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開かれた地球と異世界のルート


「部長、今朝はやけに顔色が良いっすね」

「それはそうでしょうガトーくん、あれを見なさい」

「……まぁ、これでこの部署が無くなる事態は避けれた」

「えぇ、後は彼女達から移動手段を訊きだして。ですね」


 僕がチンカスと位置付けた異世界部は思いがけない展開を見せ、希望が湧き始めた。マリーやサイラスといった天賦の才能を持ったものには地球と異世界アルビーダへの航行も難なく実行できるようだ。怖い怖い。


 僕は天才達の才能を前にして、目を「>ω<」みたいに記号化している。


「では異世界部の皆さん、朝礼を始めますので集まって下さい」

「無論だ」

 オリビアは地球と異世界アルビーダの外交問題が掛かったこの機会に力を入れている。


 なら、ここは誰よりもやる気に溢れた彼女に事を一任したい。


「お早う御座います」

「お早うみんな、今日からここで働くことになったオリビアだ。私のことは気兼ねなく呼び捨てにしてくれて構わないが、余り失望させないでくれよ」


 オリビアは気を逸らせる余り、部長の紹介よりも先に自己紹介してしまう。


 オリビアって意外と天然な所あるよな。


「私は熱意のあるものが大好きだ、例えそれが恋愛だろうと、仕事だろうと。熱意さえあれば人類はさらなる発展を遂げ、地球人、アルビーダ人と言った世界の垣根を超えた友好を結べる。今はお互いに手を差し出し合い、取りあおう」


「オリビアさん、自己紹介ありがとう御座います。ですが事には順序というものがありますので、まぁいいでしょう」


 ロキ王子、貴方はすっかり人が変わられた。

 以前の王子であればまた奇怪な行動で僕らを翻弄したことだろう。


「そう言う訳ですから、異世界部はいよいよアルビーダとの交渉へと入ります。アルビーダの調査票を後で皆さんに御配りしておきますので、目を通し、他の部署とも連携を取って会社に還元しましょうね」


 と言う訳で。

 いよいよ地球とアルビーダの外交ルートが確保されてしまった。


 ロキ王子はサイラスを呼び寄せて、航行手段を確かめ合っている。


「師匠の故郷は幻想的ですね」

「幻想的?」


 リュト、何か知らないが目が死んでるぞ。


「……そうだな、地球は原初の姿を失いつつあるけど」

「今なら僕は飛べそうな気がします」


 飛べ……?


 ちなみに今このオフィスに居るのはラプラスとカインさんとジーナ師匠を除いた皆だ。


 カインさんと師匠は元々みんなには同行しておらず。

 ラプラスには社員寮の手伝いを頼んである。

 けどラプラスのことだから頃合いを見計らってビッチ活してるんだろうな。


「イクト、私達はここで何をすればいいんだ? オリビアが軽く説明受けたいって躍起になってる」


「と言われても、僕も門外漢なんだ。きっとロキ王子から指示が出るはずだからそれまでは待機で」

「器用貧乏なお前でも、困ることってあるんだな」


 マリーにからかわれ、僕は彼女の脇腹をまさぐった。

 彼女は唐突な攻撃に驚き、仕返しのように僕に抱き付く。


 そんな僕らの夫婦仲を制止したのはモモ先輩であったりオリビアだった。


「非常識だぞゴルァ」


「確かにな、ここは比較的厳粛な場のようだ。お前達二人の行動は他の連中の邪魔にしかならん、自重しろ。そしてモモ、いくら注意するためとはいえ金的を仕掛けるのは問題行為だと私は受け取るぞ」


 オゴゴゴゴ。

 モモ先輩、やってくれ、ますね。


 ポイントは、モモ先輩の金的は蹴り上げるものではなく、ムエタイ式の膝蹴りという超スマートで凶暴なやり方だったということ。オゴゴゴゴゴ。


「モモ先輩は魔術学校で格闘技でも専攻してたのか?」

「殺すぞ、ちゃんと魔術の勉強してたし」


 モモ先輩からちょっとした殺害予告を受けた時。


「イクトくん、ちょっとよろしいですかー?」

 ロキ王子から呼ばれた、何用だろうか。


「お呼びでしょうかロキ部長」

「えぇ、少々厄介なことになりまして」

「と言いますと?」

「実は――」


 彼は重々しそうにしていた口を開き、僕の意表をつくような内容を仄めかした。

 サイラスが辿って来た地球への航行手段は易々と再現できるものじゃないらしい。


 何でもサイラスは異世界アルビーダでも魔界とも呼ばれる危険地帯を乗り越え、その真っ只中にあった縦穴の洞窟を探検し、賢者が残して行ったとされる秘跡の効果を利用して地球に来たらしく。


 貿易ルートとしては危険過ぎる。とロキ部長は言った。

 ならば残された希望はマリーなんだけど。

 マリーはもう二度とロキの言うことは聞かないと決めていたらしい。


 彼女は一度決めたことは頑なに貫き通す、信念の強い人だから。


「ってことでイクトくん、君からマリーさんを説得してくれませんか?」

「無理と言ったら?」

「別の方法を考えますよ。ですが、君も君でやれるだけやってみましょう」

「イクトさんはロキに一応借りがあるだろ?」


 茶髪ガトーは意外と忠誠心に篤いから、ロキ王子に協力的だ。

 その後、僕はマリー達の許へと向かい、彼女の手を取った。


「ここでイチャツクのは駄目なんじゃなかったか?」

「そうだよ、だから僕達は外へ出よう」

「OKOK」

「オリビア達も一緒に行こう、地球を視察しないといけないだろ?」

「それもそうだな、ならば是非案内してくれないか」


 と言う訳で、僕はアルビーダのみんなを連れて地球を観光することにした。


 ◇


 会社を出て、僕達は先ずショッピングモールへとやって来た。


「ここは?」

「アルビーダで言う所の大商店、それも衣服が豊富に揃ってる」

「へぇ、地球の建物ってのはどれもこれも斬新だよな」

「確かにアルビーダと比べてデザインに力入ってるよな」


 普段アルビーダで着ている私服も場違いというほど外しちゃいないけど。

 それでも科学が発展している地球の方がファッションにより富んでいるだろう。


「とりあえずここで着替えを揃えてから地球を観光しよう」

「あいあい、じゃあどんな衣装でイクトを悩殺しましょうかねぇ」


 マリーの一挙手一投足に、心が強かに弾む。


 新しいお召し物を手に取って僕の好みを訊き、逡巡とする彼女の横顔や。

 地球では珍しい外貌から注目を集め、逃れるよう僕の腕に抱き付く彼女。

 彼女の言動の端々から愛を感じられて、僕は感慨してしまう。


 ――もしもマリーがいなくなったら、その時はどうしようかな。


 今考えたってしょうがないことではある。


 適当にウィンドウショッピングして、彼女達の衣服を何点か揃えた後。

 僕達はショッピングモールにあった飲食店に入った。

 平日の昼だったけど、結構人がいるもんなんだな。


「……地球は、アルビーダと違い、心なしか皆笑顔をつくっているな」


 パンツルックのOLファッションに着替えたオリビアは凛然と辺りを観察していた。


「アルビーダと違って格差が少ないんだよ、きっと」

 マリーは地球とアルビーダの違いをそう分析しているらしい。


「実際の所は判らないけど、この国は歴史的な敗戦後――」


 そこで僕は義務教育で習う日本国憲法の成り立ちを、胡乱な記憶を頼りにして彼女達に伝えた。オリビアはマスカルポーネの蒸しパンとボロネーゼパスタを食しながら耳を傾けている。


「私、永住するなら地球がいいです」

「お前の気持ちは分からなくもない」


 マリー達は見るからに喜んでいる。

 彼女達は地球の食事に感銘を覚えているようだった。


「……地球は気に入った?」

「もちろんで御座いますよ。平和だし、食事も美味い」


「それでも社会的な課題はあるんだ。僕はまだ幼い異世界アルビーダの方が、豊かになる可能性を秘めてると思ってる」


 これまでの人生経験を踏まえると、どこの世界に住もうが不満は上がる。

 僕としては、愛妻のマリーと一緒であれば、どこに住もうが関係ない。

 彼女が持ち合わせる驚きと羨望に満ちた魔術の力は――世界を変えるから。


「マリー」

「ん?」

「僕と一緒に、世界を変えてみないか」


 思えば、今まで僕の口からマリーにプロポーズらしいプロポーズは幾度かしたことがある。そのたびに彼女は謹んでお受け致しますと、恭しく承諾してくれたものだ。今口にした台詞もそれに則ったものだったんだけど。


 ちょっと判りにくかっただろうか、そう思った僕は。


「僕と、結婚してくれないか」


 プロポーズを言い直し、羞恥心をふつふつと込み上げさせる。

 今気付いたけど、周りにはオリビアやリュト、モモ先輩がいるんだった。


私「あんまりそわそわ♪」

イクト「してくれー!」


某日、私のライブ中にイクト・マクスウェル・Jrの顔を、観客席の中に見かけました。

そしてライブが最高潮に達しようとした時――


私「……もしかして」

イクト「またぁ?」

私・イクト「「入れ替わってる?」」


って書くぐらい、あとがきのネタに困ってます助けてください(真顔)

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