表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄騎士様は呪われています。そして、記憶喪失中らしいです。溺愛の理由?記憶がないから誰にもわかりません。  作者: 屋月 トム伽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/66

噓も必要です





驚いたまま私を見ていたかと思うと、目を逸らしてしまった。


「……大事な用があるなら、休んでもかまわないが……ダリアを離す気はない」

「お暇は? お暇なら良いということですよね?」

「長期間はやめて欲しい。用があるなら俺も一緒に行こう」


ノクサス様が一緒に来てどうするのです。

騎士団に不法侵入しようとしていることがバレてしまう。

騎士団長に犯罪をバレるわけにはいかないのですよ。

ノクサス様に師匠は会わせたいけれど……。


その間もノクサス様は、怪しんだ顔で私を見ていた。

とにかくこの部屋から早く追い出さないと、色々追求されそうだった。


「ノクサス様。そろそろ起きて支度をしましょう。ランドン公爵令嬢様も朝食に来ますし、お待たせするわけにはいきません。ノクサス様の手当てもありますから……着替えたらすぐにでもしましょう」

「それなら、今からしてくれ。折角一緒にいるのだから……」

「かまいませんが……では、すぐに準備しますね」


そう言って、ベッドから降りて、タオルなどを準備した。

そして、いつも通り顔を拭いて回復魔法をかける。


「ダリア。この顔は気持ち悪くないか?」

「これは怪我ですから……呪いのせいでもありますし。気持ち悪いということはありませんよ」

「……他の者はこれを気味悪いと思うやつもいる」

「呪いを知らないからじゃないですか? それに片面のマスクをいつも着けているからだと思いますよ」


顔のどす黒さに驚くかもしれないが、それは誰のせいでもない。

でも、きっとノクサス様は、気味悪がられて嫌な思いをしたのだろう。


「ノクサス様。きっと治しますからね」

「ダリアなら治せる気がする」

「……思い込みが激しいのは昔からですか?」

「さぁ? 記憶がないからわからないな」


絶対に思い込みが激しかったと思う。

顔を気にしているのか、と思うと、ノクサス様は、フッと笑みを浮かべていた。


そして、終わるとノクサス様は、私の荷物を持って行く。

私が帰って来ないと思ったのか、せめてもの抵抗なのだろうか。

でも私は、そんなことで諦めるような人間ではない。

荷物がないなら手ぶらで行くだけだ。

早く師匠のところに行って、また魔法をかけ直してもらわなければ……そう焦ってしまう。


朝食にはランドン公爵令嬢様がお待ちかねだった。

私とノクサス様が、一緒に朝食に来るとまた不機嫌になる。


「あなたは、朝から何をしているのです?」

「お仕事です。朝のノクサス様のお世話をしていました」

「サボりなさいと言ったでしょう?」

「サボってどうするのですか……ノクサス様が困ってしまいますよ」


私の能力が低いから回数を増やして魔法をかけているのに。


「そのことなら、心配いりませんよ。私が優秀な白魔法使いを呼んでます」

「いらないと言ったでしょう」


ノクサス様は呆れ気味だった。

ランドン公爵令嬢様は、ただの傷ぐらいしか思ってないのだろう。

ノクサス様たちは呪いのことは隠していると言っていたし……。


「その娘で治らないなら、役立たずですよ。もっと優秀な白魔法使いのほうがいいはずでしょう」

「ダリアと騎士団の白魔法使いに任せてますから、他人を邸にいれるつもりはありません。これ以上勝手をされるなら、今すぐに陛下に談判します」

「ご不興を買うのではないかしらね」

「かまいませんね。ダリアの為なら陛下とも争います」


ランドン公爵令嬢様は、ムッとしてしまう。

しかも、陛下と戦争でもするつもりなのか、ノクサス様は怒っている。

本気でやり合いそうな雰囲気だ。

私が役立たずだと言われたからだろうか。

鎮めたほうがいいのでは? と思い、給仕のために後ろに立っているアーベルさんにフォローを期待して振り向くと、頷いていた。

アーベルさんも陛下と争うつもりなのか、まさかの謀反人を発見した気分になる。

どれだけノクサス様に忠実なのか。私には、アーベルさんは意外と困った人に見えてきている。


でも、少しだけいい事を聞いた。

『ダリアと騎士団の白魔法使いに……』と言ったのだ。

それなら、私が留守にしても大丈夫だろう。

私がいなければ騎士団の白魔法使いにしてもらえるはずだ。

そう思うと、少しだけホッとした。


そして、仕事に行くと言ってそのまま私は、自分の馬で邸を去った。

街の外の往診に行くと嘘をついて……。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ