第3話:王様の寝室に勝手に侵入すな
深夜。
王宮の回廊を、そろりそろりと歩く影がひとつ。
「ふふふ……我が封印された眠りを解くため、王様の魔力を借りねば……」
そう呟きながら、裸足のまま歩く少女。
黒髪をふわりとなびかせ、手にはなぜか鉄鍋。
「やっぱり、睡眠って魂の波長だよね……」
目指すは王の私室。扉には当然、近衛の騎士が立っているが――
「……むんっ!」
「ぐっ……!?(ズシャッ)」
軽く手刀で気絶させた。
彼女なりに優しさ全開の“気絶させるだけ”モードである(ただし、2週間入院)。
カナタは、音を立てぬよう慎重に扉を開いた。
「王様……おやすみ中……?」
月明かりが照らす部屋の奥に、ベッド。
静かに寝息を立てる男の影。
だがカナタはその横にすとんと正座して、まるで墓前に供えるように、鉄鍋をそっと床に置いた。
「今夜の“共鳴供物”……魂米と、煮干し」
「……起きているぞ」
「ひゃっ」
暗がりから聞こえる、低い声。
布団からわずかに覗いた眼光が、月のように鋭い。
「……何故いる」
「魂が導くままに……」
「扉の騎士が気絶しているが?」
「たぶん気のせいです。風です。気圧です」
「鉄鍋持ってくる風があるか」
「……たぶん、ある世界もあります」
ライヴは布団からゆっくり起き上がり、まっすぐカナタを見据えた。
「一つだけ聞く。お前は……寝る気があるのか」
「むしろここで寝る気満々です!」
「出て行け」
「お米、炊きますけど?」
「いらん。今は寝る」
「じゃあ、添い寝だけでも――」
「衛兵を呼ぶぞ」
そしてカナタは、鍋と共に押し出された。
※この後、近衛騎士の交代が倍速になり、扉に強化錠が取り付けられたという。