表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/66

英雄騎士様がやって来た 3

ノクサス様のお邸は一際大きかった。

大きな門に、広がる緑の芝生に美しく整えられた庭園。

噴水に、ガゼボまで見える。


邸は大豪邸で、玄関も圧倒されるほどのものだ。馬車の窓に手を当てて目が輝いてしまう。


「ノクサス様……すごいお邸ですね」

「戦の報奨らしい」


らしい……って、ノクサス様がもらったのでは?

この人は、本当にノクサス様なのだろうかと、不安になる。


「ダリア、手を……」

「はい」


馬車から降りるのに、手を差し出されて添えると、ノクサス様は少し嬉しそうだった。

そして、玄関の扉が開く。

執事が、主であるノクサス様を迎えたのだ。

執事もまだ若い。20歳代に見える。


「ノクサス様、お帰りなさいませ」

「今帰った」


威厳があるように、主らしく邸に入るノクサス様に続いて私も歩いた。


「アーベル。青の間に行く」

「かしこまりました」


どこに連れて行かれるのだろうと、ノクサス様を見上げると、視線に気づいたのか、ノクサスが振り向いてくれた。


「ダリア、青の間なら人は近づかない。そちらでゆっくりしよう」

「はい……」


なんだろうか……ノクサス様は優しい。


邸の中も豪華絢爛で、立派な調度品に目を奪われる。

絶対にマレット伯爵様よりも、立派な邸だ。


青い絨毯の敷かれた階段を上がると、三階の一番奥の部屋に案内された。

ここは、ノクサス様の私室で休憩などに使っている部屋らしい。


部屋に入るなり、フェルさんは扉を閉めた。

そして、ノクサス様は私の方を向く。


「ダリア、会えて良かった……」

「は、はい……」


これはなんでしょう? と、後ろにいるフェルさんを向くと、微笑ましく頷かれる。

絶対に私の心の声は届いてない。


「ノクサス様、座りましょう。ダリア様にお話を……」

「あぁ、そうだな」

「ダリア様、ご安心ください。この青の間は誰も近寄りませんから」

「は、はぁ……」


何の安心かは、私にはわからない。

人に聞かれたくない話とは一体なんなのだろうか?

お世話係を頼みに来たはずですよね??


そして、向かい合って座る。


「実は……」


フェルさんはそう始めた。

私は、緊張しながら、話に耳を傾けた。

その時、ノックの音がした。

ドアが開くと、執事の方がお茶を持って来たのだ。


「どうぞ。ダリア様」

「ありがとうございます」


香りの良い紅茶だった。

紅茶には、薔薇の花びらが2つ浮かんでおりお洒落だ。

ちょっと可愛い。


「アーベルもそのままいてください」

「かしこまりました」


フェルさんが、アーベルさんも引き留めると、ノクサス様の後ろに立った。

そして、またフェルさんが話を始めた。


「ダリア様、実は……」

「はい」

「ノクサス様のお世話をお願いしたいのです」

「あの……お世話のお仕事にはあがろうと思っておりますが……」


何か違和感がある。

ノクサス様がこちらを見つめているからかもしれない。

その後ろにいるフェルさんとアーベルさんは顔を見合わした。


「本当ですか!? あぁ! 本当に良かった! ダリア様、感謝いたします!」


フェルさんもアーベルさんもほっとしたように喜んだ。


「あの、ノクサス様はどうして私を?」

「……実はだな。……ないのだ」

「何をですか?」

「記憶がないのだ……」


衝撃の発言だった。

それが、私と一体なにが関係あるのだろうか。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ