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理由は聞かず先ずはネ申


「……何やってるんだアビス」

「理由は聞かず先ずは助けろチンケ」


 先ずは、ねぇ。

 ここは多種多様な人種が行き交うフリーマーケットで。

 キャラバン行としてやって来た僕らもまた店を構えようと訪れた。


 そしたら僕らと別れたはずのアビスが商品として陳列されている。


 彼の値札には金貨千枚と書かれていたもので。

 店主と交渉し、金貨千五百枚でアビスと、一緒に売られていた魔物も二匹買った。


「怪我してるじゃないか、治してあげようか?」

「頼む」

「もうそいつは放っておいたらどうだイクト」


 マリーが気持ち厳しめの口調でそう言うが。

 彼は一応僕の使い魔だし、しょうがないだろ。


「魔術師という人種はどれも怖いな」

「魔術師にもよるよ、でも大概の魔術師は怖いだろうな」


 アビスに打ち明けられた内容は、今さら思えばそうかもと認識する内容だ。

 知ってる魔術師は少ないけど、魔殺しとか、最強とかって自称する人達だった。


「お前達もここに辿り着いていたんだな」

「昨日ね」


 僕達がこの街『ラピュタ』に着いたのは昨日のこと。

 オリビアに間違って自らキスした日のことだった。

 その光景をマリーに目撃されていたようで、彼女は昨日から機嫌が悪い。


 ラピュタはグレアが証言していたように空に浮かんでいた。

 そのため渡航手段は限られていて。


 一つは自力で浮かぶか、マリーのように魔術で移動するかで。

 もう一つは街の入り口に掛かっている巨大な橋を渡るかだった。

 橋には関税が掛かっていて、一回出入りするのに金貨二枚は必要だ。

 

 故にこの街の経済は潤いに潤っている。

 市民は気品に溢れているし、治安もいい。


 僕達のキャラバンが行者として商売する最初の街としては期待が高かった。


「さてと、それじゃ早速始めましょう」

 人の十倍はやる気のあるモモが、ヘンリーを持ちあげて。


「さあさあ! ラピュタの皆さん! これより我ら賢者の孫娘一派が赤字覚悟の出血サービスを始めるよ! 先ずは絶滅危惧種のスッ! ラーイム! ご家庭に一匹欲しくありませんか!!」


 ヘンリーを人身御供のように売りに出した、止めてくれ。


「ちょ、ちょ何、イクト」

「ヘンリーは売れない。売るなら魔石や、他のにしてくれ」

「ピゴー」


「チィ、じゃあ、魔石を売りますよー魔石ー、魔術師の端くれなら欲しいだろおらー」


 ヘンリーを売れないとなったら途端に雑になるモモさん、鬼畜っす。


「……魚も売ってます」

「魔石を買ってくれたら魚もサービスでついて来る! どうだおら!」


 なんて言うか、寡黙なグレアが健気になったので萌えた。

 グレアが地球に来たら是非ともメイド喫茶で働いて欲しい。


「魔石だって? 中々希少なもの売ってるじゃないか」


 すると、レンガ仕立ての通りを行き交っていた男性が来店してくれた。


「でも、高いんだろ?」

「勉強させて頂きますよ、例えば移動魔術のリープの魔石を一つこのぐらいでどうでしょう」

「……舐めてるだろ」


 え? 僕が提示した金額は金貨百枚という超破格だったはず。

 移動魔術リープは、マリー最愛の魔術で、胸を張れる商品だ。


「リープの魔石が金貨百枚? そしたらこの街の経済が一気に瓦解するぞ。つまりそれ贋物だろ」

「……あー、なるほど、いやお恥ずかしい話僕達は」


「魚も美味しいですよ、私が捌いたもので、銅貨三枚でいいです」

「ならその魚を二尾頂くよ。悪いことは言わないから、その贋物は仕舞った方がいい。でないと保安官に捕まるぞ」


 贋物じゃないんだけどなあ。

 でも、学べたことは学べたし、とりあえず良しとしよう。


「ありがとう御座いました」

「所で君達みんな可愛いな。今度は俺の店にも来てくれよ。向こうの方でやってるから」


「ああ、是非お邪魔させて頂きます」


 その後、一旦魔石を店舗から引き下げ、僕らのキャラバンは魚をメインに店を再開した。


「グレア、魚の売り上げは全部君が持って行っていいから」

「……ありがとう」


 この子は……萌えー。

 グレアの容貌に控え目の性格と声質。

 彼女の全ての因子が、僕の萌えをくすぐる。


「ははは、お礼言われるような萌え、ではなく、ことじゃないよ」

 そしたら、マリーが背後から痛烈なチョップを繰り出した。


「いい加減にしろイクト、私に嫉妬させるな、終いには」

 終いには?


「世界を崩壊させるぞ」

 それなんてエロゲ―。


 マリーが世界崩壊の兆しを伝えて来た後、僕らの魚屋は盛況する。

 さっきの小父さんが「安くて、旨くて、そしてインチキ臭い!」と口コミしてくれたようだ。


 安くてインチキ臭いと言うフレーズが、他人の好奇心を刺激している。


「あっという間に完売でぇす! ありがとう御座いました!」

「私達の晩飯がなくなちまったな」

「全く相手にされないよりはいいでしょ」

「そうかな?」


 分かる、その気持ち本当に分かるよモモさん。

 まったく相手にされない商売と言うのは、空しいだけだから。


「チンケ、さっき売りに出していた魔石は本物なのか?」

「……本物だよ、内緒だぞ」

「嘘つきのお前がそう言うってことは、贋物か」


 僕の切り返しによって野心立っていたアビスの炎は消える。

 馬鹿め、君の心理はくみし易い。

 本当に悪魔なのかと疑うぐらいだ。


「それよりもアビス」

「何だ、手を離せ」


 しょげている彼の手を取り、キャラバンを始めてから考えていたあることを実行しようと思った。


「要は君は強くなりたいんだよな?」

「そうだが」

「……」

「チンケ、その見定めるような眼は止めろ」


「君は信用できないけど、将来的には頼りにする時もあるだろうからさ」


 ――だから、僕に。


「僕に、身体を預けてみないか。絶対君を強くして見せる」


 瞬間、アビスは生気を失ったかのように頭を抱え始めた。

 悄然として彼の雰囲気が、もっと悍ましい幽寂なものへと変わる。


「……」

「大丈夫か?」

「いや、何でもない。ちょっと昔を思い出し、許せなくなっただけだ」

「……許せなくなったって?」

「強くしてくれるんだろ? さっさとやってくれ」


 彼の語調と、覗える表情は真剣以外の何物でもなくて。

 僕はちょっと尻込みするような感じで、彼と一緒に馬車へと向かった。


「ここに連れて来て、どうやって俺を強くするんだ」

「さっき、君と一緒に魔物を二匹買っただろ? あの魔物と君を合体させるんだ」

「……やってみろ」


 試しに先程購入したワイルドボアをアビスに捕まえて貰って。

 意識を集中させ、僕の中で知覚できる二つの生命の灯火を移動させるイメージで。

 すると、猿人だったアビスの容貌がミノタウロスのようになった。


「これは……チンケ、どうして今まで隠していた」

「言っただろ、君が今一信用出来なかった」


 それで。


「強くなってるような自覚ってある? あれば他の魔物とも合体させるけど」

「自覚はある、まるで俺の中にもう一人の俺が生まれたような安心感だ」

「そうか、じゃあ次は」


 それからアビスと一緒に魔物を売っていた店に戻り。

 生まれ変わった彼の姿をさらすと共に、魔物を全部購入。

 そして合体! 合体! 合体に次ぐ! フュージョン!


 そしたら。


「えっと、お前誰?」

「オレはゼンチゼンノウにしてこのセカイのネ申」

「ネ申?」


 マリーが生まれ変わった彼を見て心なしかたじろいでいた。


昨日は作詞の時代だとほざきましたが。

やっぱり時代は作曲の時代だと悟りました……。

それでは聴いて下さい、サカイヌツクで月雨。


作詞作曲:サカイヌツク

 パーパパパー、パーリーパーリ―!

 ウォオオン、アーレアレ!

 シュビドゥバダァ、ボンジュ―ボンジュ!

 ヤァー、ァアアアアアアアアア↑↑↑


くそう、これじゃあ痛々しくもなんともない。

これじゃあ、演技でしかないじゃないか!!


続く。

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