猫との遭遇!?
とある登校中の出来事。
矢田玲子が学校に向かっていると何やら声が聞こえてくる。
その声を矢田玲子はよく知っていた。
声のする方へ小走りになりながら進んでいくと刹那秀登が道の隅にしゃがみこんでいた。
その姿が視界に入った瞬間、心臓が飛び跳ね気分が高揚する。
頬が赤らみ、両手で顔を仰ぎ冷まそうとする。
そうして喜び勇んで話しかけに駆け寄り始める。
「刹那くん、おはよう!」
「あぁ! 矢田さん、おはよう! 登校中に会うなんて珍しいね。」
「うん、それよりこんなところで何してるの?」
そう刹那秀登に質問すると、自分の足元を見せるように体をのけぞり始める。
彼の足元には野良猫が寝転がっていた。
人に慣れているのか落ち着いた様子でなでられており、喉をゴロゴロと鳴らしていた。
「いや、すごい人懐っこくて撫でさせてもらってるんだよねー」
「ふーん、すごい可愛いね」
そのまま猫を夢中に撫で始める刹那秀登。
猫も猫で撫でられるのが気持ちいのか撫でてほしい場所に身体をこすりつけたり、身体を預けたりしている。
そんな猫のせいか撫でる手に熱がさらに入り始める。
「おーし、おしおし、かわいいなぁ」
「……」
無言になる矢田玲子。
それもそのはず、せっかく朝に愛しの人に出会えたというのに、当の本人は猫に夢中で自分には構ってくれない。
彼女は猫に嫉妬していたのだ。
「(むーー! なによ! なによ! 猫とばっかりお話しして。私でも刹那くんに撫でてもらったことないのに…… ぐぬぬぬぬ)」
そうして、ジッと一匹と一人を眺めて居ると不意に声をかけられる。
「矢田さん、この猫人懐っこいから矢田さんも撫でてみたら?」
その一言に戸惑ってしまい、まごついてしまう。
「あれ? もしかして猫とか苦手だった?」
「い、いや、その、猫を触ったことがなくて……」
「え? そうなの? じゃぁ、せっかくだし触ったらどう?」
そう言われ猫の頭をなでようとそっと手を出すが猫は避けてしまう。
なぜ自分は避けられたのか疑問に思っていると、刹那秀登はクスりと笑いながら教えてくれた。
「えっとね、まず猫の気持ちになって――……」
猫の気持ち的に上から手を出されると怯えてしまうので、下から手を差し出した方が安心するという内容を話そうとする。
しかし、それを言いきる前に矢田玲子は行動に移してしまう。
「猫の気持ち、猫の気持ち…… ぇと、初めましてだにゃー」
「ぶふぅ!!」
彼女の思いもしない言動に思わず吹き出してしまう。
しかし、彼女は全くこちらに気にせず猫に集中していた。
そのまま猫に話しかけ始める。
「猫ちゃん、仲良ししてほしいにゃー。お友達になりたいにゃー」
そうして手を差し伸べると猫は手に鼻を近づけると引くひくと動かし、においを嗅ぎ始める。
しばらくすると猫は差し伸べられた手に顔をこすりつけた。
「わゎっ!? せ、刹那くん! 猫! 今猫が私の手に!」
猫に初めて触れ、初めての感覚に感動しながら彼の顔を見る。
しかし、彼は顔を赤くしながらうつむいている。
「矢田さん、そういう意味じゃなくてね……」
そのまま、猫の気持ちの言葉の続きを聞かされる。
聞かされると頭が空っぽになり、その頭に先ほどの自分の痴態がフラッシュバックする。
余りの恥ずかしさに、顔が赤くなり、目には涙がたまり始める。
「わわわわ、忘れてください~~……」
そう言いながら両手で顔を覆ってしまった彼女を刹那秀登はなだめるのであった。
なお、この男忘れる気など無いのは言うまででもない。




