお願いがあるんだけど、地面をカチカチにする魔法とか使えたりしない?」
[無理ー][出来ない][魔法使えない][助けるだけ][増幅伝達][媒介][バイカイ][バイバイ][バイバイー][じゃーまた]
「こらー! 帰ろうとするな! 用事はそれじゃないのよ」
ふーふー。魔法は使えないだろうなと思ってたけど、一応聞いてみたらこれだよ。
「えーっと、もう一個。これも聞くだけね。わたしって魔法使えたりしない?」
[無理ー][出来ない][魔法使えない][でも使える][使える子いる]
[使えるけど使えない][使えないけど使える]
なになにどういう事? 哲学? わかんない。チハたーん!
『魔弾の事では無さそうですね。魔弾はすでに魔法として“そこに有る”ものですから。すみません。理解不能です』
むー。使えないけど使える。使える子……。
「えーっと、使える子ってわたし?」
[違う][違うけどそう]
だめだ。わかんない。それより、戦闘予定位置への誘導だね。
わたしはヘイジさん(仮)を誘導して、木々がまばらな広い空間に出た。
「えんやこらさんズ(仮)、あの魔物の魔石の場所わかる?」
故カマヤツさんに集ってたえんやこらさんズ(仮)が、外側からしっかり魔石の場所を把握してたんだよね。
で、ヘイジさん(仮)の魔石の場所を教えてもらって、そこを砲撃。胴体くらいは余裕で貫通するし、うまくいけば、魔石だけ外へ。仮に魔石が壊れても魔素は大気に拡散して、この世界の助けにはなる。
そして、魔石の無くなったヘイジさん(仮)はお亡くなりに。
壊れなければわたし達の得。壊れてもこの世界の得。ヘイジさん(仮)から素材もゲット。
完璧。I’m a perfect woman!!
[わかるよー][わかる][でも魔素はとれないよ][生きてる子からは無理ー]
「場所さえわかれば大丈夫よ。魔石のある場所に集まって」
[オーケー][集まればいいのね。簡単][余裕][行くよー][魔石のある位置へゴーゴー][ゴーゴー位置][あるときー][ないときー]
「チハたんは射線確保。動く相手だから余裕もって位置取りよろしく」
『えんやこらさんズ(仮)への退避指示のタイミングはいかがいたしましょう』
「ん? 退避? 要らないでしょ。当たっても大丈夫でしょ。 魔弾が魔法展開したら喜びそうじゃない?」
『あー、いつもの根拠なし予想ですね……』
「万一の事があっても多少数が減る程度で、問題なしよ」
『…………南無』
魔導銃の威嚇射撃と撹乱移動で、絶好のポジションが確保出来た。
ヘイジさん(仮)も負けじと銭を投げてくるが、わたしには当然かすり傷ひとつない。さらにえんやこらさんズ(仮)が投げ銭に集って、魔素を吸収している。
“寛永通宝”とか書かれたコインのクッキーってまだ売ってるんだろうか。
あとは、えんやこらさんズ(仮)目掛けて魔弾を打ち込めば、みっちゃんコンクリート!
にょろにょろ動くけれど、わたしの視線は、魔素の濃い部分から離れない。
よし! 魔弾装填! タイミングバッチリ!
「撃てー!」
あ、そうですか。すでに撃ってますか。
この射撃システムやっぱり改善の余地ありよね。
発射された土属性の魔弾は、わたしの視線の先、ヘイジさん(仮)に向かって進んでゆく。多少動いても逃さないわよ。
着弾まで、5、4、3、2……。
あれ? えんやこらさんズ(仮)が直前で避けた?
魔弾はヘイジさん(仮)の胴体を破壊した。
ヘイジさん(仮)は破壊された胴体部分から千切れ、左右に跳ね上がった。
…………でも、えんやこらさんズ(仮)は片方の胴体にまだ集っている。
[わーすごい爆発][魔素がいっぱい][面白ーい。もっかい。もっかい][魔石ここよー][魔石ここ]
直前に魔石が移動した?!
二つに千切れたヘイジさん(仮)は両方の裂け目から、ウニョウニョしたものが出てきて、合体を始めた。
「失敗? 身体の中で魔石を動かせるなんて……」
第二作戦《ごいごいすー》準備!
『!!!!…………!』




