最強には最弱を
唐突に今作のネタバレを申し上げますと。
構想としては、最期はマリーとのキスで締めくくりたいと考えております。
読者の皆様にはイクトがマリーとキスする度に \(^o^)/オワタ と言う反応を期待しております。
「どうだったガトー? 外の様子は」
「調べさせたが、原因不明だそうだ」
「つっかえねー」
「誰だってお前のような無能から言われたくないだろう」
場外で起きた大爆発に、決闘は一時中断されていた。
その間、僕はオリビアから酷い叱責を受けている。
「羨ましい、出来れば私もあんな関係性を持ちたい」
「カガト、貴方は敵の一味ですよね?」
「それが何か?」
「なら何故私達の輪に紛れているのです」
「それが敗北者の美学だからでしょう」
元凶はあそこで談笑している親子のせいなのに。
「まぁいい、イクト! 決闘を再開するぞ」
その時、ロキ王子から救いの手が差し伸べられた。
彼の背後でガトーさんが僕を疑うように睨み付けているが、気にしない。
「サイラス、頼んだ」
「任せろ」
単純な台詞なのに、彼から絶大な安心感を貰った。
サイラスはこの場に居る誰よりも強い。
無論、彼は僕よりも強い。
オリビアが勝利すれば、僕らの勝ちは固いと思った理由の一つは彼だ。
ラプラスの黒星は予想出来ていたが、逆に彼の白星も安易に予想出来る。
けど――ロキ王子はその情報を逆手に取ったようだ。
「師匠」
「どうしたリュト」
「……僕は師匠に、お礼を言っても感謝し切れない」
――ですが。
「ですが、師匠の大事なものがマリーさんであるように」
「リュトくーん、君の出番だなぁ」
え……?
「僕にとっての最大目標も師匠はご存知ですよね」
最強には、最弱を宛がう。
どうせ敵わないのなら、被害を最小限に留め。
そして敵に最大級の損害を与える。
ロキ王子はカガトさんのみならず、リュトまでも傀儡にしていたようだ。
「ロキ王子に何を言われた」
「彼は僕が試合に出る代わりに、僕の願いを叶えてくれます」
「もし、その言葉を反故にされたら、とか考えないのか」
「これを」
リュトはそう言うと、僕達が生み出したヒット商品である魔石のカメラを渡す。
「これは?」
「ロキ王子による、奴隷解放令の宣言の証拠が映ってます」
「……」
「そんな顏しないで下さい師匠、単なる奴隷がなるようになっただけです」
「僕は……今どんな顏をしてるんだ」
「さぁ、でも、ありがとう御座います……今までお世話になりました」
リュトは誠実な子だった。
彼の命とマリーの命を天秤に掛けるような状況に追い込まれ。
恐らく、僕は、マリーへの愛情を少し失ったと思うんだ。
僕はこれから愛弟子を失う。
その事実が、僕をまた孤独な心境に貶めた。
「……寝返ったか」
「何とでも仰ってください」
「悪いが、自分のエゴのために動く奴はこの俺が裁く」
「貴方の方こそ酷いエゴが剥き出ている、傲慢だ」
「周りを見てみろ、お前の師の顏、敵の大将の顔を」
リュトを誑し込めたロキ王子は彼を蔑んだ目で見ているようだった。
――お前は道具にしか過ぎない。
「人間ってさ、時に割り切るんだよな。出ないと人間味がなくなる、けど、人情は失われる。すっげー矛盾を抱えるけど、それでも心臓は鼓動する。まぁ何が言いたいのかというと、バイバイ」
「貴方が冷徹になろうとも、あの約束だけは守って貰う」
「お? その意地を俺は認め、ちょっと人情が回復した、ありがとう」
残酷だった。
齢十歳から奴隷として、いつ処分されるか不安だったとリュトは言っていた。
リュトは僕に拾われ、いつしか同じ奴隷の身分にあるみんなを助けると誓う。
その言葉を聞いた僕は、何て立派なんだろうと思い、彼の将来を楽しみにしてた。
だからきっと、この時の僕は泣いていたんだと思う。
「すぁああああああさぁさぁ! 次の試合は東方の国最強の剣士バーサス! イクト一味の裏切り者だぜぇええええ! 勧善懲悪ってこのこと! このこと!」
「どうやって死にたい、お前が望むようにするぞ」
「……出来るだけ、苦しめて下さい」
「分かった」
もう止めてくれ……!
リュトが苦鳴を上げるたび、僕は、耐えられなくて。
どうして初戦を逃すような真似をしたのだろう。
どうして次鋒を諦めた。
どちらかの試合を獲っていれば、彼を救えたのに。
――僕が賢者の孫娘を諦めれば、彼を救えるのに。
「安心しろ、次で最期だ」
「っ……師匠……」
僕は、意識的に彼の死から目を背けてしまった。
「ウォオオオオ! 副将戦も決! チャァアアアアク! 胸が熱くなった」
「内罰的なのは、師匠譲りか」
リュトを失って、僕は覚悟が決まった。
「お前の出番だぞイクト」
下を俯き、決意をもたげると、サイラスが帰って来る。
「……リュトは?」
「ここに」
そして僕はかわり果てたリュトの亡骸を見ては。
夥しい悲鳴を、上げるだけだった。




