某国の女勇者 ビリーノエル
拝啓読者の皆様へ、私は風邪を引いてしまいました。
恐らく、平成最後の風邪となります。
皆様もお気を付けて。
「イクト、他の魔石は生成出来ないんだな?」
「出来ないみたいだ」
だが問題もある。
僕が現状生成出来るのは蒼炎色の魔石、ライフドレインだけだった。
ライフドレインの魔石のストックは合計で十三個用意してあるけど。
これ一つで金貨1800枚相当だとすれば、一生遊んで暮らして行けるじゃないか。
他の問題としては、この魔石をどうやって売りさばくかだ。
「確認なんだけど、ライフドレインの魔術って需要あるのか?」
「軍人や傭兵でしたら、皆欲しがると思いますよ」
ラプラスは付け加えるように「王国軍の幹部に古い知り合いがいます」と言う。
「でもあの方は管理意識が行き届いているちゃっかり者ですから、商売相手としては信用出来ません」
「ライフドレイン以外の魔石も生成出来れば商売の幅が拡がるんだけどな」
現状だと、僕達はこの魔石を闇市で取引するしかないようだ。
最悪のケースとしては、僕が何者かに拉致されること。
対策として自衛手段を魔術適性から知りたかった所だけど、ヒーラーってって。
「……当面は作戦会議だな」
マリーはその台詞を退屈そうに呟いた。
彼女は詰まんないだろうけど、僕はある種の喜悦を覚える。
「イクト、何か妙案閃いたか?」
「え?」
「違うのか? じゃあ何で笑ってるんだよ」
「え、いやこれは……君は退屈そうにしてても綺麗だなって思って」
退屈そうにしているマリーを、僕は初めて目にした。
彼女の喜怒哀楽を覗えて、僕は何故か心が高揚する。
僕から綺麗だなと言われた彼女は嬉しそうに近づいて、キスをしてくれた。
「失礼致します」
「誰が貴方の入室を許可しましたかカガト」
「マリー様、正面玄関にてお客人がお見えになりました」
「お客さん? 誰だよまったく」
「はい、西方の国、バルバトスよりお越しになられたビリーノエル様というお方なのですが」
「ビリーノエル? 本当に誰だ」
「――判らなくて当然だが、私からすれば貴様は親の仇のように忘れられない存在だ」
その時唐突に一本筋通った声が城内に響いた。
声の主は声質から女性でかつ品格のある相手なのが推察出来る。
「初めましてマリー・ルヴォギンス。我が国より奪った秘宝アスタリスクを返して貰うぞ」
先んじて言うと、彼女の名はビリーノエル。
僕達は彼女と出逢ったことでその運命が大きく変貌するのだけど。
詳しい話はまた今度にしよう。