表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/8

05話『水玉チェック』

「君たちは宇宙船を探しているのかい?」

「ああ、そうなんだ、明るい内に高くなっている所まで行かなきゃ行けないんで、急いでるんだ」

「そっかー大変だねぇ」


 そう言いながらついてくるところを見ると、成り行きで行動を共にしてくれるって事なんだろう。


「そういえば、イカちゃんも、くにおも俺の星とは違う星から来た感じだけど」

「アタイなんて見た目もだいぶ違うわよ」

「イカっぽくて素敵ですよ」

「髪をかき上げて流し目すな。また星にされるぞ。俺の故郷は地球って言う星なんだが、知ってるか?」


 二人とも首をかしげるところを見ると、知らないんだろうな。

「イカちゃんは、イカロスって星に居たらしい」


 もちろん俺は知らないが、くにおはポンっと手を叩いた。思い当たる節があるらしい。

「昔、イカロスって人が、蝋燭で作った羽で自ら流刑者になったって、おとぎ話が……」

「流刑者の話はお腹一杯です」



そのまま進んでいると。

「この先に進んではいけない!」


急に制止させられる。

回りには誰も居ないのに、声だけがする。


「なんでしょうかこれは」

「いやぁぁあ声がするぅ!」

「光線銃を出すなって」

「話したいなら、姿を見せてよ」


 くにおが見えない相手に声をかけると、奥の草むらがガサガサ揺れた。しかし、相手の姿はない。


「貴方に私の姿は見えません」

「だったら出てこなくても良いや」


 またガサガサと草が掻き分けられて行く。

たぶん隠れたのだろう。

見えないんだから隠れる必要ないじゃん。


「よし。問題なし、進もう」

俺は進み始めた。


「まってまって! 進まないで!」


 見えない声は、どうしても先に進ませたくないのだろう。話でも聞いてやるか。


「なんで進んじゃだめなんだ?」

「この先は悪い人が居るの、仲間にならないかって言われたけど、断ったら殺されそうになったわ」


「おう、そりゃぁ進みたくないなぁ」

「でしょでしょ? だからここでみんなに忠告してたの」

「ご忠告感謝します」


 ふぅ、とため息をつく声が聞こえた。

一応、本当に忠告してくれてるんだな。


「それは、どんな奴なんだ?」

「狼みたいな、二足歩行の獣で、自分の部下になれとすごい勢いで迫ってきて……」

「お前見えないのに、迫って来たのか?」

「狼だけに、匂いで分かるぞって、私こんなの初めてで、命からがら逃げ出したんです、うっうう」


 すすり泣いている、よっぽど怖かったんだろう。この透明ちゃんはいい人のようだが、この先にいる奴は怖い奴のようだ。関わらない方が身のためかもしれないな。


「レディを泣かせる奴なんて、許せないよねっ!」

「あーんぱーんち!」

俺はくにおの顔にパンチを放ったが、瞬間移動で避けられた。


「髪をファサァっとかき上げて、顔を近づけて同意を求めるのはやめてくれないか、つい殴りたくなる、星にしたくなる」


「以後気を付けるよ、気持ちより先に殴ってたけどね」


 しかし、許せないよね?と同意を求められて「そんなことない」とも答えにくいのが男のサガだ。


「この子、いつ迄もここで忠告し続けなきゃいけないって可愛そうよ、なんとか解決できないかしら?」

イカもそっち側?


「みなさん、ありがとう、ぐすん」


いや、俺まだなにも言ってないんですけど!

……めんどくさいって言いにくい。


「バットってば、なにも言わないつもり?」


ばれたか


「解決の方法を考えてたのさ!」

「さすがアタイの見込んだ男ねっ!」

「ありがとうございますありがとうございます」


「で、その内容とは?」

「考えていただけさっ!」


白けないでください。

思い付かないんですほんと。

だから光線銃はしまってください。


「とにかく、情報だ情報! そうだ、くにおってば空から相手の動きを見てこれないか?」

「お安いご用さっ」


 そういうとくにおは、ふわりと宙に浮いたまま、道沿いに飛んでいった。


「あわわわ、飛べるんですか!」

「お前も消えとるがな」

「私のいたところでは当たり前でしたので」

「みんなが透明でどう生活するんだよ」

「身に付けたものは視認できるので」

「……ってことは、今は全裸ということか?」

「ヒィっ目が怖い!こっち向いてないけど」

「あ、こっちじゃなかったのか、ちぇっどうせ見えないんだよな」


そんな世間話(?)をしていると、くにおがスーっと帰ってきた。

「そういえばテレポートで行っても良かったな」

「あ、ですね」

「お前あんまり自分の力の使い方に慣れてないね」

「日常生活では使わないでしょ、遅刻したときくらいしか」

「十分便利だよ」


 くにおによると、この先に大きめの洞窟があること、そしてその前で焚き火の跡があることから、そこに狼男は潜伏しているだろうと言う。


「ほかは、ずっとこんな感じの森だったね」

「洞窟はどの辺だ?」

「そこの小高くなった岩山だよ」

「あぶね、俺あれに上って辺りを見回すつもりだったよ」

「透明子ちゃんさまさまだね」

「なんだその呼び方は。ねぇ、君はなんて名前なんだい?」

俺は優しく声のする方へ問いかける。


「私はチェックって呼ばれてます」

「チェック?」

「チェック柄ばかり着ていたので」

「そういう認識なんだ」

「夏休み明けとかに洋服の雰囲気を変えると、しばらく混乱されます」

「だろうね」

「水玉模様のチェックって呼ばれます」

「実体験っぽいな」


 俺たちは一通り自己紹介を済ますと、洞窟に巣くう狼男対策を練ることにした。


「そういえばさ、あの山登らなくても、くにおが飛んで宇宙船あるのか、見てくれたらよくないか?」

「そういえばそうだね」

「お前、能力使いこなせてないなー」

「日常生活で使わないでしょこれ、持ってた風船離しちゃった時くらいしか」

「何歳だよ、そして意外とその経験ねぇよ」


こんなので大丈夫か?

今からでも遅くないぞ、放置しようぜ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ