つまり――時は来たれり
地球の未来か、何かの文献で見聞きしたけど。
1億年後には僕らは地球に住めなくなる。
平均寿命八十年余りの僕らには関係ないのかもしれない。
しかし、僕を例に、転生者はそうも言っていられない。
君が死に。
君が生まれ変わった時。
君が目にするのは生き地獄。
そんなの嫌だろ?
現世も生き辛いかも知れないけど、それ以上の辛苦を齎したくない。
少なくとも僕は。
「部長、はてな村の様子見て来ます」
「ああ、それならガトーくんを向かわせますから」
「僕は僕に課せられた仕事のために行く必要があるんです」
会社のオフィスに齧りついたって、航行手段なんか確立できない。
部長は本気で僕に仕事をさせるつもりがあるのだろうか?
それとも。
「まさか部長は暗に僕はもう用済みだと言いたいのでしょうか」
「その通りですよ」
な!?
「君はいささか危険ですからね……悪いけど、俺はお前を一度も信用したことない」
ロキ部長が化けの皮を剥がし、僕の心臓は張り詰めた。
「イクト・マクスウェル・Jr、お前の味方はマリー・ルヴォギンス以外いないぜ?」
「嘘だ!」
「……吉岡、平気?」
「っ……浪川、ここは?」
「うん、お前、寝不足なの? 会社で寝るって、何?」
夢だったのか、良かった。
夢にしては怖かったし、妙な現実味があった。
「イクト、今日もお昼一緒にどうだ?」
「吉岡、お前後で校舎裏に来いや」
浪川はやっぱりモモの親族なのだろうか、言動がそっくりすぎる。
オリビアから昼食を誘われ、素直に彼女に付いて行った。
「今日は秘書課の人間からこの辺にある穴場を聞いて来た」
その日の昼も、僕、オリビア、ガトーリーダーの三人で周辺をぶらついていると。
ガトーがスマホにやっていた目をオリビアに向けた。
「秘書課の誰っすか?」
「エガミさんだな、確かガトーの恋人だったよな?」
「は? ガトーさん彼女居たの?」
「普通だろふつー、あんたなんか奥さんいるだろ?」
あー、だからガトーさんは地球帰還を唱えていたのかな?
愛ゆえに? 以前のガトーさんなら分かるけど。
こっちのチャラガトーからは想像つかないな。
「後で写真か何か見せてよ」
「いいっすよー、したら偶にはマリーさんの顔見せてくれよ」
「マリーの写真なら一杯あるよ」
僕の自慢のマリーをどんどん見て欲しい。
どんどん、どんどん。
「ここだ、洋食屋ドンドン。何でも肉厚のステーキハンバーグとやらが食べれるらしい」
「高そうじゃない?」
「少し値は張るらしいが、ランチ価格だから偶に行くならここがいいらしい」
ああもう。
我が家の奥さんはお嬢様だから、節約しようと思い始めてたのに。
地下にあるお店に入ると、ワイン樽がびっしりと敷き詰められていた。
テーブルのパーテーションの代わりに、ワイン樽が置いてある。
何このお洒落なお店、でもランチは1150円か。
店内をスマホのカメラに収め、三人でテーブル席に座った。
「マリーか?」
「え? ああ、そう、今マリーに写真送って、これでよし」
「……イクトはいつになったらマリーと子を設けるんだ?」
「今すぐにでも欲しい」
それが僕の願いであり、賢者ブライアンの希望でもある。
彼は自分の血を何としても後世に残したいようだ。
「賢者ブライアンの希望?」
「ああ、一昨日偶然会ったんだよ」
「ほう、彼は神出鬼没だと父上から聞かされていたが」
「マリーのことが好きなんだよ、あの人」
「悪い、俺少し席外します」
「どうしたの?」
と訊く暇もなくガトーは消えた。
トイレか? と思いきや、ワイン樽越しに彼の姿が見える。
何か気になって、注意深く観察していれば。
僕も事情を察しガトーの許へ向かった。
「君は、ロキ部長の娘さんの」
「……何? なんか文句ある?」
文句はないが、高校生が平日のお昼時にここに居るのはちょっと。
ロキ部長のことを考え、僕達は彼女の身柄を拘束した。
「その子は?」
「ロキ部長の娘さん、折角だから一緒にどうかなって」
その方がお店の人も怪しまないで済むだろうし。
と言う風に彼女には言いくるめておいた。
「アンリと言います。確か以前一度だけお会いしましたね」
「……すまない、覚えてないよ」
「唐突にですが、好きな人はいますか?」
おーい、早く注文の品持って来て欲しいでーす。
アンリちゃん、彼女はラプラスの次にオリビアが気に入ったらしい。
ラプラスとオリビアの共通点は、凛とした華がある所かな。
あのビッチはその外貌の良さを利用するだけ利用して男を次々と喰っている。
噂だと、我が社の男性は全員お世話になった。
僕はラプラスと寝た例ないから、噂は噂にしか過ぎない。
「私の好きな人を知って、どうする?」
「殺します」
おーい、殺されちゃうから早く料理持って来て欲しいデース。
Death!
「……思い出した、確かお前はイクトを殺害し掛けた子だったな」
「私、こう見えて暗殺のプロなんで」
日本国憲法違反! まぁ冗談だろうけど。
「それは言っちゃ駄目だっつってんだろ」
とガトーはオリビアと僕の恐怖心を煽るように言及した、まぁ冗談だろうけど。
「あの時の状況が判らないんだけど、今さらになって説明してくれない?」
「……知るか」
「あはは、ですよねー」
アンリちゃんは僕に敵意を持っている。イクト、覚えた。
なら、彼女の分は僕が払おう。
肉厚のステーキハンバーグを食べ、お会計へと向かえば。
何故か流れで僕の奢りとなり、その後、仕事を終え家に帰ると。
「お帰りー」
「ただいまマリー、ジョージは?」
「どこかしらには居るだろ、それよりもイクト」
何だろう? キス?
「グッタモが大事な話しがあるから、帰って来たら工房に寄ってくれだって」
大師匠が?
もしかしてプロジェクトに重大な瑕疵が見つかったのか?
◇
「失礼します、グッタモは居ますか」
「ああ、イクト、師匠なら銭湯に行ったわよ?」
「そっか」
工房に入ると、ミーシャが対応しつつ僕に手のひらを向けている。
貢物持って来たでしょ? みたいな手付きだったので、エロゲを渡す。
「これは?」
「エロゲ、知らないのか?」
「エロゲ?」
ミーシャにエロゲを渡した後は工房を辞去して、銭湯に向かう。
「おうイクト、今日は混雑してるぞ」
銭湯の番台には平素として変わらずバルバトス三世が鎮座している。
「団体客でも入ったんですか? 今晩は」
「何、今日は俺の営業とやらが実を結び、観光客の誘致に成功したのだ」
「へぇ。そう言えば最近オリビアと会ってますか?」
「何を言う、昨日お前が連れて来た時に会ったではないか」
それもそうだった。
昨日の記憶は脳細胞からもう死滅している模様だし、酒は当分控えよう。
元々僕は酒が不得意だし、愛飲してもいない。
「……イクトっち、こっちだ」
「ピゴー」
浴場に入ると、大師匠はジョージと共に湯船に浸かっていた。
浴場にはバルバトス三世が誘致して来た観光客で賑わいを見せ。
闊達な笑い声が男湯、女湯ともにこだまして、いつもとは違った風情がある。
「マリーから聞きました、大事な話って?」
「お前に謝らないといけないことがあってな」
「……何です?」
大師匠のグッタモが僕に謝る?
彼は優柔不断で、意志薄弱だけど、道徳には長けているエルフだ。
物事の良し悪し、または善悪の有無の判断において彼は深い哲理を持っている。
その彼がわざわざ呼び出してまで謝ることとは一体。
グッタモは思考を巡らす時間を与え、僕の緊張を買った。
「見て判らないのか?」
「大師匠と言えど殴るぞ」
「なんでだよ?」
「いいからさっさと教えてくださいよ」
「しょうがないなぁ、特別だぞ?」
と言い、彼はジョージを湯船からざばーっと掬い上げる。
「見ろイクトっち、俺はお前よりも早くスライムの生成に成功した」
「……え? この子って、家にいるジョージじゃないんですか?」
「違う、色が微妙に違うだろ?」
確かに。
師匠が両手で掲げているスライムは、藍色のジョージより透明感ある。
「それでな? 俺は、魔石の暴走現象の制御の仕方を覚えたんだ」
「あ、え? は……つまり?」
「かねてからの課題だった、地球とアルビーダの航行手段を確保したんだよ」
私、最近になって乗り物酔いし易くなりました。
段々と身体の衰えを感じる今日この頃、皆さんどうお過ごしですか。
病気はさぞ辛いことでしょう、そんな時ははいポカリ!
ハンターハンターで著名は富樫先生の短編連作『レベルE』にも出てきましたね。
彼は宇宙人とどういう関わりがあるんだろう。
宇宙と書いて「ソラ」と呼ぶ人種だと僕は推察しますね。
そういう人はたいてい大御所と相場は決まっとるとです(謎理論)。




