おねぇ聖女が凄すぎて、歴史書には残すことができません!3.厄災の対応
私はエドガー・バルマー。王国に災厄が降りたという神の啓示を受け、勇者ハインツ様、魔導士モニカ、マリアと私が対応に向かっている。そして今、私は見たくない光景をみている……
「マリアさん! 右3体をお願いします!」
私は聖女の護衛を担ってきた名家として、弓と槍を使いこなす訓練を受けてきた……後衛である聖女の盾として……
「まっかせて~! どりぁぁぁ!」
勇者の指示に従って攻撃を始めるマリアが、光る拳を化物に当てると、化物の体は四散した。なに聖女が前衛やってんだ……白いドレスが返り血で真っ赤だぞ……
「いっちゃって~!」
たしかに、マリアは言動は別として非常に強い。先程は「女の敵~」とか言いながら女淫魔に腹パンしていたな。お前、男だろう……
「ふぅ~。終わったら綺麗にお掃除しなきゃ!」
そして、マリアが聖なる光を放つと血染めのドレスが白くなっていく。とてもシュールだ……我々にも無駄に力が湧いてくるのが悲しい……
「また、私達……出番ありませんでしたね……」
モニカ殿が私に話しかけてきた。そうだろう、私もそう思っている……
◇
神が啓示した災厄は死者王だった。最後はマリアが死者王に馬乗りになり、相手を撲殺していた。最後まで後衛の出番はなかった……そして、災厄が去った今、私は言わないといけないことがある。少しだけ心苦しいが国民の為だ……
「マリア……凱旋パレードの事なのだが……」
こんなものを王国民に大々的に見せてはいけない。出会ったことがある屈強な兵士でさえマリアには怯えていた。このままでは王国が混乱に陥ってしまう……
「嫌よ。私パレードなんて出ないわ~」
は? マリアは何と言った? 聞き間違えか? この男が名誉のパレードを辞退するのか……
「こういうのは勇者と姫とのパレードって相場が決まってるの!」
確かにマリアの言うとおりだ。勇者ハインツ様と婚約者である第一王女のクララ様がパレードをしたら、王国民は大喜びだろう。しかし、なぜマリアはパレードを拒否したのだ……
「それに、私が出ちゃったら皆が私の美しさに釘付けになっちゃうでしょう?」
ああ……間違いなくマリアの凄さに皆は釘付けになる。美しさは別として……だが、断るとは意外に謙虚なのか……これなら「聖女の記録書」に載せても良いかも……
「パレードで皆お酒飲むからガードが緩くなるの。真夜中の親善試合……うふふ、今から楽しみだわ~」
前言撤回だ……絶対に記録書に載せてはならない……