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16、ろくなもんじゃねえ




 えんやこら(仮)さんがあっさり離れて行った後、故カマヤツさんから魔石の抜き出しと解体作業の続きに取り掛かった。


 故カマヤツさんからは魔石以外あまり収穫は無かった。外皮はそれなりの強度はあったが、戦車わたしの外装には遠く及ばないし、素材として利用出来るかも微妙だったが、一応ゲートを潜る事が出来る大きさに分割して収納した。

 気持ち的には、手提げの紙袋を畳んで仕舞っておく感じだ。いつか役立つかもってね。

 内臓は……少しは使えるかもしれないが、敢えて取り置く必要は無さそう。見た目もグロいし。戦車わたしの中に仕舞っておきたくも無いしね。こっちは汁で汚れてスーパーのレジ袋って感じかな。

 ただ、糸が作られていたと思われる器官には、まだ液体状の物が残っていたので、こちらは容器に移し替えて保管。放出された糸はネバネバでグチャグチャになっていたので、汚れの少ない部分を一まとめにして、冷凍保管。

 残りは……放置で。


 チハたんが後片付けとか考えず、ブチブチバキバキしたものだから、戦車わたしの周囲一面が、生焼けのモンジャ状態。

 一旦ここから離れてキャタピラあし)洗いたいわ。


 もう一頭の魔物はこちらから離れて行ってるのか、まだドローンで捕捉は出来ていない。


 「わたし達もドローンの後を追いましょうか」

 どこか目的地が定まっているわけでも無いので、世界を守るため……っていうか、えんやこらさんズ(仮)のお手伝いって意味の方が大きいんだけど。

 だって、世界って言われてもねぇ、そんなにすぐに魔素が無くなるって事も無さそうだし、魔物の魔石も有るしね。

 いざとなれば、人族……。


「という事で、ドローンを追って頂戴」


『了解です。発進準備的な遊びはしないのですか?』


「いい……どうせ……」




 魔物に向けて先行させているドローンのモニターに変化は見られ無い。

 そしてわたしの前をジグザグに警戒飛行しているドローンのモニターも、餌を喰むうさぎのような生き物が時折映し出されたが、魔力を感知出来ないので、おそらく野生動物だと思う。


 ドローンズの名前がないのは不便ね。名前を付けてあげないと。


『特に必要とは思えませんが。人で言うと、髪の毛一本一本に名前を付けるようなものかと』


「髪の毛は動かないじゃない。ドローンズは個別に動くので名前は必要よ。人間でも手には右手と左手って名前があるじゃない」


 とにかく名前を付けます! 決定事項です。


 うーんと、先行してる方が“じょ”、警戒飛行を続けてる方が“”ね。


 うん。ドローン序とドローン破に決定です。


『ドロボー一味のリーダーと、カミナリさんちのアメリカオバケですか!』


「丁寧なツッコミありがとうね」


『それより、ドローン序、目標に接敵します』


 チハたんが言った数秒後、モニターに魔物が映し出された。

 

「キッモッ! でっかくて白くて長くてウネウネしてる! 長虫かぁ!」


『長虫では無いですね。おそらく環形動物かと』


「環形動物ってなにさ」


『ミミズとかでしょうか』


「えー、それってチハたんが、えんやこらさんズ(仮)をミミズ呼ばわりしたのが、フラグになってたんじゃないの?」


 それにしても大きい。長さだけなら戦車わたしの四倍くらいありそう。それが木々の間を縫うように横たわっている。身体全体が波打っているので、死んではいないようだ。寝ているのだろうか。しばらく前はそれなりのスピードで移動していたのだけれど、疲れて休憩? それともお食事タイム? 寝てるなら、あの強そうな長虫も一発で倒せないかな」

 

「あの、長虫ツヨシさん(仮)、動いていない今なら主砲で仕留められそうと思わない?」


『長虫ではありませんが』


「ミミズって長い虫だから長虫じゃないの」


『ミミズは環形動物。長虫は蛇の事です。それにミミズは長いですが虫でもありません』


「じゃじゃ、長虫ツヨシさん(仮)ってお名前は……」


『却下です』


 ぐぬぬぬ。ヘビに虫とか付けるなよー。紛らわしいったらありゃしないわ。


「で、あのヘイジさん(仮)を主砲一発で仕留める案だけど、どう?」


『ヘイジさん(仮)?』


「あのミミズの事よ」


『ミミズかどうかも判ってませんよ。それに何故、ヘイジさん(仮)? きっとツヨシさん(仮)とかにしてくると予想しておりましたが』


「いいの、わたしの中ではミミズ認定したので問題無しよ。わたしが強そうだからツヨシなんて安直な名前を付けるわけ無いじゃない。あれは長虫って事が前提だったんだから」


『では、何故ヘイジさん(仮)なのですか?』


「ふふふふふ。ミミズを漢字で書けば、自ずと正解がわかるというものよ」


 もー! チハたんが脱線ばっかりするから、話が進まないわ。出来れば魔弾は一発だけで倒したい。

 でも、ミミズって二つに切ったら二匹になったりするんじゃなかったけ?


 チハたんと相談しつつ一旦整理ね。


 動いていない間に先制。使う魔弾は一発。属性関係無い(ロマンがないわねぇ「なに、属性変化だと! HPも残り僅かだというのに! ここまでか!」とかやりたいじゃんね)ので土属性魔弾を使用。二つになっても、動けるのは頭のある方だけ。チハたん曰く、二匹になるって言うのは俗説らしい。なので、確実に倒せる頭に撃ち込む。


 って事で、一見どちらが頭か判らないヘイジさん(仮)の両端に、ドローンズをそれぞれ派遣中です。


「寝てるねぇ」

『動いてはいませんね』


「あれ、片方は口で、もう片方は肛門って事よね」

『形状はよく似ていますね』


「口が開いたら判るかな」

『無理に開くと動き出すかもしれませよ』


「ドローンズなら小さいから入れ込めないかな」

『ドローン破が嫌がってますね』


「じゃ、ドローン序の方が頭ね!」

『根拠不明です』


「誰だって肛門に入るの嫌じゃない。だからドローン破の方がお尻。以上、証明終わり」


『…………ドローンに意思は有りません。仮にあったとしても、その場合はこちらは頭では無い、という報告が来ます』


 まったく、チハたんには心の機微という物が分かってない。多分、ドローン破もこちらがお尻側、肛門だという確証はないんだと思う。だって同じデータ見てるわたし達にも判別ついてないんだもの。

 突入の命令が来たら行かなきゃいけない、だけど確証が無くても、あ、ここ入るの嫌だなぁって、直感的に感じたのだと思う。

 それで、わたし達の会話を聞いた時に、ついあの態度が出ちゃったって事よ。

 

「と、いう事よ分かった?」


『…………指揮権はコマンダーにありますので』


「では、頭への射撃位置に移動。ベスポジ探して射撃準備よ!」


 戦車わたしはゆっくりヘイジさん(仮)の頭側へ移動を開始した。極力音を立てないよう慎重に進む。


 程良い所に身体を潜ませ、スコープの倍率を上げる。


「間違いない。こっちが頭ね。ほら両サイドに目があるわ」


『あれは、ただの皺では?』


「あれは目よ、目。よし! ターゲット確認。魔弾装填開始!」

 

 うーん……。なんだろこのあっさり感。目標設定して攻撃しようってだけで、発射されちゃうなんて、もっとこうワクワクする感じが欲しいわね。

 


『標的粉砕。頭部と思しき部分破壊しました』


 カマヤツさん(仮)と違って、パーンって破裂はしなく、グチャって感じで頭の部分が落ちた。

 残った胴体もまだビタンビタンしてる。周囲の木がその激しい動きで倒されてゆく。


「ビタンビタンしてて、しばらく近づけそうに無いわね。収まるまで待ってましょ」


『……収まるのを待つのは良いのですが、【お尻】の方が地面に潜っていってますが。まるで【お尻】から地中へ逃走しようとしているように見えるのですが……』




「はぁぁぁぁ!」



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