04話『宇宙を漂う犯罪者』
「俺は百舌鳥抜人、バットでいい」
「僕の名前は流刑者920号だよ」
よくわからん名前だが、囚人番号みたいで気持ち悪いし、語呂も悪い。
「じゃあ、くにお、でいいな」
「おっけー」
軽いな。
「ときにくにお君。聞きたいことが2つほどあるんだが」
「なんだいバット」
銀髪をかき上げ、流し目をして来る。
さっきもやってたな、嫌な癖だなおい。
「まず流刑者とはいかに?」
「君たちもそうだと思ったのだけど、違うんだね」
「俺はこけたらここにいた、イカはワープしたらここにいた、流刑ってのは関係ないな」
悪さをした覚えもないし、「刑」とは無縁のはずだ。たぶん。
「僕の世界では死刑の制度がないんだ。倫理観の問題でね。たがら流刑ってのは、悪事を働いたものが、生きたまま宇宙空間に射出されることさ」
「お前、犯罪者だったのかよ」
「フッ、流し目しすぎたのさ」
「どういう罪だよ」
「わりと簡単に流刑されてしまうんだよ私の世界では」
「どんな罪で流刑されるんだ?」
くにおは顎に手を当ててから、少し考えた。
「流刑されてまた舞い戻り、更に流刑を繰り返した男の話なんだが」
「そりゃぁ、ヤバそうな奴だな」
俺はゴクリと生唾を飲んだ。
「毎日のように、住民に嫌がらせをしたり。ロボットを開発しては、自警団と戦った男がいてね。何度流刑にあってもすぐに舞い戻って、その小さな街を執拗に狙い続けているんだ」
「どれだけ恨み深いんだよそいつ、しかも進行形か」
「何度宇宙に射出されても戻るなんて、ものすごい執念だよね」
「だな」
「他にも、パン屋にカビをばらまいたり、あんぱんに水をかけて湿らしたりと、悪行の限りを尽くすと聞いたよ」
「まてまて、急にチンケな罪になったぞ?」
「そんな小さな罪でも、その星を追放される厳しい世界なのさ」
「流刑ってそんなに頻繁に行われているのか」
「かくいう僕も、彼女とデート中に他の女の子に流し目しただけで、星にされたんだよ」
よし。ここまで一生懸命話を合わせてきたが。
流刑ってのは漫画で言うところの、あーんぱー○ち、はひふ○ほー、で星になるタイプのあれだ。
あれって宇宙まで飛んでたんだ。
で、こいつは戻ってこれないまま、他の星に落ちてきたと。そういうことか。
「くだらん!」
「急に、なんだい?」
「おっと心の声が駄々漏れだったぜ」
「僕は30年間も宇宙空間を漂い続けた」
「意外と重い罪になってる」
「宇宙は広大すぎるからね、僕も途中で考えるのをやめたよ」
「そういえばデュ○様も流刑されてたな」
「ふと、意識が戻ると、ここにいたんだ」
大体の経緯は分かった。
しかし、俺たちとの共通点は見つからない。
「2個目の質問なんだが、光線銃を避けたのと、浮いたのはどうやったんだ?」
「ああ、テレポートとレビテーションかい?」
「当たり前のように言うんだな、超能力って事か」
「僕の個性だからね」
「すごい世界から飛んできたなこいつ」
「首をすげ替えることで、パワーが100倍になる人もいたよ」
「それは知ってる」
よく分からんが、当たり前に超能力が使えるなんて。
出会い頭に命取ろうとしたのに、こいつが底無しの穏和で良かったよ。
「そういえば、なんでくにおは920号って言われてたんだ?別に監獄に入ってた訳でもなさそうだし」
「920本目の流刑だったのさ」
「号って、ホームランみたいに言うなよ!」
「最後のは場外まで飛んだよねぇ」
「お前もバイキ○マンも懲りなさすぎだろ!」
なんにせよ、ものすごい犯罪者じゃなくて良かった。
デュ○様だったら扱いきれないところだった。
すでに持て余している感はあるが……