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第2話:謁見中に“魂共鳴の儀”を始めるな


謁見の間。

エアルザーン王国の重臣たちが一列に並び、

今日も粛々と政が進められていた。


黒き鷲王ライヴ・ノワル・アルヴァレストは、

無駄な言葉を交わすことなく、冷静に指示を出し続けていた――そのはずだった。


 


「陛下、次の議題は国境沿いの――」


 


「…………」


 


「王様……!」


「……今は黙っていろ。」


 


その声を聞いた瞬間、室内の空気が変わった。


重臣たちが固まる。衛兵が一歩下がる。


そして――カナタが、王の玉座の脇からスルスルと現れた。


 


「“契約者たる我が魂”、いま共鳴の刻を迎えん……!」


「おい、待て」


 


ドンッ、と音を立ててカナタは片膝をついた。


右手を胸に、左手を空にかざし、謁見の間のど真ん中でポーズを決める。


 


「汝が命脈と我が鼓動、今ここに同調せし儀――魂共鳴の儀、発動ッ!!」


 


「やめろォ!!」

ライヴの内心ツッコミが爆発した。


だが、顔には出さない。


 


「……陛下……今のは……」


「無視しろ。続けろ」


「えっ、続けるんですか……?」


 


部屋の隅にいた宰相が顔を引きつらせるなか、

カナタはじっとライヴを見つめていた。


 


「王様……いま、胸が熱くなりましたか?」


「なっていない。心拍も平常だ」


「……おかしいな……さっきより視線が深くて、魂がふるふるしてるのに……」


「それはお前の血糖値の問題だ。朝食を取れ」


 


部屋中が沈黙した。


まさか王が、“血糖値”という単語を発する日が来るとは思わなかった。


 


「……王様」


「もう喋るな」


 


こうして――


謁見の間で発動された《魂共鳴の儀》は、特に何も起こさず終了した。


 


※のちに文官の報告書に「謁見中に“謎の儀式”を実施した件、詳細不明」とだけ記録され、公式記録には残らなかった。



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