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英雄騎士様がやって来た 2

「ダリア、怖かっただろう? 大丈夫か?」


呆然としたままの私に、ノクサス様が心配そうに聞いてきた。


「ノクサス様……? 私……」

「やはり君は俺を知っているんだな!?」

「ノクサス様、こちらのダリア様でお間違えの無いですね?」

「間違いない! ダリアだ! ダリアも俺がわかっている!」


会話がおかしい……。

なにかがおかしいのですよ。


興奮気味に、二人の会話は盛り上がっている。

私は、自分の屋敷なのに、おいてきぼりの気分の状態だった。

そして、私はノクサス様のことなんか知りません。


「あの……ノクサス様ですよね?」

「そのようだ!」


そのようだ……って、返答がおかしくないですか?


「ノクサス様、ここでは……」


フェルが、ノクサス様の会話を止めた。

そして、またノクサス様は私の方を向く。

私は、呆然としながらも、小刻みに震えている身体を抑えるように両腕を握りしめたままだった。


「そうだな……ダリア、すぐに一緒に行こう。ここは危険だ」

「ここが私の家です……」

「しかし、あの男がまた来ればどうするんだ? 君に何かあれば……」

「ダリア様、とりあえずご一緒ください。ノクサス様のお邸に行きましょう。ダリア様に何かあれば、一大事です」

「で、でもまだ、準備が……!」

「君をここに一人残せない。どうか一緒に来て欲しい。君と話もしたい……」


懇願するように、ノクサス様は私の手を取りそう言った。

まるで私にすがっているように見える。


「ダリア様……どうかノクサス様のお邸でお話を聞いてください」

「……わかりました。お話を聞きます」

「あぁ、良かった。すぐに出発しよう」


ノクサス様は、ほっとしたように笑みを浮かべ私を見た。

その様子に、顔は半分隠れているが、ドキリとした。

簡素な庭に出ると、ノクサス様が乗って来た立派な馬車があった。

御者はどうやら、フェルさんがしているようだ。


「ダリア、こちらに……」

「は、はい」


ノクサス様にエスコートされて馬車に乗った。

そのまま、ノクサス様の乗って来た馬車に乗せられて出発してしまった。


馬車の中では、ノクサス様が向かいに座っていた。


「……ダリア、あの男はなんだ?」

「マレット伯爵様です。私が妾にあがる伯爵様です」

「妾!? 君がか!?」


仮面のない左目が、ぱちくりと見開く。

どうやら、かなり驚きを隠せないらしい。


「どうして妾に……あの男が好きなのか?」

「マレット伯爵様には、借金があるのです。父が亡くなり借金の返済が追い付かなくて……」

「なら、やめてくれ。金なら、なんとかしよう」

「お給金が良いということですか?」

「君に妾になって欲しくない」

「あの……どうして……?」


ノクサス様は、横を向き考えてしまった。


「すまないが、ここでは話せない。邸でゆっくり話したい」

「はい……」


仮面から黒髪が垂れて、灰色の瞳が覗いていた。

引き締まった眼に、どこか困っているのがわかる。


「ダリア……隣に座っても?」

「はい……どうぞ」


ノクサス様は、そう言って私の隣に座り直した。

なんだか不安気にも見える。



そのまま無言になり、馬車はノクサス様の大きな邸に到着した。





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