次編:キャラバンストーリー
銭湯からウキウキ気分で帰還した僕は早速ジョージを探すように呼んだ。
ヘイジョージ、気分はどうだい? まぁまぁだって?
そんな君に素敵な彼女を紹介するよ。
と妄想してからのウインクバッチコーイ!
「えー、では皆さん、揃いましたね? 今夜は祝賀会ということで」
グッタモの吉報を受けて、僕は媚びを売るようにロキ部長に連絡した。
彼は電話越しに歓喜し、僕の家で祝賀会を開催する運びとなり今に至る。
「皆さん、各自飲み物は行き渡りましたね?」
「渡ったぞー」
はてな村の村長も祝賀会に参加し、部長の音頭で乾杯といった。
でもマリー、君は駄目だ。
と思い姿を探すと、彼女は窓辺に居た。
「見ろよイクト、ジョージが心なしか嬉しそうだ」
「ピゴー」
ジョージはグッタモが創造したスライムのヘンリーと肌を寄せ合っている。
僕はマリーを抱き寄せ、夢見てた光景に喜びを分かちあった。
「え!?」
その時、浪川が驚嘆する声が聴こえた。
振り向くとモモが居て、あ、やっぱりな。となる。
「どうしたんだろうな? モモさんが何かやらかしたか?」
「後で理由を聞くといいよ。案外、涙ぐましい内容だと思う」
それよりも誰だ。
このめでたい席に、ぽんとエロゲを放置している不届きものは。
あの存在感ある巨乳押しのエロゲパッケージのせいで祝賀会が台無しだ。
でも僕は回収したりしない。
犯人は犯行現場に戻って来る理論を実証したいから(欺瞞)。
「ぬ? 何だこれは? おっぱっぴーじー?」
バルバトス三世、それはおっぱいRPGの金字塔です、説明は以上。
「イクトくん、この度は大役お疲れ様でした」
「お疲れ様です部長」
ロキ部長が僕を労いに来ると、マリーは僕の手から離れた。
彼女はそうとうロキ部長を嫌悪しているな。
「嫌われちゃいましたな」
「そりゃ、あんなことそそのかせばそうなりますよ」
「クソッパゲ、マリーさんに何をしたの?」
するとアンリちゃんがやって来て、父親を罵倒して来る。
ロキ部長は柔らかに、大事な話があるから向こう行ってなさいと促した。
「部長、そういう態度が彼女を非行に走らせたんじゃないですか?」
「非行というほどのものじゃないでしょう、アンリのは血筋ですかね」
とにかく。
「お疲れ様です」
「お疲れ様でした課長」
「……今回の功績は、ちゃんと僕の手柄にしといてくださいよ」
僕は部長に軽くジャブを放つようけん制してみたが。
部長は手柄を横取りするような真似しないよな?
「えぇもちろん。ですがどうします?」
「どうって?」
「君はいつまでも地球にいるわけじゃないんでしょ?」
……思えばそうだ。
僕は地球出身の転生者だけど。
僕が生きる場所は、マリーの隣しかなくて。
賢者の孫娘のマリーは地球よりも、アルビーダにいる方がどこか輝かしい。
それに、地球にいると僕は窮屈さを覚える。
どちらでも生活可能なら、アルビーダで生きていきたい。
「彼女と後で相談しますよ、今後の身の振り方は」
「辞表の書き方はわかりますか?」
「気が早い、辞めるなんてまだ一言もいってないでしょ」
この人、本当に曲者だな。
地球ではたぬきで、アルビーダでは孔明のように図ってくれる。
部長とお互いに失笑をしていると、派閥争いの予感がする。
こういうのはどうだろうか?
僕が会社を辞めるにしても、部長との権力争いを制してから辞める。
しかし、この人のことだから持前の策謀で会社から独立しそうだ。
ここは課長吉岡イクトの腕の見せ所、ってところかな?
「「ガトー」くん」
「……呼びましたっすか?」
「ガトーくんは私と課長のどちらに付きます?」
「は?」
「昼食とかたまに奢ってあげたよね」
「あぁ、うっす」
部長と派閥争いを繰り広げようとした時、僕のお尻を手もみする人がいた。
「止めろラプラス」
「ラプラス? 私だイクト」
「オリビアだと?」
祝いの席でハレンチ行為に及ぶ奴がラプラス以外に増えてしまったか。
喜ぶべきか、それとも失望するべきか複雑。
「無駄な争いは止せ」
「けど、ロキは君も知っての人物だぞ?」
「ああ、だがこんなことは知るまい」
「何だよ」
若干鼻息を荒くするとオリビアは僕の耳に口を寄せ、小言を告げた。
「ロキ部長の父親は、会社のCEOだぞ」
出来レースかよ! くそう。
部長は我が社の跡取り的立場だったよ。
したらなんだ、アンリちゃんは社長の孫娘か。
「ふふふ、私が地球に還りたがった理由を知った顔ですな」
「一国の跡継ぎか、それとも一企業の跡継ぎかの違いでしたけどね」
この人、ラックにステータス全振りしてるような感じだ。
「いえいえ、私は父の四男坊ですから。世襲では土台兄達に敵わないのですよ」
「……今回の功績で、次期CEOに?」
「それは判りません。神のみぞ知ると言った所でしょう」
ロキ部長は手にしていた発泡酒を口に含み、ですが、と言葉を続ける。
「アルビーダのように、未来が決まっている運命より、私はこちらを選びたかったのです」
――運命。
部長からその言葉を聞き、僕は賢者から運命に纏わる託された願いを思い出した。
その内容は結構重大ではある。
が、マリーと一度死別した僕にとっては、まだ考えたい内容だった。
賢者ブライアンは存在を覆い隠すような靄に包まれ、こう言った。
◇
「君がマリーと子を残すことは不可能だ」
彼の言っていることは薄々分かっていた。
「マリー、あの子はアスタリスクを取り込んだ影響で子孫を残せなくなった」
「副作用でもあった、と言うことですか?」
「そうなる。才能はあっても、アスタリスクの力は巨大過ぎた、故に」
――君が死したあの時も、甦らせるには至らなかった。
「マリーはアスタリスクの能力を十分に発揮出来てないようだ」
「今度はそう簡単に死にませんよ、いや、死んでも死にません」
賢者は僕の言葉に微笑したような雰囲気だった。
あくまで雰囲気を感じ取っただけで、実際の彼の表情は窺えない。
「マリーとの子を残せなくても、君は子孫を残すべきだ。それが私の願いだよ」
「方法はないんですか? マリーと子供を作る方法は」
「オリビアなんかどうだ?」
そもそもが、そもそもの話で。
「どうして僕の子孫に拘るんです?」
「君の子孫が、人類の救世主となる運命にあるからだ」
賢者や、運命を司る能力を持っているという三つ子。
彼らの目には一体何が見えているんだ。
◇
賢者との一件を回想し終えた僕は、ジョージを見守り続けた。
ずっと長い間独りきりだったジョージにやっと相手が見つかったんだ。
これでジョージは孤独じゃなくなる。
例え僕が死のうとも、ジョージは独りじゃないんだ。
「イクトっち、ちょっと話の続きしていいか?」
「え? 何?」
今回の最大の功労者である大師匠のグッタモが近寄って来て、内緒話を持ち掛けた。
僕は軽く滲んでいた涙を拭い、話に耳を傾ける。
「実はよ、魔石の暴走制御はまだ完璧じゃねーんだ」
「それは仕方ないじゃないですか、大師匠でも慣れてないんでしょ?」
「慣れとか、蓄積された熟練度の問題なら俺でも解決出来るんだがよ」
って言うと? グッタモは要は何が言いたいのだろうか。
「イクトっちはドワーフ族って知ってるか?」
「存在くらいなら知ってますよ」
「出来れば……ドワーフ族の代表に頼みたいことがあるんだよな」
「ちなみに聞きますが、大師匠はドワーフ族に知り合いはいるので?」
「いるはずねぇだろ。ただ人伝に聞いた話だと――」
大師匠の話は割愛しよう。
ここで重要だったのは、エルフの中でも役位の高い彼の登場であり。
「ドワーフ族についてお話し中ですか? でしたら僕の出番ですね」
「カインか、確かにお前ならドワーフ族にも顔が利くだろう」
中二病全開の彼は僕達の話を耳聡く拾いやって来た。
「ドワーフ族はアルビーダでも珍しい遊牧民ですからね、探すのは中々大変かと」
へぇ、遊牧民? そうなんだ。
サイラスを探し当てるのと、どっちが大変かな。
「今の所、地球とアルビーダを行き来できる代物は一つしか作れてねぇ。スライムを創造するのは簡単だったが、魔石の暴走制御の方は下手すると工房ごと爆散しちまうぜ? そのためにドワーフ族に会う必要がある」
「でしたら、こういうのは如何でしょうか」
グッタモがドワーフ族に会う必要性を訴えると、カインさんがある提案をするのだが。
どうやら、課長吉岡イクトの物語は早々に終わりそうな感じだ。
僕は自身が認める仲間を集めた。
「どうした?」
とオリビアは集められた理由を訊いて来る。
「えー、唐突だけど、僕は、異世界アルビーダに帰らさせて頂きます」
との前言を踏まえ、僕はみんなの前に人差し指を出す。
「僕について来る人、この指とーまれ」
ってなわけで、地球にやって来た僕達は異世界アルビーダに向かい。
今度は、遊牧民のドワーフ族を探す旅に出る運びとなった。
最近あとがきを欠かさない理由は主に一つです。
それは、何気に読者の皆さんはあとがきを見に来ているのではなかろうか。
こういう懸念が私の中にあるからです。
毎日あとがきのネタを捻るのは苦労しますが、いいんです。
読者の皆さんに楽しんでもらえるのなら、私も嬉しいです。
ほっこりとしますね、m9(^Д^)プギャーって哂って下さる皆さんを想像すると。
私も微笑みながら悦んでいます(´◉◞౪◟◉)




