黒衣のドレスのオリビアと
前略、読者の皆様へ。
昨夜は投稿未遂を犯してしまい、大変申し訳ありません。
いや、予約投稿をしていたんですけどね?
二日連続で同時刻の予約投稿はできない模様です。
バグなのかなぁorz
オリビアは煌々とした白髪を後ろで結って、艶色の黒いドレスに身を包んだ。
きめ細かい彼女の褐色の肌と黒いドレスの組み合わせは絶妙に色っぽい。
僕とマリーも彼女の付き添いとして、礼装に着替えるが。
今日の主役がオリビアなのは一目瞭然なようだ。
「気合いが入ってますねぇ」
「逆に、今回は気を引き締めてかからないと手酷い目に遭うぞ」
彼女は自身の男運の悪さを疫病神のように見ている。
「では、三人で一斉に参りましょう」
「いってらっしゃい師匠、留守番はお任せください」
「頼んだリュト、余り三つ子と揉めないようにな」
リュトの見送りを受け、僕達三人はカガトさんの居る王都の城宿へ移動した。
「これはマリー様、イクト様、そしてオリビア様、よくぞお越しくださいました」
「久しぶりカガト」
「お久しぶりで御座います……今回は何用でしょうか?」
マリーは朗らかに彼に挨拶していた。
思えば彼がロキ王子に加担したあの一件は、ちょっと腑に落ちない。
「今回は、父、バルバトス三世がエルフ族のカインとやらをここに連れて来ているはずだ。私は彼に会いに来た」
「では応接室にてお待ちください、只今呼んで参ります」
「ゆっくりでいいぞ」
「畏まりました」
豪胆な気質をしているオリビアでもさすがに緊張しているようだ。
僕達は城宿の床を踏み鳴らし、玄関の左手にある応接室へと向かう。
応接室にはアンティーク調の唐草模様の長椅子があって、僕達は下手に座った。
「どんな人なんだろうな」
「マリーはエルフ族に会ったことあるの?」
「ないこともないけど、小さい頃のことだからな」
マリーは三人の中で誰よりも鷹揚としている素振りだ。
応接室の机にあった煎餅をむしゃむしゃと食み出した。
「……」
一方、オリビアは足を組んでドレスのスリットを広げている。
僕だけが唯一かしこまり、両手を両ひざの上に置いて先方を待った。
「二人とも、そろそろ来るだろうからしゃんとしよう」
「何で?」
「地球でのお見合いの礼儀だからさ」
「ふーん」
そう言うとマリーは煎餅の食べかすを手で払い、両手を組んだ。
オリビアは依然、姿勢を変えなかったので彼女の組まれた足をぽんぽんと叩く。
「……」
しかし彼女は気付いてない様だ。
今なら多少の悪戯も気付かれないぜぇ、と僕の中のデーモンエロゲ閣下は囁く。
「お待たせ致しました」
その時だった、応接室の入り口にカガトさんが現れた。
彼らがやって来たのを受けて僕らは席から立ちあがる。
「どうぞ、お入りくださいカイン様」
カガトさんに招かれ、応接室に入って来た噂の彼は。
「……お久しぶりにしております」
開口一番、不可思議な発言を残した。
白金色に染まった精緻な毛髪をなびかせ、恭しい雰囲気を放ち。
正々堂々と屹立している。
その姿勢をバルバトス三世は認め、オリビアを紹介するほど気に入ったのだろう。
「久しぶりとは?」
「忘れるのも無理はありません、僕と貴方は前世で結ばれていたのです」
「前世……? いや、前世の話自体は否定しないが、そんな記憶、私にはない」
するとオリビアは僕を一瞥した。
「まぁ立ち話もなんですし、腰を下ろしてゆっくりと話しましょう」
僕の言葉に四人は一堂に椅子に座った。
何しろこれが人生初の仲人役。
くれぐれも失態を犯さないよう気を付けよう。
大丈夫、困った時は「後は若い人に任せて」と言って逃げればいい。
「久しぶり、オリビア」
「……私は覚えてないと言っているだろ」
やれやれ、後は若い人に任せて。
と、初っ端から言いたくなるほど、オリビアの語調は攻撃的だ。
「先ずは自己紹介でもしたらどうでしょうか?」
「そうですね。僕の名はカイン、エルフ族の穏健派と呼ばれるムルジア連合で代表補佐をしています」
僕はカインさんの素性を手元に置いてあったメモに書き留めた。
彼から寄越される未知の情報は後々役に立つ可能性もあるしな。
「その若さで代表補佐とは、さぞ出世頭なのでしょう。私の名はオリビア、今は亡きバルバトス王国で第三王女をしておりました」
「若いと言っても、エルフは長寿の種族ですから、僕は今年で五十七になります」
「それは種族全体に言えるのでしょうから、やはりカイン殿は有能なのだと私は考えます」
オリビアは彼の役位の高さに目を付けるよう会話を紡ぎ始めた。
では、後はお若いお二人に任せて。
と言って退席しても良さそうなほど、いい雰囲気だ。
「カイン殿は普段どんな生活を送っていらっしゃるので?」
「僕は代表であるアカシア様の手足となって、奴隷のように酷使されてますよ。冗談抜きで」
「……待遇はどんな感じなのでしょうか? 例えばお給金の方は」
「お給金はちゃんと頂いています、貴方との新生活を保障出来るぐらいには」
オリビアはまた僕を見やり、指差した。
「彼の名はイクトと言いまして、こいつの場合ですとアルビダ金貨で月に二百枚は稼ぐほどの高給取りなんですが、私は今こいつに養ってもらっている。と言っても過言ではなくてですね」
「へぇ、それは凄い」
「イクトはお見合いに関係ないだろ」
マリーは今の話題を断ち切るようにそう言う。
「彼女は世界を救ったとされる賢者ブライアンの孫娘で、マリーと言います。二人とも私の良き友人です」
「……それは本当ですか?」
「家の爺さんが何か?」
「ああ、その様子だと知らないのですね……無理もないです」
賢者ブライアン、彼はその高名さゆえに、どこへ行っても顔が知れている。
彼の行く所にイベントはある。
そう断言できるぐらい彼はトリックスターなようだった。
「賢者ブライアンは前世での僕とオリビアの宿敵でしてね。僕達は泣く泣く彼に殺されたんです」
「失礼を承知で言うが」
「何でしょう?」
「私と貴方の前世は、どんなものだったんだ?」
「僕と貴方の前世は、一匹のオークと一人の麗しい姫だったんです」
オリビアが問うと、彼は嫣然と微笑み、妄言を口にした。
彼はその後もオリビアとの前世を話してくれたんだけど。
どれもこれも同人臭さが拭えない。
いや、マジで。




