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1、寝たきり転生? 灰色の脳細胞で無双します


 初めまして。


 勇気を出しての初投稿です。

 先ずは続ける事を目標にしたいと思っております。






「ひゃー! 飛んでるぅぅ」


 ハンドルを握りしめたおじいさんの顔、青い空、アスファルトの道路、宅配便のミニバン、通勤途中のサラリーマン、歩道の街路樹。それらがぐるぐる回りながら、わたしの目の前を流れてゆく。


 いきなりわたし目掛けて突進して来たハイブリッドカーに、ノーブレーキで突っ込まれた様だ。


 少し先を飛んでいるのは、わたしが毎日通学に使ってる自転車ロードバイクのバラクーダくん。


 デリバリーのバイトで貯めたお金でパーツ交換したり、毎日のように磨いたり整備したりして大事に乗ってたのに。


 傷ついちゃヤダなぁ……



 って!

 あぁー! 後輪リアホイールのリムが割れてる! あれもネットオークションで最近ゲットしたばかりなのに。

 そんな痛々しい姿を晒しながら、先に地面にたどり着いたバラクーダくんが隣の車線に滑っていく。


 げ! トラックが来てるよ!


「バラクーダくん、逃げてー!」


 わたしの願いも虚しく、トラックがバラクーダくんを踏みつけていく。

 交換したばかりの変速機ディレイラー……さようなら……。交換と調整、めちゃくちゃ大変だったのに。


 そして、バラクーダくんの後半分がトラックの下に消えてゆく。踏みつけられたフレームの前半部分が少し持ち上がり、わたしの方を悲しそうに見ている気がした。



 続いてわたしも、ようやく地面に到着。そのままバラクーダくんの後を追うように、トラックの後輪に向かって滑っていく。


「これは死ぬな……」


 もしわたしが乗っていたのが、華奢で華麗なバラクーダくんじゃなく、トラックにも負けないくらいごつくて頑丈な車だったら。

 逆走してきていきなり交差点を曲がったママチャリおばさん、後方確認無しで営業車のドアを開けたおじさん、中央車線からコンビニの駐車場へ最短ダッシュしたハイブリッドカーのおじいさん。

 そんなの全部無視して突っ込んでやったのに。


「トラックの人、ごめんなさい。トラウマにならないと良いけどね」




 そして、わたしの世界は終わった。






「ぷっふぁー」


 知らない空だ。


 抜けるような青空にぽっかり浮かんだ白い雲。そこまではわたしも知っている普通の空。マゼンタ70%の少し濃いめのブルーだけどね。

 

 そんなことはさておき、知っている空と確実に違うのが太陽だ。


 うん、2個あるね。連星、双子星、二重太陽、言い方はそれぞれだけど、少し離れて並んだ2つの太陽が空に輝いている。

 それぞれ大きさは違ってて、比率で言うとドッジボールとソフトボールくらいの差かな。どちらも見かけのサイズはもっとずーっと小さいけどね。

 色はどちらもいつも見ていた太陽とそんなに変わんない。

 青と赤の二重太陽系なら、片方だけ沈んだら変な光線が出て、狂気の果てにみんな死んじゃうって円錐頭のジェイムスン教授が言ってたけど、ここのは問題は無さそう。

 それに問題があったにしても、どうすることもできないしね。


 まあ、とにかく知らない空だ。


 これはきっと巷で流行の異世界転生ってやつよね。夢にしてはリアルすぎる。

 明晰夢ってやつがあるらしいけど、そんな感じじゃないような気がする。  ま、明晰夢って見た記憶がないから確かなことはわかんないけど多分違う。きっと異世界。


 どんな世界だとしても、成るようにしか成らないし、わかんないことで悩むなら、それを楽しめってウチのイッコばあちゃんも言ってたしね。


 イッコばあちゃんは『千波や。宿題なんぞ自分が必要と思わんかったらせんでええのじゃ。明日のことを憂うより、今を楽しく生きるんじゃ。じゃから、マリカーもう一回やるぞ』って言ってたし。

 語尾は「じゃ」とかじゃなく普通だったけどね。まあそこはイメージですよ、イメージ。


 その教えが染み付いているのか、死んじゃってるかもしれないのに、呑気にそんなことを考えている。

 そんなお気楽なわたしだけど、今とても気になることがある。


 そう、見える景色が固定されているのだ。

 目は動かせるっぽいけど、首が回らない。借金はないはずなんだけどなあ。親には借りてるかもしれないけど、それは返す気がないのでノーカウントだ。


 それに、手足の感覚もぼんやりしていて、そこに有るような無いような。


「まさか『寝たきり転生 灰色の脳細胞で無双します』ってタイトル付けられたりしないよね?」


 ん? でも視線は空を向いてなくて、正面が見えている。立ったままぼーってしてる感じって言えば良いのかな。


 目の前の風景は、梢が複雑に絡み合って地面まではあんまり光が届きそうにない感じの森が広がってる。そこからこちら側には下草が生い茂ってる草原が100メートル程続いてる。

 だからわたしの周辺は明るく空も抜けていて爽やかって感じだけど、少し先は薄暗い森が続いてる。視界が正面に固定されていて左右が見渡せないのでちょっと不安。

 

 プロパンガスを運ぶ台車に頭ごと固定されて縛り付けられて、そのまま放置されてる感じ。


 げっ! もしかして銅像に転生とか?

 絶対嫌だ。そんな事になったらツバメに身ぐるみ剥がされる未来しか見えん。


 んー、なんとか動けないものか。


「イッチニー、イッチニィ、オイッチニー」

 だめ、動ける気がしない。とりあえず首だけでも……。


「ンググググッ……」


 ガゴッ!


 ん?なんか動いた気がする。すごい音したけど。

首が回ったというより、正面向いたまま視界が右側に少しズレた感じ。なんだこれ?


 今度は左側を試してみよう。


「ンググググッ……」


 ガゴッ、ガゴッ、ガゴッ!

 左側も見えるのはわかったけど、すごく疲れた。眠い。


 こんなところでワケわかんない状態で寝ちゃダメなんだろうけど……無理だ。寝る……。



【警告! 未確認生命体接近中……】



ん?








 投稿第一話、時間を取って読んで頂きありがとうございます。


 ほんの少しでも興味を持って頂けたら良い悪いなど評価よろしくお願いします。続ける原動力になると思います。


 作中、自転車での事故がありますが、皆様もお気をつけくださいね。

 ようやく自転車に対する取り締まりも厳しくなり、少しは快適になれば良いなと思っております。



▼(本編にあまり関係のない)登場人物紹介▼


陸路千波(むつろちなみ)

高校ニ年生

自転車通学中事故に巻き込まれ異世界に転生。

自転車漫画「泣き虫クランク」、「ちりりん」に影響され、高校入学時に中古のロードバイクを購入。

以後毎日トレーニングを兼ねて火兎鼓舞山山頂経由(約25Km)で学校に通っている。


【バラクーダくん】

ベース車体:FUJI barracuda(白/銀)

千波が高校入学時6万円で購入した中古のロードバイク

パーツの軽量化、グレードアップに伴い、購入時の姿はフレームのみ。

本体含め全てネトオクで購入。

通学途中交通事故に巻き込まれる。

スポークにてトラックのタイヤに一太刀浴びせるが、敢え無く路上の錆となる。


陸路伊久子(イッコばあちゃん)

千波の父方の祖母

年齢不詳。千波が幼稚園児の頃から38歳としか言わない。

千波の母が早くに他界し、祖母の家で、祖母、父、弟と千波の4人暮らし。

一家言ある様な事を言っているが、その都度主張が変わる。

口癖『それはそれ、これはこれ』

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