3:実は天使です
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『赤揺邪神之化身片:ファルマフォート=ゴル・グレイヴ
ソレは地球ともそれに接する異界とも異なる場所に揺蕩う悍ましき肉片擬き。天地無く光無く波は無くソレそのものが空を満たす“◾️”である。真の上異種、◾️◾️◾️にして瞋恚の呪炎の塊。契約すれば大いなる代償を求められよう。しかしてその見返りは膨大である。
己が身を侵される覚悟有し愚者なれば彼の者の不浄な怨嗟に耳を傾けよ。与えられるは膨大な◾️◾️◾️の力の一端、行先は語るべくも無し。(以下契約レベルにより閲覧不可能です)』
これが俺の使い魔、グレイヴのテキストデータだ。
ナベルでは例外なく全てのアイテムにテキストが用意されており、それを読んでるだけでも結構楽しめる。
その中でもグレイヴのテキストは割と電波というか訳がわからないというか厨二病過ぎるというか、そもそもテキストに伏せ字がある数少ない事例だと思われる。
まあ見るからにヤバそうな事が書いているが、契約権を得るイベントの内容とキツさを考えるに妥当とは言い切れないがまあ大きく的外れでも無い。
そんなハイカロリーはテキストな訳だが、それに気を取られて見落としがちな『邪神』の二文字。
なんとグレイヴさんは邪神の化身の欠片らしい。
HAHAHA御冗談を、そう言えたらいいが見た目が見た目なので否定しづらい。これで『実は天使です』などと言った日にはキ印の世界最大組織が発行してる世界一刷られた書籍とやらの角で頭を殴られ脳筋式洗礼を迫られる事請け合いである。
邪神………まあテキスト中の単なる設定である。
そこらへんのゲームやラノベを適当に5つ漁れば見つかる、使い古されすぎて色落ち真っ白レベルのよくある設定だ。
どうもグレイヴのキャラクターはあくまでゲームの中の存在寄りの話し方だが、元が邪神と考えるなら結構フランクである。デリカシーの無さが酔っぱらった親戚のおじさんレベルだが、邪神がその程度なら世界とやらは随分平和な様だ。
『あー……わかった。一応それで納得しよう』
『ふむ、実の所1番手間取ったのは時間速と空軸域の捕捉だったのであるがな。まあ契約者にこれを語ったところで理解できる感覚でもあるまいし詳しく語るつもりないぞ』
うーん知らん要素がゴロゴロと。
少なくとも俺にはジカンソクだのクウジクイキなどという単語に心当たりはなかったので全力でツッコミを入れたい所だったが藪蛇になりそうなのでひとまずスルーした。
『つまりグレイヴは、俺がレベルアップしたおかげで自分も強化され、そのおかげでようやくこちら側に話しかけられるだけの力を手に入れたと』
『うむ。正直強引にやろうと思えばもう少し早く干渉はできたのだが、それだと契約者を破壊しかねなかったのでな。少々慎重に機を見計らったのである。感謝せよ』
ナチュラルに怖いことをおっしゃるグレイヴ。その“破壊”というのが何を指しているのかは俺は聞く気にならなかった。
『…………………で、そんなに慎重に機を見計らった第一声がアレなのか?』
グレイヴの自己申告ではあるが、俺とコミュニケーションを取るために随分と(人間には理解できない類の)苦労をしたらしい。
だというのに、重要なファーストコンタクト、その第一声が、『なんでお前ネカマやっとるん?』というのは如何なものか。
仮に俺が宇宙人と出会って最初に質問できる事を選べるとしたら、きっとそんな不躾な質問は選ばないと思う。もう少しマシな質問をするだろう。
「ゴリゾーだったら何を質問するんじゃ?」
「あー……パッとは思いつかん。『貴方は他の知的生命体とも接触していますか?』とかかな。いやこの質問は変だな…………てか話の腰をおるんじゃねぇ」
「ごめんごめん」
まあ厳密には俺は女性としてロールプレイは一切してないのでネカマとは言えないと思うが、凄く広義な意味で考えるならそうとも言えるだろう。
『うむ、言語習得の過程でそちらの文化形態について可能な限り観察を行い見識を深めてみたのであるが、そもそも“性別”という概念が私の様な高次元で完結した存在には理解が難しいものであったのだ』
そこから5分以上『人間という生き物はひ弱なくせになぜあれこれと面倒なことばかりはそこらの高次元の生命体よりも色々と考えたりするのか』というグレイヴの説教混じりの愚痴と如何に自分が俺との会話を成し遂げるためにあれこれ苦労したのかという自慢話を聞かされげんなりする羽目になるし時間もいつの間にか大幅にロスしていた訳だ。
結局のところグレイヴの話を聞いているに、自分のいる場所が俺にとって仮初の世界に近い場所である事を理解した上で、わざわざ本物の肉体と違う姿であろうとする気持ちが理解できなかったらしい。
『グレイヴさぁ、俺だからノーダメージで済んだけど、その質問人によっては精神的致命傷クラスの傷になるから絶対に無闇にするなよ?』
ネカマ。
【ネカマとは、姿が見えず素性がわからないネットワーク社会の匿名性を利用して、男性が女性を装うこと及び装っている人、またその行為。「ネットおかま」が略語化されて出来た言葉で、インターネット以前のパソコン通信時代から用いられている。(Wikipediaより抜粋)】
その存在は22世紀に入り完全没入型VR技術の登場と共に絶命危惧種指定されるまでに個体数を減らしていた。
初期段階の完全没入型VRは実際の肉体との感覚の差異による“酔い”を減らすために、仮初の肉体も出来る限りリアルに近いものを用意する必要があった。
それによりゲームでの“ネカマ”をするハードルはバレボールのネットぐらいまで高くなり、凡そ両性類と呼べる神様が割り振る性別を間違えたごく一部人種のみしかできない伝説の技術にまでなってしまった。
だが今はVRの技術も大きく発展し、自分のリアルの肉体と違っても、少し訓練すれば動物のような人型以外のアバターでも違和感なく自由に動かせる様になった。
リアルの俺は何処までも平均程度の身長と体格で、肌もこんな焼けてないしましてやこんなマッチョでも無い。
声だって今は簡単に変えられるし、モデルデータを導入してあとはAIに補正をかけて貰えば素人でもお手軽にリアルなアバターが作れてしまう。
これら技術により、ネカマという古き良き(?)文化が復活。相手の実際の性別はお互いにわからないという恐怖のババ抜き状態になった。
まあオンライン上でただ女の演技をするのと違ってVRは仕草まで完璧にしなければいけないので、案外しっかりと演じきれるやつはそこまで多く無い。
ただ大昔、オンライン上にネカマが多くいた時代と比べて女性のゲームの参加比率が大きく増えた事もあり実際の女性が混じっている確率が増えて下手のことを言えない風潮が高まっているので、看破率は昔とそう変わらないのかも知れない。
余談だが、本当の女性相手に『お前ネカマでしょ?』なんて言った日にはもうそれはとても恐ろしいことになる。
ポリコレ警察に捕まって市中引き回しのうえ3日間石抱きして「もう2度と性差別的発言はしません」と3日間某魔法使いの少年がガマガエル女史に使わされた例のペンで書き取り練習をすることになるのだ。
まあこれは冗談にしても、下手すると社会的に血祭りにあげられる事はなく無いし、有名な実況者が近しい発言をして大炎上をして家凸・襲撃までされてたし割と冗談で片付けられないのが怖い所だろうか。
とにかく、これらのリアル、特に性別に関わる発言に関しては相当な勇気、もはや蛮勇がなければやってはいけない事なのだ。
かくいう俺も因縁だらけの狐獣人黒カッパ美少女ことケモガッパには何度か追い詰められようとその質問だけはまだしてない。
男だったら男だったで、お前ロールプレイうま過ぎん?って話になるし、女性だと言われてもその美少女アバターはリアルの姿ですか?って話になるし、どのみち相当気まずくなるとわかってるからだ。
個人的にはイケメンともクールビューティーともとれるセーラーバットさんのリアル性別も気になる所だが、怖すぎて聞く気にならない。
そんな様な事を俺はグレイヴにわかる様に(と言ってもその都度質問爆撃を食らったが)説明した。
「…………結局どうなったんじゃよ」
「悪い。話が長くなったな」
すごい長いわけでは無いがそれなりの付き合いのガラ婆だ。俺の悪癖が始まりつつある事を察して話を纏める様に促した。
という事で俺もさっくり話をまとめにかかった。
(ΦωΦ)脱線しまくってごめんなさい