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ヴァレンシュタインシリーズ

盲目の国

作者: 川里隼生

 読者諸氏はヴァレンシュタインという名の公国をご存知だろうか。ドイツとポーランドの間に位置する、人口四万人ほどの小国だ。豊かな自然と美しい景観を利用した観光産業が国の経済を支えている。


 現在、このヴァレンシュタイン公国には視覚障害を持った国民がいない。正確には目に何らかのハンディキャップを負った人間が一人もいないわけではないのだが、直近の総務局による調査では先天性全盲の国民は確認されなかったという。そのためか、ヴァレンシュタイン国内にはバリアフリー設備や法整備が行き届いていない。


 二〇二六年の国議会に、将来誕生するかもしれない視覚障害を持った国民へのバリアフリー環境整備予算案が提出された。具体的には欧州高速国際鉄道ヴァレンシュタイン駅への点字ブロック、点字案内板、自動音声案内システム及びホームドアを設置する工事を行い、それにかかる費用の負担を国に求めるものだ。


 欧州高速国際鉄道にはヴァレンシュタインの他にもスコピエやベオグラードなど、いくつかの駅でホームドアが設置されておらず、利用客の線路への転落事故が発生している。オランダではアムステルダムとロッテルダムの二駅を国の予算で改修し、視覚障害者と車椅子利用者に対するバリアフリー化を行った。


 生まれてくるかどうかもわからない将来の国民より、近年減少しつつある観光客の誘致政策に予算を割り当てたいとの意見が、今のところは多数派だ。この国に視覚障害を持った国民はいない。しかし、ある議員はヴァレンシュタインを「盲目の国」と形容した。読者諸氏は、ヴァレンシュタインがどのように舵を切るべきと考えるだろうか。

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