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英雄騎士様は呪われています。そして、記憶喪失中らしいです。溺愛の理由?記憶がないから誰にもわかりません。  作者: 屋月 トム伽


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過去を探らないでください 3

自分から仕事をさせてくださいと言ったのに、花一つ持って来られなかった。

それどころか、しばらく部屋にこもってしまっていた。

しばらく震えが止まらずに、こんな様子は人には見せられなかった。


やっと落ち着いた頃にはもう日は暮れている。


アーベルさんたちに謝らなければと、階下に降りると庭師2人は安堵していた。

いきなりあんな様子を見せられたら驚くだろう。

「本当にすみませんでした」と頭を下げた。


アーベルさんは見当たらず、どうやら晩餐の支度に食堂にいるようだった。

謝罪をして階上に戻ると、ちょうどノクサス様がお帰りだった。

アーベルさんは、ノクサス様のマントを預かっているところだった。


「ダリア! 大丈夫か!?」

「はい。おかえりなさいませ、ノクサス様」


心配している様子に、アーベルさんが庭園の小屋での出来事をすでに報告したのだとわかる。


「ダリア様。本当に大丈夫ですか? かなり真っ青でしたが……」


アーベルさんは、小屋から逃げて行くところを見ていた。

どうやら、庭師2人がなにかしたのだろうかと、問い詰めたらしいが小屋にはそんなあともなく、誰も理由がわからない。

そう思って、様子をみていたらしい。

庭師2人のせいにならなくて良かったと思う。


「ノクサス様、私はなんともありません。ご迷惑をおかけしました」

「一体なにが……」

「……なにも。急に暗くなったから驚いただけです。本当にそれだけですから」


理由を言うつもりはない。ノクサス様の後ろにいるアーベルさんは、ちょっとどころの驚いた様子ではなかったですよ、と言いたいのか、いぶかしんでいる。


「やはり、邸から出せない……これ以上なにかあれば……」

「これ以上……って、何か思い出しましたか?」

「思い出したというか……唐突に頭に降ってくる感じなのだが……しかし、ダリアのことを考えているとそういう事になるということは、やはり、ダリアとは以前から知り合っていたのだ」

「気のせいではなくてですか? 私は、違うダリアかなぁとか思っているのですが……」

「絶対に違うダリアじゃない。それだけは確信がある!」

「覚えてないのにですか?」

「お、覚えてなくとも、ダリアのことは覚えている」


確信はあると言って、グッと拳を握るノクサス様。

記憶喪失ではない私のほうが、確信がない。


そのまま、ノクサス様に連れられて食事に行くのかと思いきや、持っていた箱を出される。


「ダリアへ贈りたい。今日はゆっくりできなくてすまなかった。帰りに選んだのだが……」

「気にしていませんでした。お仕事ですし……婚約者の方とお茶を一緒にするのは当然です」

「あれは婚約者ではない」


照れながら、差し出してくれるノクサス様が不器用に見えて少し可愛い。

でも、気にしてなかった私がもらっていいものだろうか?

むしろ小屋の出来事があって、婚約者様のことは忘れていたくらいだった。


「……」

「気に入ってくれると嬉しいのだが……」

「もらえないのですが……婚約者様がなんというか」

「もう一度言うが、あれは婚約者ではない。俺にはダリアだけだ」

「今は婚約者ではなくても、陛下の姪御様ならいずれそうなります。ノクサス様は、国の英雄ですから」

「関係ない。俺がダリアに贈りたいのだ」


そう言って、私の手を取った。

手のひらに乗せられた箱は私の手よりも、少しだけ大きい。


「あの……ありがとうございます」


渡された箱を見て、嬉しいと思ってしまった。

もらってはいけないことはわかっているけれど、私のために選んでくださったのが嬉しいと思ってしまう。

その様子に、ノクサス様はホッとした表情を浮かべた。


「受け取ってくれて良かった。他にもあるんだ。すぐに居間に並べよう。アーベル、御者とダリアの贈り物を部屋に運んでくれ」

「かしこまりました!」

「ちょっと待ってください!!」


今、ちょっと感動していたんですよ!

なにが「かしこまりました!」ですか!?


「どうした?」

「贈り物はこれだけですよね!?」

「まだあるぞ? ドレスや靴も買ってきた。帽子もあるぞ」


キョトンとしたノクサス様と違い、私はふらりと青ざめそうだった。

その隙にアーベルさんは、馬車に積んでいたであろう私への贈り物を、運ぼうと動いている。


「ノクサス様! 私はいりません!!」

「何を言っているんだ? たった今、ありがとう、と嬉しそうに受けとってくれたじゃないか?」

「この箱だけかと思ったからです!」

「一つとは言ってないぞ? まだまだ贈りたいから、足りないぐらいだ」

「どんな交渉術ですか!? 変なことしないでください!」


私がそう言っている間にも、ノクサス様は「丁重にダリアの部屋に運べ」と言っている。

もう、私の話を聞く気はなさそうだった。


「さぁダリア。食事にしようか?」

「……先に部屋にいただいたものを置いてきます」

「では、一緒に行こう。一人にしたくない」

「そうですか……」


ノクサス様の満足そうな表情に見つめられながら、いただいた物を大事に抱えて部屋へと歩いた。





お知らせです!

明日12/24【望まれない王女の白い結婚…のはずが途中から王子の溺愛が始まりました。】が発売されます!

どうぞお手にとってくださいませ_(._.)_


挿絵(By みてみん)

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