表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14

第8話 : 王の馬に勝手に“神名”をつける


王直属の兵として預かられてから時は過ぎ…

もはや玉座の間も訓練場も、台所すらも好き勝手に出入りしている少女――カナタ。


そして今、彼女は王の馬に、祈りを捧げていた。


 


「我が右腕となる影の駿馬よ……この身と魂を共にし、汝の名を刻まん……」


「……何をしている」


背後から響いた、鋼のような低音。


カナタは振り返らず、黒馬の額に手をかざしながら答えた。


「今、この子に“真名”を与えてるところ」


「その馬は王直属軍の軍馬だ」


「わかってる。だからこそ。私の――いや、王の影にふさわしい名を……」


 


彼女は、少し身を引き、黒馬の瞳を見つめる。


「汝の名は……《グラギュラ=オブ=ノクティア》ッ!」


「……は?」


「通称グラちゃん。グラちゃん、お腹すいてる?」


 


王「……その馬に名をつける許可を誰が出した」


カナタ「我が魂と共鳴せし、運命の絆が──」


王「出していない」


 


兵士たちが少し遠巻きに様子を見ている。

その中で、黒馬は「ヒヒン」と微かに鳴いた。


 


「ほら! 今、返事した! グラちゃん、私の言葉がわかるんだよ」


「……鳴いただけだ」


 


「グラちゃん……かわいい。王様より目が優しい」


「…………」


 


ライヴ、無言で手袋を外し、愛馬の頭を撫でる。

馬は穏やかな瞳で主人を見返した。


 


カナタ「……! グラちゃん……王様のことも、ちゃんと見てるんだね……!」


ライヴ「“グラちゃん”と呼ぶな」


カナタ「じゃあ、フルネームで呼ぶね。《グラギュラ=オブ=ノクティア》!」


ライヴ「やめろ。馬が混乱する」


 


「……でも、“グラちゃん”のほうが通じてる気がする」


「私は今まで“黒騎”と呼んでいた。騎馬番号の一番機。番号制だ」


「それはちょっと味気ないよ。戦友でしょ? 心の通った絆の名前を……こう、感覚で!」


 


ライヴが静かに目を閉じる。


 


「貴様の感覚は信用できん」


 


その言葉に、カナタはしばし考え――


「じゃあ、次に炊いたご飯が爆発しなかったら、グラちゃん採用ってことで」


「なぜご飯が審査基準なのだ」


 


カナタ、今日も“絆”の名のもとに、勝手に命名。

黒騎――もといグラちゃん、試練の日々が始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ