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他の誰でもない、僕なんだ


「ようこそ皆さん、我らが国アルフヘイムへ」


 この国の代表補佐を務めるカインさんは軽やかに前に躍り出ると、恭しくお辞儀する。


「初めて訪れる異国の風景に、皆さん驚かれている様子ですね」

「見事なものだ」


 そう言い、エルフの国の景観を讃えたのは師匠のジーナさんだった。

 師匠は滅多なことでは褒め言葉を使わない。


「恐縮の限りです、皆さんのご到着を一同待望しておりました」

 それはこちらとしても大変ありがたいけど……しかし。


 しかし、エルフというのは皆おっぱいでかいな、爆!

 あと全体的に顔立ちが似ている。

 みんなカインさんのように静謐な雰囲気を漂わせていた。


「早速ですが、イクト様、ならびに賢者の孫娘様は僕に付いて来て下さい」

「私達はどうすればいい」

「オリビア達はそちらに居る」

「私の名はミカエラと言い、カインの姉に当たります。他の皆さんの案内役を我が主アカシアより仰せつかっております故」


 爆乳エルフ(推定胸囲100センチ)がオリビア達の案内をしてくれるらしい。


「言うに事欠いてその他大勢扱いされる身になってみろ」

「細かいこと言うでないオリビア」

「しかし父上」


 ああ、バルバトス三世は露骨に爆乳エロフ達に色目を使っている。

 英雄色を好む、ならばここは彼の動向を静観するとしよう。


 それで後でこっそり、エルフのおっぱいはどんな塩梅だったか聞いて愉悦に浸かるんだ。

 バインバインなのか、たゆんたゆんなのか、今から楽しみでしょうがねぇ。


「カインさん、僕達はどこへ向かうんですか?」

「早速ですがお二人にはこの国の代表に会って頂きます」


 アカシア様と呼ばれるエルフにか。

 一体どんなエルフなのかな。


「どんな人だと思う?」

「エルフの長だからな、きっと怖いくらい凄艶なんじゃない?」


 マリーと二人、先を行くカインさんの後に付いて行くと、出で立ちを揃えた近衛兵がどこからともなく現れ、僕らの警護に当たり始めた。ロキ王子とガトーといい、近衛兵はもういいって、嫌な予感しかしないって。


「それと、その人はとても段取りが良さそうだ。さぞ威厳があるんだろうな」

「そうですよ、アカシア様は国一番の居丈高ですから、気を付けてくださいね」


 つまり、今から会うアカシアというエルフは国宝級の美貌を誇り。

 部下から圧倒的な信望を受けていて。

 それでいて女王様気質の爆・乳!! の予感が否めない人か。


「……あの大樹は?」

「世界樹と呼ばれる品種の一本ですね、国の象徴としてあります」


 僕らはエルフの国、アルフヘイムの首都の中央区に向かっているようだ。

 来て早々思ったように、この国は光の芸術のように煌々としていた。

 恐らく光の正体は魔石なのだろうけど、僕の見識にはない。


 光の濁流に意識を奪われながらカインさんの後を付いて行った。

 街の外れからでも遠望出来ていた大樹にゆっくりとした歩みで近づく。


 世界樹に近づくにつれ、僕の意識は陶酔して行った感覚だ。

 隣に居るマリーを見やると、平然とした面持ちで。

 彼女の横顔を目にしただけで胸が高鳴るのだ。


 ◇


「イクト」

「サイラス、クロエさんと一緒に来てくれたのか」


 アカシアさんとの会合を終えた僕とマリーは再びカインさんの案内でこの国の滞在予定地である首都の近郊へ向かうと、そこには衣服が少しくたびれた盟友サイラスとその連れであるクロエさんが待っていた。


 サイラスは今回の騒動の前に旅立っていたものだから。

 でもちゃんとここへ辿り着けたみたいで何よりだ。


「ここに寝泊まりするって聞いたけど、何もない」


 クロエさんは開けた場所を見て、寂しそうに口にした。


「ここがそうなんですか?」


 彼女の言葉に追従するように、僕はカインさんに訳を質す。


「はい、そうです。イクト様達には今日からここで暮らして貰います。どういうことかと言いますと、これは我が国が誇る魔石加工の職人からのお達しでして、魔石加工の職人は先ず、自分の工房をその手で作り上げることから始まるのだと仰ってました」


「いや、分からなくもないけど、何年計画なんだよ」


 みんなで一緒に工房を立ち上げるとしても、膨大な時間がいる。

 どんだけ先が長いんだ。


「他のみんなは?」

「俺達はここに着いたばかりでな、他の皆のことは知らない」

「じゃあどうやってここに辿り着いたんだよ? 誰かに聞いたのか?」


 マリーがそう問えば、クロエさんは頷いていた。

 僕達がこの国にやって来るのは国民全員が知り得ている情報らしい。

 この国のエルフ達は僕達をどのように思っているのか、若干興味ある。


「ここで待っているのもなんですし、探しに行ってみたらどうですか? 僕がここで待っていますから、後は皆さんが道に迷わなければいずれ会えますよ」


「親切にありがとう御座います、そしたらサイラス、僕達と一緒にこの街を観光しようよ」

「ああ、そうしよう」


 頼もしい付き添いを得て、エロフの国を少し散策し始めた。

 だったはずなんだけど……。


「どうしたイクト?」

「風邪かも知れない、何か意識がボっとするというか」

「じゃあどこかで休んでいくか? 余り無理するな」

「いや、体調的には問題ないんだ。ただ狐に化かされている感覚というか」


 何だ、これ?

 エルフの国の随所に置かれている光が、膨らんだり萎んだりしている。


「……きっと、この光の正体は幻惑の魔術だね」

「幻惑の魔術?」

「ああ、やっぱそうだったんだ」


 クロエさんの一言に、マリーは確信を得たらしい。


「とても強力だから、注意した方がいい」

「なるほど、街全体に幻惑の魔術敷き、外敵から守っているのか」


 注意を喚起するクロエさんと、街を観察しているサイラスは平気そうだ。

 マリーに至っては欠伸を掻いてへっちゃらそうにしている。


「僕以外の三人は平気そうだな……くそ、やってくれるなエロフどもめ」

「平気かイクト?」

「平気だけど、いや、正直に言えば目が眩む」


 街に置かれた光は誘蛾灯のように僕を惹きつける。

 こうなると他のみんなが心配だ。

 一刻も早くリュト達を見つけだすべく、僕は中空へと移動した。


「……」

 結界魔術を足場代わりにして、街を鳥瞰しているが。

 幻惑の魔術の光は見渡す限り続いていた。

「……リュトォ! オリビア! モモ! 僕の声が聴こえたら返事してくれ!」


 普段から声を張り上げない僕の声量では全然駄目だ。

 叫んでも街の雑踏でかき消されてしまう。


 しかし、それでも僕はみんなを呼び続けた。

 こうしてる間にも、みんなエロフの魔手に堕ちてるかも知れないんだ。


「イクト、ここは私に任せて貰えませんか?」

「マリー」

「そんな不安そうな顏するなって、お前が不安がると私も動揺しちゃうだろ。ってことで、賢者の再来と呼ばれた孫娘のマリー・ルヴォギンスの大魔術を篤とご覧あれ」


 思えば、彼女との同居生活は常に驚きと羨望で溢れていた。


 これまでは地球で暮らし、科学によって守れた生活に耽溺していたが。

 この世界で彼女と出逢って以来、ファンタスティックな生活にのめり込むよう嵌って行ったと思う。


 マリーが祈りを捧げるよう呪文を詠唱すると。

 エルフの国の幻惑光が一つ、また一つと空に立ち昇る。


 空に浮かんだ光は街の中央にある世界樹の前に集まり、彼女のメッセージを書き記した。


『親愛なるアルフヘイムの皆さんへ、賢者の孫娘である私、マリー・ルヴォギンスは最愛の夫イクト・マクスウェル・Jrと共に本日よりこの国の一住民として御厄介になります。つきましては今日からお世話になるお礼と致しまして、私からささやかなメッセージを贈ります。皆さんどうぞ空にご注目下さい。追伸、オリビア、リュト、モモそれから今迷子になってるであろう私の仲間連中に告ぐ。全員即時元居た場所に戻れ。あんまりイクトに心配掛けるなバーカ』


 その日から賢者の孫娘、マリー・ルヴォギンスの力はエルフの国に於いても認められるようになった。

 彼女は底の知れない力で、集めた光を花火のように舞い散らしたのだ。


 その光景を敢えて言葉にするなら、光の粒子を使ったサンドアート。

 集められた光はマリーに誘導されて琳派のような芸術美を魅せていた。


 幾重にも織り成されたその輝きに、エルフのみんなはすっかり魅了されたようだ。


「イクト、ちょっとは私を見直したか?」


 魔術で光を繰っているマリーは、悪戯な笑みを浮かべてそう言う。

 マリーに魅了されたエルフ達は、彼女に憧れるような眼差しを向けているけど。


 彼女の魅力に誰よりも落ちているのは他でもない、夫である僕なんだ。


フェイウォンの『アイズオンミー』に嵌ってますが。

あの楽曲って、洋楽でいいのでしょうか?


某所ではアイズオンミーの討論が繰り広げられている。

としたら、私はその討論に混ざってみたいです。

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