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英雄騎士様は呪われています。そして、記憶喪失中らしいです。溺愛の理由?記憶がないから誰にもわかりません。  作者: 屋月 トム伽


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過去を探らないでください 5

ダリアは真面目だった。


でも、「結婚して欲しい」と伝えても、「私は出来ないのです」と頑なに受け入れてくれない。


それでも、毎日毎日俺の世話をしてくれる。

顔を拭いて、時には髪もすいてくれる。

確かに能力は低いが一日に2度、時には3度も回復魔法をかけてくれる。

以前から診てもらっていた騎士団の白魔法使いも、「能力が低いながらも回数を増やしているので、しばらくはこれで大丈夫でしょう」と言っていた。

その白魔法使いは、ノエルという名前の騎士団所属の白魔法使いで、俺の呪いのことも知っている数少ない人物だ。

今も、呪いの進行も彼が抑えている。

本当なら、彼に呪いの解除の魔法をしてもらうつもりだったのに、彼にも解除は成功しなかった。かなり強い呪いなのか、それとも呪いの核となったものが見つからないからか、呪いの解除に難航していた。

魔物には、核となる宝石持ちの者もいる。おそらく核持ちの魔物だったのだろう。

魔物の核は高値で売買される。誰かが拾って流通してしまえば、もうどこにあるかはわからない。

呪いが解けないから、瘴気も浸み込んだままなのだろう、とノエルは言っていた。


ノエルよりも、能力の高い白魔法使いがいればいいが、ノエルは騎士団でもトップクラスだ。

そうそう能力の高い白魔法使いなどいない。

改善の道も見えぬまま、毎日がすぎていた。


そして、今日はダリアを調べていたフェルが騎士団本部の執務室に急いでやって来た。

フェルはダリアと俺の接点がないかと、ずっとダリアを調べていた。


「ノクサス様。ダリア様のことで不審な点が見つかりました!」

「ダリアに不審なことはないだろう? あんなに可愛いじゃないか」

「そういうことではないのです! 経歴を魔法で隠していました!」


いきなりの発言に驚きはある。

経歴を隠すなんて普通じゃない。


「借金を調べていたのですが、何に使ったのかと調べていましたら、ノエルが魔法を感じ取ったのですよ。金の流れが膨大で一緒に調べてもらって助かりました。俺では、気づかないくらいの魔法が巧妙にかけられていました」


借金はもう何年も前からあり、親子で返していたのだろう。

ルヴェル伯爵家の領地もすでにマレット伯爵家の領地にと正式に認められており、取り返すことは出来ない。

それでも、返しきれないほどの借金。父親は王都の書庫の仕事に加えて、個人で写本の仕事なども受けていたようだった。

そのうえダリアも働き、借金の足しにしていたようだった。


「そこまではいいのですよ! 問題は、何故隠すか、ですよ! しかも、隠していたのは、金の流れではないのですよ。さっきも言いましたが、経歴を隠しているんです。従軍していたんです! 従軍していたことを隠す必要がありますか!? もしかしたら、従軍の慰安金ももらえたかもしれないのに……。金がないのに、それを捨ててまで隠すなんてなにかありますよ。もしかしたら、そこでノクサス様とお会いしていたのかも……」

「しかし、ダリアが言わなかったという事は、言いたくない事なのではないか?」

「それでも、確認する必要があると思います。記憶が戻るきっかけになるなら、ダリア様に聞きましょう」


ダリアはそんなことを言わなかった。

そう言えば、俺がずっと前線にいたかと、聞いてきた。

思い当たることがあるのだろうか?


「フェル。俺は、ずっと前線か?」

「大体はそうです。ノクサス様は、先陣を切っていましたから……。一番前線から離れていた時は前任の騎士団長が戦死した時です。王都に遺体を帰すときには途中までは見送りましたけれど……ノクサス様が前線を長期に抜けるわけにはいかずに、すぐにお戻りになったはずです。代わりに俺や他の者たちで前騎士団長を連れて帰ったのですよ」


すぐに戻って、何事もなかったのだろう。なにかあればフェルが不審に思うのではないだろうか。


「とにかく、確認しましょう!」とフェルは、今夜にでもダリアを問い詰める気になっていた。


正直気が進まない。隠してまで言わないなんて、暴くことではないのではないか。

しかし、ダリアのことは知りたい。

妾にあがらなくていいようにしたいのに、領地も取り返してやれない。

せめて残りの借金を返してダリアが妾にあがらないようにしたいのに、ダリアは借金の金額を絶対に言わない。

それも本当にわからない。妾になりたいようにも見えないのに、何故助けを求めないのか……。

その金額も踏まえて、フェルに調べさせていたのに、まさかの経歴隠しがみつかるとは予想外だった。


本当なら、すぐにでもダリアのもとに行きたいのに、騎士団長という立場から、仕事も放棄出来ない。記憶のない俺に務まるものでもないだろうに……。


そして、やっと夜にダリアの待つ邸へと帰った。


 







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