4:虚無顔ダブルピース
(ΦωΦ)割と短め
まあその後は変則的な異文化交流をしたというか、結局運営からの返答もなくグレイヴの正体も測り切れず。
さてどうしたものかと思ってたらよりによってグレイヴと1番接触させられない奴が来ちまった。
「…………その言いぶりだと、ケモガッパじゃな」
「 Exactly。あのタイミングに限っては本当に勘弁してくれっていうか、タイミングが悪すぎて凄い焦ったわ」
まるで自意識を獲得して急に会話ができる様になった使い魔。それだけでも十分話題性がありすぎて要らぬやっかみすら買うだろう。
だが、その中でも殊更ケモガッパはグレイヴを求め、俺に競り負け、そしてもう半年近くは粘着してるレベルの執念だ。
グレイヴにオンリーワンの付加価値がついたと知ったらあのイカれた野郎が何をしでかすか予想もできない。
「てな訳で焦り過ぎて初動をミスって奴の得意なフィールドに追い詰められちまった。使えそうなアイテムを軒並みボス戦で消費しちまったのもあるし、反射的にグレイヴを休眠モードにしちまったのも余計に不味かった」
その襲撃の手前、思い出せば確かにメッセージの通知が来てたがそれどころでは無かったので無視してしまったのだ。今考えるとアレがガラ婆からのメッセージだったのだろう。
「結局、そんな状況で逃げ切れたのか?…………おい、虚無顔ダブルピースじゃわからんのじゃ」
勝ち逃げしてやったが冷静に考えると使ったIvカードが高すぎたというか、どう考えても赤字である。まああの電動水鉄砲は即席にしちゃIvカードの性能も相まって色々悪巧みできそうな感じに仕上がってるし、新しいサブ武器が手に入ったと納得しておこう。
「しっかし、しつこいというか執念深いというか」
こっちを見つけた途端、ヤツは不気味な笑みを浮かべながらお気に入りのおもちゃを見つけた犬の様に突っ込んでくるのだ。
「そこまで言うなら通報すればいいじゃろうに」
「まあ、そうなんだけどなぁ」
執着してくると言っても、ヤツは出待ちや待ち伏せ、俺をストーキングして窮地に陥ったところで追い討ちをかけてくるといった悪質な真似はしてこない。
(何度かピンチな状態で出くわしたが、そん時は手を出すこともせずこっちを眺めており、幾度も『タディヤナザァン! ナズエミテルンディス! 』と口走りそうになった)
と言っても俺の活動範囲と近い場所で動いてはいるだろうが、思い返してみても襲撃してくる時はどちらかと言えば偶発的に近い。
現に中立エリアまで追いかけてきて接触してきた事もないのだ。
俺の根城がガラタク屋だと知ってる連中は多いし、そもそもこの店自体も知名度はある。初期組ならどんなモグリでも知らない確率の方が低い。ここで待ち伏せしてれば俺に会うのは難しくない。
まあPK側なので顔を出し辛いのかも知れないが、正直そう言った事を気にする感じもない。
襲撃する時も毎回手を変え品を変えというか、嫌がらせというよりは純粋に俺との戦いを楽しんでる雰囲気を感じる。罵詈雑言を浴びせてくることも一度も無いし、此方の質問に関しては割と素直に答えてくる。
ぶっちゃけ本当にアイツが悪いヤツなのか決めかねているので通報に踏み切れないというか…………そういう感じで絆されそうなところが個人的に1番気味が悪いというか…………俺もだんだんアイツと戦うのが楽しくなっているという…………。
「結局アイツが何をしたいのかよくわからないんだよなぁ」
俺がうーんっと伸びながらボヤくと、何故かガラ婆が遠い目をしてケッと何かを吐き捨てるように顔を背けた。
「何その反応」
「そういう態度だから拗れるんじゃよ。一回腹割って話しゃいいのに(……こっちの身にもなってくれ)」
ガラ婆にしちゃちょっと突き放した言い方だが、まあケモガッパについては何度も愚痴ってるしいい加減ガラ婆がウンザリするのもわからなくはない。
「とりあえずケモガッパの事は置いとくとしてよ、そんで勝ち逃げかまして此処にそのまま直行したってわけよ」
「じゃあグレイヴはずっと休眠モードって事じゃな?」
「それが、今考えるとちょっと変というか……」
休眠モードはその名の通り使い魔を完全に休眠させるので、その最中は使い魔の力を回復させることができる代わりに休眠モードを解除しない限りその力を使えない。
使い魔には全ての力が使える通常モード、使える能力が限定される代わりに力の消費を減らせる待機モード、それともう一つのモードがある訳だが、俺がケモガッパから逃走する際にグレイヴの身体強化の能力を使っている。
だがあの時はグレイヴは『休眠モード』のはず。休眠モードを解除していない以上、その能力を使う事は不可能だったはずなのだ。
「…………グレイヴ?」
もしかして、と思って話しかけてみたが反応が無い。なんなら何故か休眠モードを解除できなくなっていた。
「マジでバグか何かなのか?」
「ワシに聞かれても困るんじゃよ」
これじゃ証明もでき無いしただのホラ吹き男だ。思わず困った顔してガラ婆を見れば、ガラ婆も致し方なしと呆れた顔で肩をすくめていた。
(ΦωΦ)一部設定は他の自作を参考にしてますが気にしなくてOKです