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1:Nare Welt

( Φ ω Φ )おさえろ…………設定ぶちまけたいマンになるんじゃない…………


【Nahe Welt】、通称ナベル。新機種のVR機器に合わせて22世紀に発売されたVRMMORPGだ。

 流行りのファンタジー冒険系のゲームと違い、このゲームは21世紀初期を舞台としたポストアポカリプス系のゲームだ。

 簡単に設定を説明すると、21世紀初頭に突如として現実世界に“異世界”が侵食し、人類のほぼすべてが異世界から流れ込んだウイルスと化物共によって侵され死滅、あるいは怪物化。 

 文明は崩壊し街は荒廃、そんな世界でウイルスを克服し不死の力と新たな能力を手に入れた新人類が“プレイヤー”というわけである。

  

 故に純粋にポストアポカリプスというわけでもなく、SF的な要素やローファンタジー的要素も入り混じっているために明確にジャンルを断定することは難しい。


 一般的にはかなり癖が強いゲームという評価を受けているこのゲームこそ、俺、西木一流の最も好きなゲームである。

 このゲームを始めてから生活サイクルが大学、バイト、ナベルで完結していると聞けば俺がどれほどやり込んでいるかわかるだろう。 


 確かに癖が強いゲームではあるが、今流行りのゲームによくある、集団プレイを前提とすることで購入者を増やすような売り方とは真っ向から対立する、反骨精神たっぷりのソロに優しいゲームなのである。

 一応弁明しておくが、俺がわざわざオンラインゲームでソロ向けを称賛するのは、会話をするとお口にバイブレーション機能が実装されるからとか、人付き合いをすると人間強度が下がるからとかそいうことを主張する民だからではない。

 単純に集団行動が苦手なのである。


 もっと詳しく言えば、娯楽・趣味であるゲームの中まで周囲に合わせて動いたり、他人の顔色を確認するのが面倒くさいのだ。

 あとプレイヤー数が少ないこともあって民度がかなり高いレベルで保たれているというのも評価できる。


 どのような人気作にも言えるが、多くの人数が流れ込むとそのなかに頭のねじが飛んだりゆるんだり腐ってたりする民が一定数以上混じるわけで、それが集まることで不快感を増すとともに明確に目につくようになる。

 これはもう避けようのないことで、22世紀になってAIが発達しプレイヤー間のトラブル対応がどれだけ迅速になっても問題児を完全に消すことはできないのである。


 その点、ナベルは玄人向けというか、ソロ向けなので、脳の皺がなさそうな人達が徒党を組んで暴れる確率もかなり低いし、一人一人がそれなりに強いのでプレイヤー内での自浄作用が働く。

 それらも含めて俺らはナベルが好きだ。


 そんなゲームで俺は近接特化型黒髪長髪褐色ゴリゴリ筋肉マッチョな女性アバターで遊んでいる。衣装はそれに合わせて古代エジプト人の服装とパレオの中間の様な露出の激しい服装。

 ナベルは装備の外見データを変更できるのでいつもこれだ。おかげでナベルの中でついた俺のあだ名はゴリゾネス。

 ゴリラと女性のみの戦闘民族アマゾネスからの造語らしいが、ナベル内ではやたらこっちの名前ばかり呼ばれる。多分俺の正式なプレイヤーネームを覚えてるやつの方が少ないまである。


 なんでそんなアバターにしたのかと聞かれると、そのゲームをやる前にプレイしたレトロゲーのとあるキャラに影響されたからとしか言い様が無い。正直ここまでやり込むつもりもなかったし、ネタ的な意味合いも強いアバターでもあったのだが、今では割と気に入っている。


 このゲームは色々と他では採用していないシステムがあるが、主な特徴は二つ。

 一つは使い魔システム。プレイヤーは一人につき一体、魔物と契約することができるのだ。よってソロでも常に二人分の戦力を確保でき、ゲームがVR化したことで起きるリスク、背後を簡単にとられる確率が大いに減る。

 といってもこのシステム自体は他のゲームでもなくはない。ただ次に紹介するシステムでこの使い魔システムが大きく化ける。


 そのシステムが【Weavolution】。

 ナベルでは戦闘主体のゲームでありながら、剣とか槍とか弓とか一般的な“武器”という物がほぼ存在しない。

 当たり前だ。元の世界はファンタジー世界ではない。21世紀初頭の地球である。文明が崩壊したとてそこらへんに武器が転がっているわけでは無い。

 

 ではどうやって武器を調達するのか。その答えが【Weavolution】システムである。

 用意するのは武器の依り代となる物。それはタオルだろうが傘だろうが鉢だろうがパソコンだろうが団扇だろうがハンガーだろうが車だろうが看板だろうがなんでもいい。そう、“なんでもいい”。

 それと一緒に魔物からドロップする、魔物の特性を封じ込めたIvカードという物を用意する。

 依り代となる物体とIvカード。この二つが揃えば進化の方向性をある程度指定して【Weavolution】とコールするだけ。さすればその武器とは言えなかった物体が武器へと変化し、Ivカードの特性を反映したファンタジックな武器へと進化する。

 

 自由度は異様に高いがその分【Weavolution】により手に入る武器の性質を見定めるのにコツがいるし、更にここに使い魔システムが関わってくる。ここが【Weavolution】が人を選ぶ癖強すぎなゲームと言われる所以である。


 ただそれをここで説明すると長くするので後回しにしよう。


 

 俺は荒廃してボロボロに錆びついたビル街を抜け、戦闘ができない中立エリアに入ると狭い路地に入る。

 どこもかしこもボロボロで、店も家もビルも多くはその機能がとっくの昔に死んでいる。そんな旧アキバエリアの中立区域にまだ原型を留めている小汚い店がある。

 見た目は初期のラーメン屋といった感じだろうか。特に看板はなく、その代わりにシンボルとして『バリオくん』という明らかにパチモンくさい大きな人形が置いてある。

 赤い帽子にオーバーオール。どう見ても原型が某配管工なのだが、その素顔はバリ島の聖獣バロンを象った恐ろしい仮面で隠されている。

 手に赤と白の縞々の電動マッサージ機を持たせた製作者には絶対に悪意があるとしか思えない。(因みにこれも全部【Weavolution】できる)。


 そんな色々と問題ありな置物を象徴とする店こそ、俺の目的地である食堂擬き『ガラクタ屋』だ。


 ノックもせずに建付けの悪く錆びついたドアを強引に開ければ、おたまを【Weavolution】したメイスが顔面目掛けて飛んできた。


「あぶね!なにしてたんだオマエ!?」


「おっせーんじゃよ~!ゴリゾ~!遅刻じゃ遅刻!」


「時間ぴったりだわ!」


「時間早めるいうたやろうがい!」


 店の小汚いカウンターでがなり散らすのはこの『ガラクタ屋』の店主ことガラ婆。プレイヤーネームは別にあるがこいつも俺と同じく『ガラ婆』という名前の方が圧倒的に定着している。

 昔のVR機器と違ってアバターも自由に設定できるのに、何を考えてるのかコイツの見た目は完全にシワシワの婆さん。腰はシャンとしているがいかにも頑固そうというか、一筋縄ではいかない偏屈な感じの婆さんで、腕も足も鶏ガラのように皮と骨ばかりだ。

 そんな婆さんアバターも、小汚い、よく言えば味のある店の奥にエプロンを付けて立ってればなかなか様になる。


 こんな奴ではあるが、こいつこそ俺の一番の親友でこのゲームでの盟友であるプレイヤー、山外 友一である。


「…………あ、ほんとだ。メッセージ来てたわ。見てなかった」


「ほ~。ゴリゾーがメッセージをスルーするのは珍しいし、ってことはなんかあったな?」


「察しが早くて助かる。てことで今日はちょいと閉店してくれないか。現段階ではお前以外に話す気がないレベルだ」


「…………なんだそりゃ」


 意味が分からんとぼやきつつもガラ婆はコンソールをいじると店にロックをかける。

 

「で、なんだ?」


 これで俺たち以外のプレイヤーは『ガラクタ屋』に入れない。それを確認すると俺はゆっくりと切り出した。


「唐突なんだけどよ、使い魔っているだろ?」


「いるな」


 そう、ナベルのプレイヤーには一人につき一体必ず使い魔がいる。ナベルのプレイヤーにとっては必要不可欠な存在であり、その使い魔は基本的に言語を使ったコミュニケーションはできない。

 どちらかといえば犬や猫の様なペットに近しい立ち位置だ。


 俺の使い魔はイベントで契約権を手に入れた特殊な使い魔で、通常時は黒い火の玉の様な形態をしている。今は休眠モードにしているのでいないが、活性状態にすれば俺の背後で不気味に揺らめいているだろう。


「その使い魔がいきなりメタっぽいこと言い出した、って聞いたら、お前信じる?」


「はぁ?」


…………うん、やっぱりそういう反応になるよなぁ。


 

 


( Φ ω Φ )続きは資格の勉強が終わってから、ぼちぼち書く

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― 新着の感想 ―
[一言] 「脳の皺がなさそうな人達」 本人に言ってもむしろ褒められているとか思われそうな皮肉だ
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