開花の開幕
追放編も終わり、ここから先は課長編となります。
何やらネタバレ満載の章題ですが、どうか看過してください。
西暦2018年――とは、僕こと吉岡イクトが異世界アルビーダに転生した年だ。
西暦2018年がどんな年だったか?
僕の知見では『追放』とか『成り上がり』が一世風靡していた年だと思う。
二度に亘って言えば、西暦2018年は僕が転生した年だ。
転生とは生まれ変わることを意味するから、僕のケースだと転生じゃないのでは。
無論、僕にだとてその疑念はある。
しかし、同窓会の席から異世界アルビーダに飛ばされたあの現象を、転生と呼ばずして何と言えばいい。そう思考した時、僕は一周めぐって転生としか言えないだろうと結論立てた。
拝啓、姉さんへ。
唐突に地球からいなくなってすいません。
鬼のような貴方でも、きっと、恐らく心配してくれていることでしょう。
でも僕は異世界アルビーダでの暮らしが滅法気に入っています。
ですから、どうか探さないでください。
敬具。
エルフの国アルフヘイムにやって来た僕は未だ大師匠グッタモの指南の下、ジーナさんと一緒に魔石加工の修行に明け暮れていた。グッタモにどのくらい修行を積めば免許皆伝になるのか尋ねた所、早くても3年から4年は掛かるものらしい。
不思議なことにアルフヘイムでの生活はすべて保障されている。
ジーナさんは後が怖いと言っていたが、僕は楽観的に享受していた。
僕が目標としているスライム創造の夢は今も変わってなくて。
一刻でも早くジョージの相棒をつくれるように工房で日々切磋琢磨している。
「イクトっちが話す地球とやらにいつか行ってみたいな」
大師匠のグッタモはどうやら地球に興味があるみたいだ。
「ええ~、グッタモさんは私を出し抜くつもり? なんですか」
するとグッタモの弟子の一人であるミーシャが妖艶な声色でこういう。
彼女は灰色のロングヘアーと碧い瞳を持ったエロフの中のエロフ。
その端整な唇で幾人の男と愛を語らい、口付けしたものだろうか。
ラプラスのように無作為に男を漁るわけじゃないけど、ミーシャはエロイ。
「出し抜くだとぉ?」
「だってそうじゃないですか、誰よりも早くイクトに近づいたのは私ですよ?」
表現が淫猥に聴こえるのは僕の気のせいだろうか?
「二人は地球のどんな所に興味湧いたんだ?」
「私を待っていてくれる殿方がいる予感がするのよね。と言うのは冗談」
ミーシャは妖艶な雰囲気から一転して普通の口調に戻らせる。
「コスメ・環境・発達した科学、地球への興味は尽きないわ」
どうやらミーシャは僕の話を聞きかじり、地球への妄想が絶えないようだ。
彼女もそうだけど、いつかマリーやみんなと一緒に地球に行けたらいいな。
その時は僕のなけなしの財を投げ打ってみんなに奉仕するよ。
「お腹ー」
「待ってくれジョージ、今大事な所だから」
「そかー」
魔石加工に熱中しているとお腹を空かせたジョージが近寄って来た。
あれからジョージもすくすくと成長し、端的な会話なら出来るようになっていた。
まるで子供のようなジョージをないがしろにして参考文献を読み漁り。
僕は失われた技法の再現を試みている。
そんな折だった、僕が加工していた魔石が暴走と呼ばれる危険な現象を起こしたのは。
「イクトっち、今すぐ魔石を離せ!」
「大丈夫です! 上手くやってみせる!」
加工していたのは乳白色の魔石で、移動魔術の代物だった。
魔石は微振動を起こし、やがて激しく震え始める。
「バッカ野郎! 魔石にこちらの都合は――」
グッタモが強硬な僕に駆け寄ろうとした時、魔石は夥しい爆発を起こしたんだ。
そしたら僕は再び『転生』と呼ばれる現象に遭ってしまったようで。
地球へと、舞い戻ってしまった。
これは僕ことイクト・マクスウェル・Jrが魔石生成能力に次ぐ、新たなチート能力に目覚めた時の物語だ。




