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英雄騎士様は呪われています。そして、記憶喪失中らしいです。溺愛の理由?記憶がないから誰にもわかりません。  作者: 屋月 トム伽


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過去を探らないでください 2

あの階段から落ちて、目が覚めた時。


頭にはダリアのことしかなかった。

早く行ってやらねば……と。


自分のこともフェルたちのことも何も覚えてなかったのに、ダリアの名前と顔だけは覚えていた。


何故、早く行ってやらねばと、思っていたのかもわからない。

ダリアは俺と初対面だと言うし、フェルは記憶が甦るきっかけになるかもと、ダリアを調べようとしている。


それに、ポケットには赤のリボンの付いた指輪の小箱があり、その中の指輪には、ダリアと名前が刻印されていた。

あの日ダリアに会おうとしていたのは間違いないのに、ダリアは逢い引きなんかしたことないと言った。


どうして辻褄が合わないのかわからない。


足を組んで考えているが、目の前にはアリス嬢が優雅にお茶を飲んでいる。

アリス嬢とお茶をする時間を作るなら、ダリアとの時間を作って欲しい。


「ノクサス。先ほどの女はなんですの?」

「俺が結婚したい娘です」

「ちょっとは隠そうと思わないのですの?」

「思いませんね。むしろ早く結婚して連れて歩きたいくらいです」


堂々と言う俺に、呆れたようにアリス嬢は言った。


だが、ダリアのことを隠す必要はない。

いや、他の男に見初められては困るから、邸から出したくないくらいだが……。

そう思えば、本当に邸に閉じ込めたいと思っていたと気付く。

そう思うのは、記憶喪失前からだろうか?

さっぱりわからない。


「ノクサス。……その傷もまだ治らないのですね。以前の顔に戻りたくないのですの? 私に頼めば一流の白魔法使いを用意するわよ」

「結構です。騎士団の所属の白魔法使いも優秀です。それにダリアがいます」

「全く説得力がないのですけれど……騎士団の白魔法使いで治らないから、もう何カ月もそのままなのではないのかしら? それにあの娘になにが出来るというの?」

「騎士団の白魔法使いのおかげで悪化を防いでいます。ダリアには俺の世話をしてもらっていますし、彼女のおかげで、毎日癒されています」

「ま、毎日!? どういうこと!?」


アリス嬢は、いきなり焦りティーカップをガチャンと置く。


「一緒に住んで毎日癒してもらっていると言ったのです」

「…………!」


今度は青ざめたまま立ち上がった。


「ノクサス……」

「なにか?」

「私は用事ができました」

「そうですか」

「……送ってくださらないの?」

「お送りはしますよ。ですが、俺にも仕事があります。次からはこんな時間に無理やりお茶など誘わないで下さい。陛下にお頼みすることもやめていただきたい」


こんな時間に、お茶の予定を入れるなんて、陛下に頼んだとしか思えない。

俺が記憶がないせいで以前よりも仕事ができないから、フェルは、それを隠すためにでもお茶の予定を断らなかったのだろう。


だが、次からは遠慮してもらいたい。


アリス嬢を送るために立ち上がり、馬車乗り場まで送った。


その間もダリアのことが気掛かりだった。

やっとダリアが見つかったのに、ふとした時にどこか寂しそうだった。

それに妾の話もつけねばならない。


フェルは、ダリアを調べるために外に出している。

妾のことも調べてくるだろう。

一体いくら借金をしていたかも分かる。


俺は、どうしてダリアが妾にあがることが決まるまで、放置していたのだろうか?

ダリアの言う通り、本当に知り合いではなかったのだろうか?

知り合いでないのに、ダリアの指輪を準備するものだろうか。


わからないまま時間はすぎて、夜にはダリアの待つ邸へと帰った。









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