表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

12、ごめんください、どなたですか




 カマヤツさん(仮)、倒してみると想像以上にデカくて解体が大変だね。蜘蛛の巣掃除はウニョウニョの腕があちこちから伸びて、わりと早く片づいたけど、カマヤツさん(仮)が未だにドデンと横たわってる。

 

「取り敢えず先に収納しちゃわない?」


【先に解体しないと収納出来そうにないですね】


「ん? 小さいけどでっかく物を入れられるって自慢してなかったっけ?」


【自慢はしていません。事実を述べただけです】


「じゃ、ナゼに? 魔空空間に引き摺り込めば3倍のパワーが得られるのだ!とか出来るやつでしょ」


【違います。出来ません。どこの宇宙犯罪組織ですか! カーゴスペースには空間拡張魔法の術式が刻まれてますが、搬入口を通らないのです】


 手を触れるだけとか、念じるだけでは収納出来ないのか。魔法は万能って訳じゃないのね。


【上位の魔術師か魔導師が随伴していれば可能です。脚はそのまま入るので問題無いですが、厄介なのが胴体部分ですね】


 うわぁ。魔石だけ取り出して残りをポイするにしても……。あれを切り開くのかぁ……。考えただけで身震いするわね。


「じゃ先ず、センサーでサーチ掛けて、魔石の位置を特定してちょうだい」


 うまくピンポイントで取り出せればいいけど、全体を切り裂く事になったら……「内蔵と体液の宝石箱やぁ!」ってなりそうよね。

 どちらにしても、体内の器官が利用できるか調べないとだし……。


 サーチ結果を待つしかないか。


 あ、そういえば、もう一頭の魔獣もそろそろ発見できる頃かな。そっちの対処も考えなくちゃ。忙しい。

 のんびりモフモフの異世界ライフは遠いなぁ……。


【高濃度の魔素の流れがこちらに向かって来ます】


 魔獣か何かが近づいて来てる? 


 えーっと、あ、これか。なんだか固まった感じで近づいて来てるなぁ。木を避けながら進んでるみたいに見えるから、魔物の群体かなぁ。


 んと、カマヤツさん(仮)に付いてたドローンはどうしたっけ。


「チハたん、こっちにいたドローンを魔素の固まりの方に送って。あまり時間が無さそうだからダッシュでお願いね」


【了解。既に向かわせております】


 さすがチハたん。モニターの景色に変わり映えがないから、見てるだけじゃ、どこ飛んでるかわかんないね。


 関節のところでプッチンした脚は全て収納完了。あとは胴体がまるまる残ってる。見ていてもどうなるものでも無いし、解体するか。


 わたしはドローンのモニターに集中しようっと。チハたんには解体を押し……お願いしよう。


「チハたん解体作業よろしく」


【了解】


返事短か!

 

「そろそろドローンが現場に到着しそうですね。現場のドローンさん、今どう言った状況ですか」

「はいはい、こちらドローンです。ただいま現場に来ておりますが……」


【……ひとり遊び楽しそうですね】


「さ、殺伐とした現状に一服の清涼をと思っただけじゃない」


【魔物の解体になんの抵抗も無いので、無駄なフォローは必要無いです(ただ、それをやりたかっただけだとは思いますが……)】


 チハたんの心の声が聞こえた気がする。やっぱりちょっと怒ってるやん。

 ドローンに集中しないと本気で怒られそう。くわばら、くわばら。

 おっと、脳裏に浮かんだ新喜劇の人を消して集中。


 ん? 何も無い。何も居ない。


 でも確かに、魔素の濃い部分って言うか、魔素の固まりがこちらに向かって移動してる。


 なんだろ。自然現象? にしては、動きに意思を感じる。

 魔素を視覚化出来ないから、もどかしいんだけど。魔素センサーのモニターに映る漂ってる感じが、虫とかの群体じゃなく煙っぽい。煙々羅えんえんらとかってこんなのかも。そう、妖怪腕時計に出てきた、えんらえんらさんみたいなやつ。


 よしキミの名前は『えんやこらさん(仮)』で!

 顔も空中に浮かんで無いし、生き物って決まったわけじゃ無いけど、うん、名前大事。


 このままじっと見てても進展はなさそう。思いきってドローンをその固まりに突っ込ませてみる。一瞬、ドローンを囲む素振りを見せたが、すぐに散らばって少し離れたところで、また集まった。


 攻撃はして来ないのかな。大きいビニール袋みたいなのがあれば集められそう。無いからダメだけど。


「チハたん。もう8分程でこっちに着きそうよ。解体途中だけど触手を仕舞って『故 カマヤツさん』から一旦離れる?」


【触手ではありません。マニピュレーターです】


 そして、チハたんはドローンからの監視データを一瞬で取得・解析した。


「こちらに向かって来るのが偶然なのか、目的があるのなら、わたし達か、故カマヤツさんか、どっちを目指してるのか判るし」


【了解です。解体作業中断します。現在、魔法的処置が出来ないので、物理的処理で死骸を隠します】


 チハたんは触手を使い、周囲に散らばっている木の枝や葉で、故カマヤツさんを手早く覆い隠した。


 ……うん。すっごい不自然……。


マニピュレーター(・・・・・・・・)による死骸の隠蔽作業完了しました。移動致しましょう】


「う、うん。すごいわね。わたし達も隠れましょ」


 なんだか、わたしのチハたんを見る目が優しくなった気がした。



【高濃度の魔素の固まり、来ます】





「あ、それ『えんやこらさん(仮)』って名前だからね」


【…………】







 魔空空間。


 文中に出てきた謎の空間ですが、特撮ヒーロー物や戦隊物で同じような謎空間が登場します。

 引き込んだ方が言うほど強くなるわけじゃなく、引き込む意味あるの? って思っていました。

 アレ、実はすっごい大事な事なんですよね。

 大人の事情ってやつです。


 街の中や、ビルの駐車場などで戦いが始まり、クライマックスで大爆発!

 それをVFXで壮大かつ華麗に見せる事が出来なかったので、必要なのが大量の爆薬。

 そんな大規模な爆破を、街なかや撮影所内では出来ないので、やむなく採石場などで撮影する事に。

 で、背景の整合性をとるため、謎空間へご招待って事みたいですよ。


 芸人の皆さま、ロケ場所が採石場だった場合、お気をつけくださいね♪



▼登場人(?)物紹介▼


【故 カマヤツさん】

お亡くなりになったカマヤツさん(仮)のでっかい死骸。

チハたんは死骸。千波は死体と言うが、そこに何のこだわりも意味もない。

素材としての利用価値があるかは、調査研究の結果待ち。


【えんやこらさん(仮)】

高濃度な魔素の固まり。

正体不明。生命体かどうかさえ判らない。

今後の情報に期待。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ