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06話「皮が固くて歯が立たねぇよ」

 作戦会議をしているうちに、日が暮れてきた。

俺の最初の目的である「高いところから見てみよう」ってのは、くにおに飛んで見てきて貰ったが、宇宙船らしきものや不時着跡も見当たらないということで、一旦形がついた。


 相手は狼男であり、チェックの言うところではかなり動きも早いとのこと。

なんとかその嗅覚から逃げ出せたのは、それこそ洋服を脱ぎ捨てて囮に使ったからだと言う。視認も出来なくなって一石二鳥だった。


 そして、街道で行くなと忠告していた理由は、無駄な犠牲者を出さないためと、もし強そうな人が現れたら狼男を成敗して、服を取り返して貰いたかったからだそうだ。


「結構ちゃっかりしてんなチェックは」

「ごめんなさい、だけど全裸は心もとなくって……」

「そう言えば、透明人間ってさ、服は見えるわけじゃん?」

「はい」

「髪の毛とかも透明な訳じゃん?」

「そうですね」


「食べたものってどうなるの?」


昔からの疑問だった。

体のパーツしか透明に出来ないのか、取り込んだものまで透明になるのか。


「そ、それは……」

慌てている。余計気になるじゃないか!


「透明な生命体なら、食べたものが中に浮いて見えるよな、腸の中のうんこも見えるよな」

「うんことか言わないでください!」

「バット、女の子にうんことか言わせちゃだめよ」

「お前はいいのか、イカよ」


「頼む一生のお願いだ、この鳥を食ってみてくれ」


 空を飛んでいる鳥を、イカちゃんがチョップで捕獲してくれたのだ、みんなで囲んで夕食にしている。でも毎回首だけを叩き落とすのは止めてくれ、心臓に悪い。


「仕方ないです、ご協力してもらう身ですし……」


そういうと、焼いた鳥がふわりと持ち上がると、何かに吸い込まれた。

噛み潰される様子がリアルに見える。

自分で頼んだものの、キモい。


そしてそのうち溶けるように無くなった。


「え?透明になったん?」

「私たちの唾液は強力な酸なんです、食べ物は栄養価を残して全て消えてしまいます」


「えっ怖、じゃぁキスしたら相手の舌溶けちゃうじゃん!」

「想像だけで、ディープキスするなんてバットは妄想力豊かだね」

その通りだが黙れくにお。


「私たち同士であれば酸に耐性があるので問題ないのです……」

「しょせん叶わぬ恋か」

「ちょっと、アタイとだったら出来るわよ!」

「軟体動物は医者に止められてるので」


そんな話をしていると、ガサガサと草むらから音がする。


今度は何がエンカウントするんだ?


 音のする草むらを凝視していると、光る鋭い目玉が二つ!

「狼です!」

チェックが叫ぶと同時に、獣は草むらをものすごい速度で移動し、俺たちの後ろに回り込もうとする。


「あっちから仕掛けてきやがったか!」

「狼ってテリトリー広いよね、しかも焚き火焚いてたら丸見えだよね」

「それ知ってたら教えてくれくにお!」


 光る目玉を追いながら、いつ飛びかかられるかの恐怖に、みんな円の真ん中に小さく集まった。


「おい、狼男、話をしようじゃないか、君の目的は何だ?」

チェックが仲間に誘われたらしいから、こいつはつまり、俺達と同じ境遇の可能性が高い。

しかし、友好的とは限らない。


「お前に話すことはない!大人しくやられてしまえ!」


「あ、これ話通じない奴か」

獣は、一直線に俺の方に飛んできた。

俺は恐怖に目を閉じてしまう。


ガブッ!

「な、歯が通らねぇ!」

狼男は、一旦下がった。

どこも噛まれた感はないので、恐る恐る目を開けてみる。


 すると、まさかの目の前にロボットの腕が割り込んできていた!


「ピピピ、焚き火の煙が見えて、飛んできました。争いは止めてください」

伸ばしたロボットアームを戻しながら、草むらからゆっくりこちらに近付いてくる。


こいつも喋るのか。


「うるせぇ!そこをどけ、お前も噛み殺されてぇか!」


 草むらから飛び出しなお、威嚇を続ける。

月と焚き火に交互に照らされた狼男は……狼男?

全身、思ったよりモコモコしている。これは毎日のお手入れの成果だろうか?

そして、やけに首が長くて、つぶらな瞳がキュートだ!


「もしかしたらアルパカではないですか?」


「俺を……知っているのか!?」

「個人的にではないが、その特徴はアルパカだな」


怪奇、アルパカ男!



「ピピピ、喧嘩は止めてください」


そっか、お前もいたな。

「もう喧嘩して無いよ」


「ピピピ、喧嘩を止めないなら実力行使に出ます」

「こいつが一番やべぇ!」


俺は急いでアルパカの手を握り、にっこり笑った。

「はい、仲直り」


「ピピピ、実力行使に出ます」

「ダメだこいつ壊れてやがる」


「上等だコラ!やってやるよ!」

なにやってるアルパカ。

「こいや、コラぁ!」


 そういうと目にも止まらぬスピードで駆け出し、ロボットに噛みつく!

「なっ、歯が通らねぇだと!?」


いやさっき噛んだやん。


「多少固いからって調子に乗るなよ?まだ手札はあるぜ!」

そういうと、素早い動きでロボットの側面に回り込み、死角からの蹴り!

ガイーンと、音がするがびくともしない。

「まだまだぁ!」


 そのまま飛び上がると、口から臭い唾を吐く!

着地しながら蹴り、固い蹄が体を捉える、ガイーン。


そのまま、一旦離れる。

「どうだ!」

「ピピピ、敵対行動確認、敵対行動確認」

「効いてないだと!?」

「途中で唾吐く威嚇は要らなかったな」


 わりと固そうなロボットだなぁ、ってかこのアルパカもだいぶ好戦的過ぎるだろう。


「仕方ねぇ、これだけは使いたくなかったが、奥の手だ」

少年漫画かよ。


 アルパカは深呼吸をして、今迄以上に集中。

つぶらな瞳を見開いた瞬間、ロボットに向かって走る!

「食らえ、必殺の!」

そう言って、ロボットに噛みついた。


「なっ!歯が通らねぇ!?」


三回目だぞそれ。


「よし、イカちゃん、光線銃行っちゃおう」

「オッケー」


ちゅどーーーん


 アルパカは辛うじて巻き添えにならなかった。

周囲を赤い炎の渦が照らし、目を開けたときにはロボットは……

「頑丈だなぁ」

傷も付かずにそこにいた。


「よし、逃げようみんな」

アルパカもそれに乗るようだ。

「俺の噛みつきが効かないならお手上げだ、バラバラで逃げるぞ、集合場所は岩山の洞窟だ!」

「いや。目的地相手に聞こえてるけど!?」


俺達はとにかく走った。

目的地はバレてるけど、一応走った。



「ハァハァここまで来れば大丈夫だろう」

最後に走るのが苦手なイカちゃんが到着して、全員揃う。

「てか、くにおも一緒に走ってたけど、テレポートか浮いて行けば早いだろ」

「あ、その手があったね」

「使いなれてないなぁ」


「俺はナイバカ、お前は?」

「急に自己紹介かよ、バットだよ」

「バットか、良い名前だ!」

「そっか、サンキュ」

「イカみたいなお前は何て言うんだ?」


 みんなの名前を一人一人聞いている。

少し口や態度は悪いが、悪い奴じゃないのかも知れないな。

最後にくにおの名前まで聞いて、みんなと自己紹介が終わったようだ。


「で、お前の名前は?」

「は?」

「は?じゃねえだろ、みんなの名前を聞いてるんだよ」

「バットだよ、バット!」

「バットか、良い名前だ!そっちのイカみたいなお前は何て言うんだ?」


記憶力ナイバカ!

そう言えばさっきもロボット三回も噛んでたな。


 こいつは、この辺に放置して、野生に生きてもらった方が良いんじゃないか? 狼男だったらまずいが、アルパカ男なら対処のしようもあるだろう。


「よし、夜もふけたが。ここはロボにバレてる、移動しないか?」

「俺の家にようこそ」

「今その話ししてないんだわー」

「そうなのか?だが俺はここで生活してるから、俺の家だぞ?」

「うんうん、君はここにいても良いよ、ロボットが実力行使にくるけども」

「大丈夫だ、俺にはまだ最後の切り札があるからな!」

「噛みつくんだろ?」

「なぜ知ってる!」

「何でだろうな」


「ところでバット、ロボットなんだけど」

「どうしたのイカちゃん」

「めちゃくちゃ歩くの遅かったわよ?」

「そーなの?」

「たぶんここにくるのも半日掛かるんじゃないかってくらい」


んーと。

「よし、寝よう。明日朝になったら出掛けようか」

ウサギと亀なら、寝るのは厳禁だが、夜は寝るもんだ。


「変な奴とエンカウントしないように、交代で見張ろう、まずは危険回避能力の高いくにおよろしく」

「いいよー、じやぁゆっくり寝ててね」

「おう、それじゃみんな休憩してくれ」

「俺の家にようこそ」


「お前も話にならんな!」

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