表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/7

0:山積みのアレ

( Φ ω Φ )試験的に投稿。続きは時間ができたら書くスタイルで




「いい加減コッチ来てよ、ゴリゾネスゥ!」


「テメェこそいい加減しつこいんじゃケモガッパぁ!」


 振り下ろされる大きな鍵爪、それを黒炎纏う薙刀で受け止める。

 しかし衝撃が殺し切れない。ヤツはその華奢なアバターに反して超パワータイプだ。褐色筋肉ダルマの俺のアバターは吹っ飛ばされて錆び切ったトラックに叩きつけられ壁をぶち破ってコンテナに転がり込む。


「アハハハッ!やっぱり君が戦ってて1番面白い!」


「そりゃどうも!この風呂カビレベルの粘着ヤロウ!」


「ひっどいなぁ。でも今日は本調子じゃないみたいだね?」


 やめろよ今ゾワッとしたぞ。コイツのストーカー気質は正直GMコールしてもいいんじゃないかってぐらい怖い。

 正直本調子じゃないと言うのは全くの図星で、いつもよりもだいぶ苦戦している。しかしそれを隠して戦っていたはずなのだが、見抜かれていたようだ。


 俺はトラックのコンテナの中で手に持った大型の薙刀、もとい薙刀へと変形した『標識』を見下ろす。

 『標識』ってのは道路に生えてる奴の事である。金色のモビルスーツでもないし兵庫の銀行でもない。22世紀今日日絶滅した道路標識という奴だ。


 『止まれ』と書かれた赤い看板部分が刀身へと変形し、白い棒状の部分は髑髏が彫り込まれた柄となって、下についたままのコンクリート塊は鈍器として使える。

 そんなヘンテコな武器が黒い炎のエフェクトを纏っているのが俺のメイン武器【紅断刺凪】だ。


 因みに俺を襲撃してきた狐獣人型黒カッパことケモガッパがメイン武器としているのは大鉤爪。アレも普通の武器では無い。

 あれは確か、熊手を籠手と融合させて武器化させた物だ。使い魔の能力で赤いエフェクトを纏っておりとんでもない火力を発揮する。


 いつもだったらさっさと逃げているのだが、問題は今の俺のメイン武器の耐久値が結構ヤバいという事だ。

 詳しい話は省くがメイン武器が故障すると普通の武器より段違いに修復が面倒臭い。かと言ってサブ武器で相手できるほどコイツの武器の火力は低くない。

 いつもならメイン武器の特殊能力で適当にお茶を濁して逃げるところなのだが、耐久値が削れるので今は使えないのだ。

 そして俺は今待ち合わせをしているので焦っている。焦っていたせいで初動をミスって完全に戦闘用フィールドに誘導された。ここでは横やりを入れてくる魔物もプレイヤーも少ない。タイマンでどうにかするしかないだろう。


 俺がすんなり追い込まれた事でケモガッパの奴も少し警戒していたが、俺が普通に苦戦しているばかりなので不調を感じたのかもしれない。

 しかし友人でも無い相手に自分の実状を見抜かれるというのはなんとも気持ち悪い。濡れた靴下でも履いてる気分だ。


 まあ最悪自爆してリスポーンすればいいのかもしれないが、それそれはそれでコイツに負けを認めるみたいで癪である。個人的な事情でコイツに安易に負けを認めたくない。

 何か反撃するための道具は無いか。さっきまでボス敵とタイマンしてたせいで便利なアイテムは大体在庫切れか、あるいはヤツには通用しないものばかりだ。


 戦う事を楽しんでいるからか、奴は追撃をして来ずに大鉤爪を地面に引きずりヒビ割れたアスファルトをさらに痛めつけながらゆっくりと近づいてくる。

 

 普通に怖いんだよ!

 Z級ホラー映画じゃねぇんだぞ!

 追い詰められてる方がセーラ服きたゴリゴリマッチョなアマゾネスという絵面も含めてZ級特有の奇をてらいすぎたというか設定詰め込みすぎてわけわからん感じが凄い。


 どちらにせよ無防備でやられるわけにはいかない。俺は立ち上がろうと床に手をついたところでズリッと勢いよく姿勢を崩すと同時に、やたら床が濡れててヌルッとした事に今更気付いた。


 一体なんだこれは、そう思い暗がりの中で目を凝らし、トラックに積まれたダンボールの中身を見て俺はニヤリと笑った。


「あれー?どーしたの〜?降参かな〜?…………ログアウト逃げはガン萎えするからやめてねぇ」


 うるせえ煽んじゃねぇ。今起死回生のセクハ……じゃない、起死回生の一手を見つけたんだ。


 武器をサブの電動式水鉄砲に。

 いわゆるガチ勢用水鉄砲で当時の価格で3万くらいするらしい。アホくさ。

 Ivカードは……ちょっと割に合わないが『ヴェノムプラーム・粘特』(黒い大きなアメーバみたいな魔物。粘着質な強酸性の物体)と『クイーンヴァロパカ・砲』(アルパカ型の魔物。エグいスピードの唾を吐いてくる)でいいや。それとバッテリー切れなんてしょうもないことにならないように『テスラジュエルロータス・包雷』(蓮をモデルとした雷属性の魔物。とある庭園のボス個体)も使ってしまおう。

 んで弾はここに山と積まれた勝利の女神もとい物資である。


「パーツセット、【Weavolution】」


 奴に聞こえないように小声でコマンドコール。

 手に持った銀色のでっぷりとしたフィルムの電気水鉄砲が発光し、砲身は太く、銃身はより大きく、黒と紫を基調に赤いマダラ模様が目立つ毒々しい武器へと変化する。即席にしては明らかに使ってるIvカードが高価すぎたが、まあ気にしない気にしない。また倒せばいいだけの話だ。

 

 これで害悪セクハラモンスターこと『ヴェノムプラーム』の粘液性を強く引き出した性質と『クイーンヴァロパカ』の発射力、そして『テスラジュエルロータス』の蓄電能力を付与した魔改造電動水鉄砲の出来上がりである。 

 ずっしりとした重み。タンク部分にたっぷり溜まったモッタリとした液体。俺のイメージした通りの武器だ。即興で作ったが予想よりかなりいいものができたぞ。


 これで準備はできた。

 お見舞いしてやろう。


「なーにをコソコソして、おっと、自爆狙いかい?」


 初手、投擲したのはなんちゃって発煙弾スモークグレネード

 大体は小麦粉と自爆型モンスターのIvカードを使って作られるメジャーな武器で、高ランクの火属性のIvカードも組み合わせれば火を放つだけでみんな大好き粉塵爆発も簡単にできる。

 

 野暮なツッコミはするな。ラノベで散々使い尽くされてもはや「そんな状態じゃ粉塵爆発は起きない。ニワカで草」とマジレスされるまでがワンセットに近い粉塵爆発くんだが、この場合はIvカードで可燃性を上げてるから粉塵爆発を簡単に起こせるんだ。


 それなりのプレイヤーならお手軽で火力もそこそこあるので、この発煙弾は自爆手段としてはよく使われる。特に対PKに関しては勝ち逃げを防げるし、運が良ければ相討ちを狙えるので中堅プレイヤー以上は1人一つは装備しているのが現状だ。


 PKプレイヤーとしてトップクラスのケモガッパも当然このパターンは知っている。故に自爆という単語が出たのだろう。

 だが俺がそんな事をするタイプじゃないと確信しているせいか、ヤツは相討ちに巻き込まれる事を恐れずに普通に近づいてきた。


 妙な信頼をされている事にはちょっと気味悪さを感じるが今は好都合。

 煙幕で視界は悪いがわざわざあの大鉤爪を引きずってヤツが歩いてきてるおかげで音はこちらによく響き場所は明確。ガンナー系のアビリティは特に持ってないがこれなら問題ない。


「ん?これ、小麦粉煙幕じゃ、キャッ!?」


 鋭いな、流石だ、だが手遅れだ。


 今回使ったのは小麦粉式発煙弾ではない。新型の水煙手榴弾だ。マッドドク謹製だから他にはまだ流通してねぇ。


 トリガーを引いて弾丸を発射。

 電動なので音は小さく煙幕に紛れて弾丸は見分けづらい。一発目が当たればほぼ成功。 

 キャッ!?なんて可愛い悲鳴を出しやがって。あれがロールプレイだったら恐ろしい。


「なにこれ!あぶっ!?つ、つめた!」


 フハハハハッ!もっと食らうがいいや!コンテナ半分以上の弾丸ストックがあるぞぉ!


「もう!鬱陶しいなぁ!」


 大鉤爪を振り回し肩を怒らせているようだが、そんなことしてる場合かな?


「このッ!ぶへっ!?」


 怒ったような声、次の瞬間、アスファルトに金属が打ち付けられる鈍い金属音と情けない悲鳴が上がる。


「なにこれ!?」


「あばよっ、ケモガッパ!ところで、水蒸気爆発って知ってるかぁ?」


「ちょっ!?」


 奴が立ちあがろうともがいている音が聞こえるがそう簡単には立てまい。その状況をより起こしやすくするための水煙だ。なんだったら水に雷属性も付与してあるからかなりヤバい反応を起こすかもしれない。

 

「グレイヴ、【レッグブースト】!」


 さて、温存しておいた脚力強化を使おう。俺はトラックの反対側の壁を黒い炎のエフェクトを纏った足で蹴破って脱出する。


「に、逃げるなー!」 


「サラダバー!ハハハハッ!」


 俺が地面を強くければ強化した脚力のおかげで一歩だけでグンッと距離を離す。そして二歩目で大きく斜め上へジャンプ。

 上から見ればまだケモガッパはもがいいるようだ。そうだろう。我ながら“アレ”は初見では簡単に対策を思いつけない凶悪な攻撃だ。


「アクティブ《ハルブート・ロア》」


 トドメにイベントボスから作り出した火属性魔法を行使。手にしたカードから炎の砲弾が飛び出し着弾する。

 可燃性が強化された水煙と反応し炎の爆弾は大爆発。そこら辺の瓦礫は吹き飛び窓ガラスは衝撃波で木っ端みじんに吹き飛ぶ。

 あれだけの爆発だ。見た目の華奢な感じに対して耐久力には自信ありなケモガッパとて大ダメージでしばらく動けないだろう。

 《ハルブート・ロア》、火山をイメージした豚型レイドボスの技だ。引火性能が高く、威力もとんでもない。弾速はゆるくエイムがゴミだが、直撃せずとも水煙に引火すればOKなので問題なし。

 俺は高笑いしながらその場を立ち去り、ビョンビョンと第三者から見たらキモい飛び方のスキップで待ち合わせの場所へと急いだ。






( Φ ω Φ )設定語りをできるだけ抑えたい…………(他作品の反省

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ