ヴァンパイア神社
生放送で書いたものです。
吸血鬼。それは、夜の世界に巣くう鬼。
夜に眠る獲物を襲い、血を食糧として日々を生きる。
太陽光が弱点であり、陽の光を浴びただけで全身がヒドい火傷状態になってしまう。
だが、まあそれだけだ。伝説のように全身が発火して灰になってしまうことなどない。
いくら光に嫌われようとも、光は所詮光なのだ。
夜を住処とする鬼を退治するほどの力はないのである。
……さて、吸血鬼といえばもちろん、人に忌み嫌われる存在である。
人に似通った姿をしているとはいえ、鬼であり、怪物であり、異形の存在なのだ。
人の住む街に潜んで暮らす者、人里離れた山奥に住む者など、その棲息圏は様々である。
大海にポツンと浮かぶ名もなき島もまた、一人の吸血鬼の住処だった。
——
陽光が海の蒼に乱反射し、一見無人と思われる一層の小舟が一つの小島に接近していることを露にする。
小舟がついたその島こそ、吸血鬼の住む小島であった。
ユラユラと波に揺れる小舟は、徐々に岸に近づいていく。
森林の広がる、まるで人が住んでいるとは思えない島だ。
ついに、小舟は砂浜へと打ち上げられる。
小舟が流れ着いて、小一時間が経過した頃のことだ。
ムクリと無人と思われていた小舟から、一人の少年が身を起こす。少年はみすぼらしい格好をした、明らかに百姓出である。
彼は意識を失っていたのだ。霞む視界を周囲にこらし、状況を理解するのに五分を要した。
「……ぼくは、家族に捨てられたんだ……」
「それは……災難でしたね」
砂浜を踏む足音が突然、背後に接近していた。
振り返れば、袴姿の男が満面の笑みで立っていた。長身痩躯の男だった。
二Mに届こうかという長身でありながら、ひどく痩躯。
華の柄が描かれた袖の大きな袴は、端正な顔立ちも含めて彼をより派手に演出していた。
一目で分かる。彼は常人じゃない。
少年は警戒心を隠さず、睨みつけて返した。
「おまえ……何者だ」
「見ての通り、この島に住む鬼ですが……?」
シルクのように透き通る白肌が、煙を上げていた。
少年は、笑顔を崩さない長身痩躯の男性——否、鬼に案内されて島の奥へと足を踏み入れて言った。
山を奥へ奥へと登っていくと、突然視界が開ける。
そこには海から見た時には決してなかったはずの建物——中華様式の宮殿と、そこへ繋がる鳥居が立っていたのである。
驚愕し、警戒心ごと感情を吹っ飛ばしてしまった少年へ向けて、太陽のような笑顔で男は言った。
「ここは、ヴァンパイア神社。はぐれ者を招き入れ、吸血鬼たちの信じる神の導きを聞かせる場所。……ついでに言うと、もちろんここは私の神社です」