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ポポピィウ、ピィプゥプゥ♪


「マリー、ジーナさんに相談しに行きたいんだけど、君も来るか?」


 買い物を終え、ラプラスに食料のほとんどを持ってもらった。

 彼女は三〇キロを超える食料を軽々と背負っている、さすがは悪魔だ。


「ジーナさんに? 何の用だよ」

「師匠は博識だから、ジョージに付いて色々知っておこうと思って」

「いいんじゃないですかね? 私もたまにはジーナさんに顏見せないとな」

「ありがとう、だから好きだ」

「私も」


 惚気るようマリーと会話を酌み交わしていると、ラプラスが舌打ちをしていた。

 無視。


「母乳を啜る乳児のように甘々ですね」

 無視。


「無視しないでください、感じちゃいます」

「アノナアっ、そうやって何でもかんでも性的倒錯しないでくれないか」


 しかしこの悪魔は据えた瞳で僕達を観察するように口を噤んでいる。


「今さらイクトが注意した所で治りゃしないって」

「然様かと、ではジーナ様の許へ参りましょうか」

「マリー、ジーナ、ラプラス、好き」


 するとジョージが愛の告白をし始めた。

 きっと僕達の言葉の端を掴んで口にしただけだが。

 ジョージから好きと言われたラプラスは頬を朱に染めるよう。


「生まれて初めてです、スライムに感じちゃったのって」

「ジョージの前だからやめろよ、ジョージはすぐに真似するんだから」


 して、僕達は一路ジーナさんの工房に向かう。


「ああ、いらっしゃいませマリー様、イクト様」

「ジーナさんいる? 私を誰だと思ってるんだね」

「師匠なら今は連日の徹夜作業で」


 またか。

 ジーナさんのバイオリズムは二十四時間じゃなく、八十時間のリサイクルなんだ。

 彼女の健康を考え、早死にしますよって忠告しても聞いてくれない。


 あの爆乳、死ぬ前にその乳を僕の好きな様にさせてくれ。

 とは、愛するマリーの手前口に出来ないトゥフフ。


 ……ここだけの話、ジーナさんには思いがけない一面性がある。

 それは何かといえば、彼女は多重人格なんだ。

 ジーナさんが主人格とすれば、他にも大の男嫌いの副人格もいる。


「どうするイクト?」

「まぁ永遠に寝てる訳じゃないだろうし、今日は帰ろう」

「じゃあこのまま広場に直行するか、手間取らせたなルガート」

「またのお越しをお待ちしております」


 ジーナさんの使い魔の彼は両手を太ももに添え、深々とお辞儀していた。

 師匠がいなかったのは残念だったけど、ジョージだって今日明日にでも死ぬこともないだろう。


 ここは気を長く持ち、師匠が起きて来るのを待つべきだ。

 広場に着くと、大聖堂の石段の前にリュトが居て、あるバンドの楽曲に耳を傾けている。

 

 マリーが毎日のようにモモにアメイジンググレイスを演奏させていたことから、大聖堂の石段前はライブパフォーマーの聖地のような扱いになっていたんだ。リュトが聴いてるということは恐らく――


「リュト」

「あ、お帰りなさい」

「……いい曲だな」

「いえ、まだまだですよ。これじゃあ到底国民に受けない」


 物静かで優しいリュトが誰かを批判するのは珍しいことだ。

 リュトの態度を受けて、僕は演奏者達の素性が元奴隷であるのを推察した。

 ロキ王子の奴隷解放宣言により、王政はかなりロキ王子を責めたようだ。


 しかしロキ王子は奇怪染みた調子で、無理やり王政に要求を飲ませ。

 そして彼は自害したらしい。

 何でも王子は王位継承権を譲る代わりにバックボーンを得たと専らの噂だ。


 彼らの演奏が終わるとリュトは拍手した後彼らに近づき何事か話し込んでいた。彼らのより一層の成長を促すように、多少厳しめに感想の一つでも伝えているのだろう。


「リュトはプロデューサーにでもなるつもりかしらね」

「モモ、今帰りか?」


 そこにマリーの駄目弟子ことモモもやって来た。

 昔は僕と頭二つ分も離れていた身長も伸びて、彼女は綺麗になった。

 マリー譲りの睫毛の長さと発色がいい唇からは色香が漂っている。


「モーモー」

「ハーイジョージ、今日も元気そうね」


 モモは僕の腕の中に居たジョージを猫掴みで奪い、抱擁する。

 ジョージを抱く所作がこなれ過ぎてて、思わず嫉妬の絶許だ。


「今日は偉くお早いお帰りですねモモさん」


 マリーはモモにさん付けしていた。

 彼女達が奏でるアメイジンググレイスは甘美とは言え、やらせ過ぎたのだろう。


「今日は新入生の入学式だったんだけどさー、結構才能ありそうだった」

「それはそれは、モモさんも負けじと頑張れよ」

「ッたり前だろ」


 さすがはモモさん、パネェす。


 僕は彼女から魔石の武防具の依頼を受けているけど断っている。それはモモが魔術学院を卒業した日に取って置きのものを贈ろうと考えているからだ。今の所どんな代物を贈るか計画中。


 王立魔術学院は面白い所で、実力さえあればマリーのようにさっさと卒業出来る。

 しかしそれを望む生徒はほとんどいない。

 例え居たとしてもマリーのように自堕落に生きてる魔術師はいないんだとか。


「何やってるのモモ」

「抱いてるのは?」


 すると、モモ先輩の同級生らしき女生徒たちがやって来た。

 彼女達はモモが抱ているジョージに興味津々だ。


「丁度よかった、ちょっとこの子頼める?」

 と言い、モモは同級生にジョージを渡し、リュトの方へと向かった。


「ちょっといい?」

「何か用ですかモモ?」

「見ちゃいられないの、今から私が指揮するからその通り演奏してみて。大事なのは下積み、それも貴重な経験の上に成り立つ黄金のような時間をどれだけ積み重ねるかなの」


 モモ先輩……貴方は感受性が強過ぎて訳分からないよ。

 と、モモに意識を奪われていると。


「いいのですかイクト」

「いいのですかって?」


 ラプラスは先程同様に無感情な眼差しのまま、ある方向を指差した。


「ピゴー!」

 そこでは女生徒達によるジョージ争奪戦のようなものが巻き起こっていた。

 まるで運動会の大玉送りのように、ジョージが中空を舞っている。


「ピゴー!」

 分かる、分かるぞジョージ、今お前は助けを求めているのだな。


 一刻でも早く君を助けたい所だけど、ワーキャーと姦しくジョージを歓迎する女生徒達を無下に出来ない。そう逡巡していると、先程のバンドがモモの指揮の下、即興で演奏し始めた。彼らは中空を舞うスライムの情景を歌詞にして、さっきの演奏とは大分志向が違ったポップロックを奏でる。


 どうでもいいが、みんな思い思いに生きてるな。



すいません! 今回のサブタイだけは言葉に思い起こせませんでした!

すいません! 私の語彙は日々変動しているんです!

すいません! 二度あることは三度あると言いますし、今後同じ事態も想定しておいてください!


……エクスクラメーションマークって便利だなー。

これを使うだけで、文字表現が真摯的に映える。

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