禁欲後
お見合いが終わった後、僕はカインさんを家に招待した。
彼が出会ってすぐに口にした前世の話は嘘臭いというか。
まるで彼の創作のようなご都合臭が覗える。
「ピゴー」
「君はジョージ! 我が愛息とこんな所で再会できるとは」
「カユウマー」
彼の言い振りだと、ジョージは前世でのオリビアとの間に出来た子供らしい。
「師匠、もしかしてその方は」
「君はリュト?」
「えぇ、貴方がカイン様で宜しかったでしょうか」
「気安くしないでくれ、君は僕達を裏切った逆賊だから」
何と言えばいいんだろう、名前は合ってるんだけど、偶然っぽいんだよな。
それともそういう魔術があるんじゃないか?
「マリー、エルフって何か特殊な魔術を保有してるんじゃないか?」
「あー、そういや昔聞いたことがあるな。エルフの眼は特別だって」
「その話詳しく」
「相当昔のことだし、ちょろっと耳にした程度だから覚えてない」
僕のサブカル脳を漁ると、エルフの眼は相手のステータスが表示されるような機能を有していると思われる。例えば名前だったり、HPゲージだったり。
彼らには他にも色々と特技がありそうだ、だってエルフだもの。
「カインさん、エルフ族の文献にスライムの項目があったりしませんか?」
「あるのではないでしょうか、もっとも、僕は把握してない」
「そうですか……」
ジョージの生態について知ってる人はほとんどいないらしい。
むしろ僕の方が彼らよりも熟知してるのではと錯覚するほどだ。
「……賢者ブライアンであれば、知ってるでしょう」
「あの人は一度会ったきり、姿を消しましたから」
「そうなのですか?」
「付け加えれば、彼はもう人間じゃない、人間をやめた人間じゃない何かですよ」
思いの外、僕は賢者に対し薄情だった。
彼の救いの手でマリーと再会出来たけど、怖いんだ。
彼はどうしようもない矛盾を平然と抱えている。
賢者を尊崇していると、間違いなく火傷するだろう。
「……であれば、エルフの年配の方の中に、スライムに付いて知ってる者もいるでしょう。一度我々の国に来てみませんか? 歓迎しますよ」
「ありがとう、今取り掛かってる仕事が終わったらそうさせて貰おうかな」
その時はサイラスも連れて。
サイラスは新しい情景を好事している傾向にあるから、きっと喜ぶ。
「ただいまー……何? もしかしてエロフ?」
モモさんエロフちゃう、エルフや。
「君はモモか、こんな所で会うとは奇遇だね」
「貴方名前は?」
「思い出せ」
「は?」
「君と僕は前世でよき相棒だった、思い出すんだ」
「あぁ、お前面倒な奴ってことか」
モモさん、それ言っちゃあかん。
モモの不遜な態度もそうだけど、ラプラスが黙々と家事してるのが怖い。
「何か? 私の体を求めるように熱視線おくらないでくれませんか」
「彼に対しては欲情しないのか?」
「欲情しない? エルフに対し、そのような貞操観念を持つ鉄面皮がいるのなら是非教えて頂きたい」
このビッチ、やる気満々だ。
欲情し過ぎて言葉遣いが変になっている。
ラプラスの欲望に気圧されていると、僕の肩を誰かが叩く。
こんなことするのはマリーぐらいしか見当つかなくて、僕はその手を強く握りしめた。
「離せ」
「何だ、誰かと思えば師匠ですか。マリーかと思いましたよ」
振り返ると、ジーナさんは茫漠な胸の双丘を誇らしく湛えている。
彼女の胸の谷間を見詰めていると、銀河に意識が飛びそうだ、爆!
「私に用があったんじゃないのか? ルガートがそう言ってた」
「そうです、実はスライムについて訊きたかったんです」
「スライム?」
「その様子だと余り存じ上げない様子ですね」
「うん、そうだな」
何と言うか、師匠から女性フェロモンのような馥郁が漂う。
師匠の体は鉄錆や油臭さも混ざっていたので、僕は師匠にお風呂を促した。
「たまには一緒に入るか?」
「結構ですよ、マリーが嫉妬しちゃいますから」
「ならその悲痛な目付きはやめろ、それと泣くな」
ば、ちが! これは心の汗だ!
ちが、僕は決して、違うんだよぉぉぉ~!
その時、僕の背後に居た悪魔が魔手を伸ばした。
「エルフの彼との前哨戦、付き合ってくれますねイクト」
「絶界陣!」
「ッチ、何をするのですか」
「僕の操は、マリー以外にくれてやらajkfdw」
「殺生じゃないでfjkdwr」
人間も悪魔も、禁欲が過ぎると発言が読解不可能になるんだなって。
僕ことイクト・マクスウェル・Jr(21歳)は実感しました、まる。
――翌朝。
「イクトもラプラスも顏テッカテカしてんな」
とモモが言及したもので、僕は居た堪れない気持ちになった。
「よく見たらマリーの顏もテッカテカしてんな」
ブヒー!!
そのよ、おびただしいおーく(わたし)のだんまつまがげっこうのもとにとどろいた。
って言う、復活の呪文、ド〇クエで使えませんかね?
復活の呪文縛りのなろう小説、待ってます(鼻ほじ)




