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10.5、 (閑話5-6)小さな親切大きな迷惑


 

 あちこちに散らばっているゴブリンの死体を集めながら、退屈になったわたしはチハたんに話しかけた。


「ねぇチハたん。わたしってなんなんだろ。さっき目が覚めるまでは人間だったのよ。花も実もある現役女子高生、自転車系動画では10万人近くの登録者がいるYouTuberだったのよ。それが事故って気づいたらここでチハたんと一心同体」


 自転車と言えば、わたしのバラクーダくんロードバイク、どうなったんだろ。『納屋に置いときなさい!』って言われてたのを、毎日毎回2階のわたしの部屋まで持ち込んでは磨いていたっけ。


 中古で買ったんだけど、前の持ち主にも大事にされていたのか、10年以上経ってるとは思えないほど綺麗だった。

 いっそ100年くらい経ってたのなら、付喪神として人格が持てたのにね。

 きっとトラックの下で壊れちゃっただろうけど、少しでも使える部分があれば消え去らず残ると良いね。

 

 そんなわたしの感傷を待っていたかのように、しばらくしてチハたんが答えた。


【想定される事として、事故に遭われた貴女は治療法が見つからないまま冷凍睡眠などで保護されていたが、後年それが帝国の手によりデータ処理を受けコマンダーとして送り込まれた】


「それは無いと思う。わたしの世界に大八洲おおやしまって国は無かったし、魔法も無かったもん。太陽も一個だったしね。それにチハたんも知ってるように、わたしにはコマンダーとしての知識も無いよ。わたしは異世界転生だと思ってるんだけど、でもなんで戦車なのかって。そこんとこが分からないのよね」


【異世界転生ですか。物語としてのエンターテイメント性は認めますが現実的では無いですね。帝国でも時空移動の研究はなされていますが、実現したのは物質の転送だけです。時間に関しては、ほぼ不可能というのが大勢を占めています。ましてや別世界など夢物語でしか無いでしょう】

 

 チハたんにとっては、物語は物語、現実は現実って完全に別物なんだね。

 きっと右眼が疼いたり、左腕の包帯の下に何か封じられてたりした事ないのね。弟の智輔ともすけなんか全身を封じている設定で「今日は学校休む」とか言って、ばーちゃんに箒で追い立てられてたりしてたのに。


「でもわたしはきっと別世界から来たよ。太陽は1個だったし、ゴブリンの現実では見た事ないし、魔法なんて無い世界だったもの」


【事故のショックでそう思っているだけでは無いですか? 記憶障害や、せん妄と言って、脳の機能が一時的に低下し、半分現実、半分夢の中にいるような状態になることがありますから】


「でも今わたし、データ?電気信号?なんだよね。夢とか見るの?」


【コマンダーシステムの擬似人格に関しては第一級の軍機に指定されており、データの閲覧は出来ません。推測ですが、人格の模倣時に何かエラーがあったのか、実験的な特殊なアルゴリズムを与えられたのではないかと】


 わたしって失敗作だったりモルモットだったりするのかなぁ……。

 でもしっかり子供の頃からの記憶はあるよね。


 とーさんは研二。なにか植物の研究してる学者さん。ほとんどこっちには帰って来ない。たまに帰って来ると庭によくわからない草を勝手に植えて、ばーちゃんに怒られてる。

 ばーちゃんは伊久子。年齢不詳。不詳っていうか誰も触れられない。一種のアンタッチャブル領域。しなくても良いって言ってるのに、農作業は辞めない。ウチの道場の師範、でも道場にはほとんど顔を出さない。

 弟は智輔。わたしより3つ下の中学二年生。名実ともに厨二病の罹患者で強度のオタク。本人は全力否定してるが無駄である。

 かーさんは……。まぁこの人の事はいいか。


 うん。しっかり家族もいる。覚えてる。


 智輔には、忘れた体操服を片道30分掛かる家まで智輔に取りに行かせて、あいつが無断で学校抜け出したって怒られてるのを横目でチラ見して通り過ぎたり。

 ウチの道場で練習中、脛しか狙わなかったら「ずるい!剣道では脛の受け方とか習ってないし」とか泣き言言ってたから「武道に死角など有ってはならん。いっそうの精進をせよ」ってさらに激しく薙刀で脛を打ちまくったっけ。


 他には……とーさんが持って研究所から帰って来てた植物の標本、綺麗だったから勝手に押し花にしてすごく怒られたな。あとで研究所でも問題になってたっぽい。

 ね。ほら、こんなに記憶はあるし。


 うん。わたしは異世界転生してる。間違いない。


 きっと神様が、美しくも儚く散ったわたしを憐れんで転生させてくれたのかもね。

 ただ……戦車ってのがなぁ……。


 まぁ神様とか妖精とか融通が効かなかったりするよね。


 靴作りに疲れて寝たおじいさんの代わりに、夜中小人達が見本通りに靴を作るんだけど、全く同じに作ったので全部右足ばかりで、起きたおじいさん、材料も無くなり、同じサイズの右足ばかりの靴の山を前にボーゼンってしてたお話とか有名だもんね。

 

 強く健康な身体って事で戦車にしちゃったのかなぁ……。


 まあいいや、秘技『分からんことは気にしない』発動!


 さ、残りのゴブリンさっさと集めて魔石ホジホジしないとね。







5話と6話の間くらいのお話しです。



 投稿もようやく10話を越えました。


 果たして楽しんで頂けてるのかちょっと不安です。

「全然面白くないよ。どこまで面白く無くなるから続けて読んでやる」とか「読んだ。まあまあだった」とか「面白かった」とか一言で良いので感想頂けたら嬉しいです。


 評価も★5個とか贅沢は言いません。1個でも2個でもよろしくお願いします。

 またリアクションマークでも喜んじゃいます。


 ページ開いてるだけじゃ無く、読んでるよってリアクションが欲しいマノマナでした。

 

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