ドS、奴隷を買いたい
(グッ…!なんて女だ!)
背骨折りを受けた高禍原の体は抵抗する事もできず膝を付き、ほんの一瞬の意識の消失の後地面に体を打ち付けていた。
「プロメテウスの鉄槌!」
圧倒的にメイドに似つかわしくない動きで主を地面に寝かせ、次に取った行動はあろうことか飛び上がり地面とキスしている相手に肘打ちを放つという殺人コンボだった。
「ハァー…ハァー…!な、なんて事するんだお前…!」
危機一髪、海老ぞりになって地面の様に背中が陥没するのを回避した。
「何って、混乱を治す魔法ですよ」
「嘘だ!僕は異世界にも魔法にも詳しくないが今のは絶対違うと言いきる自信があるぞ!」
「そんな…!バンラちゃんに教えて貰った得意技の一つなんですよ!?」
「誰だそいつ!文句言ってやる」
「童閻寺様のメイドです」
「やっぱり止めておこう」
今度会う事があるなら文句を言ってやろう。とにかく今は武器を買い自分一人でも戦える準備を整える事と恵夢子から離れるのが先決だ。だがその前に…
「リティア、奴隷って実際居るのか?」
所持金の金貨100枚、一体どれくらいの価値があるかわからないがまさかはした金ではあるまい。それに自分で戦うより多分現代で戦った事のない僕よりはこの世界の住民なら運動能力、戦いの知恵共に有るだろう。メイドの例が今ここに居るし。
「勇者様?やはりプロ鉄が決まらなかったから…!」
「待て!誤解せずに聞いてくれ。僕はまず己ではなく味方を守る職業だ。だから仲間も欲しいし守りに集中したい。それに剣って鉄だよね?自分で言うのもなんだが僕は自分の力に自信がない」
「あ!言い忘れてましたが盾以外の手持ち装備は高禍原様には扱えません」
「…」
一回ぶん殴ってやろうかこのポンコツ。この分だとまだまだ言い忘れが有るに違いない。あ…HP減ってる…。あ…盾出てきた。
「それに仲間なら冒険者を雇いましょう。奴隷を買うより安く済みますし何より戦闘を生業としている方もたくさん居ますので教えを乞うのも良いかと」
「成る程。確かに給料として金を払うと考えれば大量の出費もないな。それに技術を覚えるのも楽かも知れない。だが僕は奴隷として売られている人々を救うと同時にゼロから信頼を勝ち取りたい!」
盾!と強く念じると出てきた専用武器?の盾を高々と持ち上げリティアを説得する。冒険者か…無しだな。労力、融通、信頼どれを取っても冒険者の上だ。この世界の労働法は知らないがまず自分の力以上の事はしないだろうしな。
「勇者様…!私、感動ですっ!正直召喚された事に不満も有るでしょう。なのに第一に国民のみなさ…」
「おっ裏道発見」
「…感激される事でしょう。正に義を…勇者様?」
盾盾盾盾盾盾盾盾盾盾
「やぁ、君が奴隷商で合ってるよね?」
「ようこそおこしくださいました盾の勇者様。して、今日は何用で?」
「安心してくれ。僕は奴隷を買いたい」
思ったより闇の情報伝達速度は速い様だ。この路地裏を見つけて10分かからずこの店に来たというのにもうこっちの事を知っている。道?弱そうなやつにアンチコンフュキックしたら教えてくれたよ。蹴られた背中はかなり痛そうだったけど。
「予算はいくらですか?」
「…」
金貨は使用人が持っていたので知らない可能性もあるが僕にそんな質問をするとは良い度胸だ。腕を組み睨み付けた。
「おっとこれは失礼しました。どのような用途の奴隷が必要でしょうか」
奴隷商は着けているペストマスクの様な物のずれを直すと自分の手のひらと手のひらを重ねてご機嫌を取る様な動きをし始めた。
「戦闘だ。いいのがあるかい?」
「いいのって嫌ですねー…本当にあなた勇者ですか?」
ぶん殴りてー…。
どーも山田です。高禍原が他の勇者の装備を言い当てていたというミスがあったので今からそれぞれの上に装備の紋章みたいなのが浮かび上がってたという事にします。