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一年後


 鬱屈とする頭を抱えながら上体を起こすと、周りのみんなが心配そうにしている。


「……酒臭い、なんか心配かけたみたいで、ごめん」

「どうするイクト、救急車呼んじゃったけど」


 救急車……?

 状況が掴めないけど、とにかく今は誰かに介抱して欲しかった。


 その後、僕は救急車によって一応病院へと向かう。

 同期の浜ちゃんや、浪川が心配そうに様子を覗ってたけど。

 そんなことより、僕はあの世界での記憶を必死に確かめていた。


 夢落ち? そんな馬鹿げた内容の思い出じゃない。

 病院に着くまでの間、僕はあらゆる可能性を否定し続け。

 マリーと過ごした四年間を、絶対忘れようとはしなかった。


 ◇


 それからの僕は、惰性的に生きることを選択した。

 平日はエロゲ会社に勤め、休みの日は外に出歩くことが多くなった。


 異世界アルビーダでの経験を、僕は誰にも教えないようにしている。

 常識的に考えてあの出来事は笑いぐさにされるだけだからだ。


 サイラスが言っていたように僕の精神は他よりも脆い。

 誰かに笑い飛ばされることで、酷く傷つきたくなかった。


 まぁ、何にしろ。


 現在の仕事はそろそろ限界を迎えようとしていた。

 そもそも僕の体感としてはPCに触れるのも二十年振りなんだ。

 完全にPCリテラシーがなくなってしまった僕にエロゲ会社勤務は不可能だった。


 だから僕は弊社を一身上の都合により退社。

 しかるに僕は転職活動を始めようとしたんだけど。

 何分、今の僕は生きる目標を見失っている。


「……マリー、君がいないと息苦しいよ、独りは……辛いよ」


 ならいっそのこと異世界アルビーダの思い出を誰かに吐露し、息を吐けばいい。


 けど笑いぐさにされてしまったら?

 笑われて、彼女達の存在を蔑ろにされてしまったら。


 そう思うとネット上でも打ち明けられない。

 僕の鬱憤は日を追うごとに溜まっていく、嫌な悪循環を抱えていた。


 ◇


 退社してから一年の時が経ってしまった。

 転職活動も上手く行かず、ニート期間を有意義に過ごせず一年が経ってしまう。


 その頃に浜ちゃんから連絡があった。

 浪川も呼んで飲み会でもしようというお誘いだ。


 偶の気分転換にと、その飲み会に出席すると。


「お前は飲むなよ前科者」

「じゃあ僕はオレンジジュースで」


 浪川は開口一番こう言って来て、飲み会メンバーの笑いを誘う。


 僕は目敏かったのだろうか、彼女の薬指に嵌められている指輪が視界に入った。

 訊けば浪川はあの後めでたく結婚していたらしい。


 僕は結婚が決まっていた相手に対し告白してしまったのか。

 でも。


「それを汲み取ってもあの振り方はないだろ」

「うるせぇんだよ、マリッジブルーみたいなもんなんだよ」


 両者の意見は真っ向からぶつかり、僕は終始押されっ放しだったんだ。

 浪川以外の同級生とも話せたし、この飲み会は一年振りの有意義な時間だった。


 午後十一時を過ぎ、飲み会が解散した後――

 僕は独り、最寄り公園のベンチで酒盛りをしようと思った。

 ぶっちゃけお酒は不得意だけど、雰囲気から発泡酒を選んだ。


 深夜の公園は酷く静かだった、それに寒いし。

 こんな時、知り合いは酒を飲めば温かくなると言ったのを鵜呑みにするようプルタブを引く。


「御相伴に預かっても宜しいですかな」

「……はい?」

「いやね、懐かしい顔を見たもので、一緒にどうかと思いまして」


 プルタブが小気味いい音を出した時、とある男性が僕に話し掛けて来た。

 彼はいそいそと僕の横に座ると、酒の肴として乾物を取り出す。


「どうぞ」

「……どうも」


「お仕事は順調ですか?」

「仕事は……辞めました」

「それまたどうして?」


「部長、何やってるんすか」

「おぉ柏原くん、君も一緒にどうだい」


 はいぃぃ~?


 独りで飲み明かそうとすれば、僕は二人のサラリーマンに囲まれてしまう。

 一人はバーコード頭の、恐らく五十台と。

 もう一人は茶髪という社会人に不釣り合いな格好をした二十代。


「いやぁ、今年はもう桜散ってしまったけど、こんな奇遇があるから人生捨てたものじゃない。そう思いませんか」


 五十台の男性はやけにフレンドリーだった。

 一方の茶髪さんはスマホを弄って、話しに加わる気はなさそうだ。


「何か?」

「いや、言ってる意味がちょっと判らなくて」

「ん? そう言われても私もちょっと理解出来ないなぁ」

「こっちで会うのは初めてだから、困惑して当然じゃないすか」


 奥に腰掛けていた茶髪の彼の発言で、僕はようやく二人の素性が推察出来た。

 けど……どっちが、どっちだ?


「あの」

「はい、何でしょう」

「ど……ちが、ロキ王子なんですか」

「ああ、私ですよ」


 僕の推測は的を射ていた。


 僕に話し掛けて来た初老の男性達の正体は、異世界アルビーダでロキ王子とその近衛兵隊長をやっていたガトーの他いない。僕がこっちに帰還しているのならば、こいつらが今ここに居てもおかしくはなかった。


ズガガガガガ! ズガーン!


……喧しくしてしまってすいません、単なるイビキです。

今宵も予約投稿という愚行を犯すことをどうかお許しください。

理由はお察しの通り、今日は投稿する時間帯に眠っているからです。


ズガンズドーン! ズドーン……!!!!

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