奇跡の御業
『12月15日 僕の記憶の行方についての考察をここに残す』
こう書いてある時点で、昨日の僕もまた記憶がなかったようだ。
今は亡き友、カインを偲びながら自分の無力さに脱力していた。
『先ず、カインは死に、サイラスとマリーの行方は判ってない。恐らく近くで待機している執事のカガトさんに訊いても同じ内容を復唱させるだけだから止めておけ』
ああ、わかった。
昨日の僕からの助言に心の中で返事する。
そうすると不思議と安堵できた。
安堵という感情を覚えるほど、今の僕は不安だったようだ。
『……毎日、記憶欠乏症に罹って、全てを忘れてから毎日、僕は同じことを繰り返しているんだろうな。生きているだけ奇跡的だと自分のことながら思う。けど、いつまでも状況に甘んじるわけにはいかない』
――そうだろ?
『そうだろ? なら12月15日の僕から提案する――ラプラスを怨むのはやめて、今すぐ悪魔達を懐柔するように動くんだ。僕の武器は今の所皆目見当が付かないけど、必ず抜け道があるはずだ。そうでなければ僕が生かされる理由がないのだから』
それもそうだ。
カインが殺されて、何故無力な僕は生かされている。
ラプラス達、ノヴァの血族は一体何が狙いなのだろうか。
『今日の僕はもう駄目だろうけど、明日はきっと違う景色を見ていることを願う』
「……カガトさん、質問があります」
「何でしょう? カイン殿であればラプラスが殺害しました。サイラス殿であれば行方不明につき目下調査中です。マリー様の所在、または生死は我々の方では確認出来ておりません」
「そうですか」
やはりと言えばいいのか、カガトさんは日記に書かれていた内容を懇切丁寧に口にしていた。
そこで日記を閉じ、腹部に隠すように仕舞う。
昨日の僕は悪魔を懐柔すればいいと書いたが、一体どうやって?
「今朝の献立は海老をふんだんに使ったラビオリとジャガイモのヴィシソワーズとなります」
目の前に差し出されるちょっと豪華な朝食の品々。
むしろ、懐柔されてるのは僕の方じゃないか。
「どうですイクト様、ラビオリに使われてるのは貴方が耕した畑で獲れた小麦ですよ」
「……カガトさんは僕の両親がどうなったか知ってますか」
「報告によれば処刑されたそうですね」
彼は表情一つ変えることなくその事実を口にする。
その後口を噤んだ彼に対し、僕は何を考えてるか判らないと思った。
懐柔するにしても、彼を切り口にしない方が良さそうだ。
朝食を摂り終えた僕は必死に思考をめぐらした。
地の利とも言える僕の武器とは?
逆に彼ら悪魔達の弱みはないのだろうか?
それらを総合して、現状打開となる策を講じている。
「……時にイクト様」
「何ですか」
「無碍な時間を過ごすのも、退屈して来たのではないですか?」
素直に肯定するべきか、それとも、素直に否定するべきか。
考える裡に僕の思考は袋小路に行き詰っていた。
「これを」
と言い、カガトさんは僕に黒い革の手帳を寄越した。
促されるまま、パラパラとめくり中を覗く。
「ちなみにこれは?」
「貴方が愛したマリー・ルヴォギンス様による手記に御座います」
「あ、ありがとう御座います。ですけどいいんですか?」
「何がでしょうか?」
「現状、貴方達ノヴァの血族とマリーは抗争している関係だとすれば、これは彼女を見つける足掛かりとなる大事な代物なんじゃないですか?」
「いいのです、ラプラスが決めたことですから」
「ラプラスが貴方達の代表なんですか?」
「さあ、どうなのでしょう。ラプラス自身、そう考えてはいないとは思いますが」
彼らにはこれと言った団結意識はないようだ。しかし彼らは世界を相手取っていることから、個々人の潜在能力はやはり悪魔と畏れられるほどのものらしい。
何にしろ僕はマリー・ルヴォギンスの手記を手に入れた。
この状況下でこいつが役に立つとは到底思えないけどさ。
僕の日記にも書いてあったように――彼女との生活は驚きと羨望に満ちていた。
それは何故だ? その理由は――
「……静かに聞いて欲しい」
「……?」
「私はクロエ、サイラスと共に生きた稀代の魔術師」
その理由は、彼女が奇跡の御業とも称される『魔術』の使い手だったからだ。
コンビニの競合も、私たち消費者からすれば嬉しい限りです。
私は最近ローソンで昼を摂り、帰りにファミマでプリンを購入するルーティンを取ってます。
セブンイレブンは市県民税の支払いや、スチームの支払いの時に利用します。
嬉しい限りです。
誰が創設したのか定かじゃありませんが、ありがとうコンビニ。
名前通り便利です。




