表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/97

三つのG


 ジョージのことでてんやわんやしていると、背後から轟音が上がる。


「全員大人しくしろ!!」


 聞き覚えのある声に、僕とマリーはそそくさとジョージを救出。

 そしてマリーの移動魔術で距離を取った。


「何考えてるんだあの女、武力行使してまで沈静させようとするなっつーの」


 マリーの言う通りで、僕達は厄介事に巻き込まれないよう逃げたんだ。


「彼女は出逢った時から何も変わっておりませんね」

「「居たのかラプラス」」


 遠巻きに大聖堂前の石段を眺めていると、オリビアが辺りを見回していた、拙いな。


「……イクト! イクトはいないのか!」


 何で僕の名前を怒るように呼んでいらっしゃる?


「お腹ー」

「疲れたんだなジョージ、これでも食べて大人しくしてな」

「ありー」

「何処に居るのだ!? 我が魔剣ディアブラッドの錆になりたいのか!?」


 オリビアさんぇ……どうして彼女は事を荒立てるんだ。

 平和に生きようよ、平和に。


「マリー、ジョージとラプラスを連れて先に帰っててよ」

「そうさせて貰いますよ、頑張れイクト」


 別れ際、マリーとキスをするとラプラスは三回舌打ちする。

 そして居た堪れない空気の中、オリビアに近づき声を掛けた。


「オリビア、どうしたんだ?」

「イクトか。実は先程服を新調しようと選んでいた時に出たんだよ」

「出た? 何が」


 素っ頓狂とする周囲と、一人血相を変えていた彼女との対比は事件性を匂わせていた。この時の僕はジョージの登場にすっかり危機感が薄れていたんだ。僕の中でジョージは平和の象徴だった。


「三つ子だよ、三つ子が私の前に姿を出し語り掛けて来た」

「……それは」

 拙い。


 賢者の言う通りだとすると、彼女達には隠された力があるらしい。

 僕とマリーが決闘する羽目になったのも、彼女達の影響があってのことだと。

 僕達はあの決闘を自分達の意志で選んだと思っていたんだけどな……。


「三つ子はなんて言ってたんだ」

「随分と面白そうなペットを飼い始めましたねと」


 彼女達の狙いはジョージか。

 なら、ジョージを連れて先に帰宅したマリーが心配だ。


「リュト、それからモモ、頼みがある」

「何ですか師匠、僕達に出来ることがあるのなら何でも仰ってください」

「悪いんだけど、ここでクロエさんが帰って来るのを待っててくれないか」


 僕の頼みにモモは視線を斜めに落としていた。


「ッチ、今の私じゃ使い物にならないか。仕方ないわね」

「僕とオリビアで安全を確保するまで、帰って来るんじゃないぞ」


 そう告げ、僕はオリビアの肩に手を置いて家へと移動した。

 帰宅し、リビングに向かうとジョージはマリーにからかわれている。

 ラプラスは今日買った食材を仕分けしつつ「お帰りなさいませ」と迎えた。


「マリー」

「お帰りイクト、オリビアの機嫌は治ったのか?」

「ああ、迷惑掛けたな。どうも最近怒りっぽくていかんな」

「ははっ、自分で言うなよ。笑っちまう」


 オリビアは僕に目配せし、三つ子のことは伏せようとしている。

 何故だ? と、彼女に耳打ちするように訊いてみた。


「……気配を感じるからだよ、奴らの」

「気配?」

「さすがで御座います」


 その時、三つ子から僕達に語り掛けて来た。

 僕とオリビアはすかさず身構え、周囲を警戒した。


「ピゴー?」

「どうしたジョージ」


 マリーの耳には彼女達の声は聴こえてない?


「イクトも何やってるんだ?」

「マリー様に我らの声は届かないようにしてありますので、どうぞご安心を」


 僕らが急に戦闘態勢を取ったからか、リビングは静寂に包まれる。

 しかしラプラスは我関せずと言うかのように料理し始めた。

 恐らくトンカツ定食なのだろう、豚肉を包丁の背でダンダンと叩いている。


「ラプラス、ちょっと手を止めてくれないか」

「何故でしょう」

「五月蠅いから」


 と言えば、ラプラスは豚肉の処理を諦めてキャベツを千切りし始めた。


「ラプラス、とりあえず今は止めてくれないか」

「じゃあ私はどうすればいいのです? イクトの下処理でもすれば宜しいので?」

「イクトの下処理は私の役目だろうな」


 ビッチ! お前のせいでマリーの口から爆弾発言が飛び出ただろ!

 秘密裏に緊迫しているのに、僕のリビドーは著しく昂ってしまった。


「ならここは折衷案として、三人でしっぽりと」


 だからヤメロビィィィチッ!


「クリス、エヴァ、エーデル、今回は何が目的だ」


 卑猥な空気に堪らなくなった僕がそう問い質せば。

 三つ子は正面切って現れるように、リビングの鴨居をくぐる。


「「「とりあえず、お腹が空いたのでご飯を食べさせてください」」」

「ふざけるな! 貴様たちのせいでどれだけの悲しみが生まれたと思っている」


 オリビアは怒声を荒げ、三つ子を叱咤する。


「我らが何かしたとでも仰りたいのでしょうか」

「敬愛するオリビア様達の心の安寧を乱すような真似は致しません」

「何を吹き込まれたのか知りませんが、余り賢者を信用しない方が宜しいのでは?」


「だ!」

 まれと、再度三つ子を叱責しようとしたオリビアを僕は手で制止した。

 制止したんだけど……弾みで彼女のおっぱいに触れてしまい、今は妙な気持ちだ。


「確かに君達の言う通り、あの人は余り信用出来ない」


 この状況で敵勢のような三つ子の意見に加担するほど、賢者は幽玄としていた。

 ――彼は末恐ろしい矛盾感を抱えている。

 例えば愛を口にしながら恋人の首を絞めるかのような、そんな印象だった。


 だからと言って彼が根も葉もないことを吹き込むとも思えない。

 これは賢者と実際に対峙した僕にしか理解出来ないだろうけど。


「いいよ。僕達と一緒にご飯にしよう」

「「「ありがとう御座います」」」


 僕の認可を得ると、三つ子はそそくさとジョージに近づく。

 その足取りはまるでGのようだった。


萌え萌えー、あげぽよー、くぱー(挨拶の意)


世界で一番長い挨拶って、存外日本語だったりしないかなと思う今日この頃。

日本って挨拶に気合い入ってますよね、夜露死苦だとか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ