裂帛の声と共に。
「ひょんなことになったなイクト」
「ごめんサイラス、君にもこの決闘に参加して欲しい」
「それは構わない」
きっと彼なら引き受けてくれると思った。
彼とは長き年月をかけて修行し合った仲だ。
僕は彼の表裏を知っているし、彼は僕の清濁を知っている。
サイラスは正に心の友だった。
「で、五人一組だと言っていたが、誰が出場する。無論私は出るぞイクト」
「オリビアが出るのなら俺も一肌脱がせて貰おうか」
「父上は長旅から帰って来たばかりではないですか」
「案ずることはない、俺はまだ若い連中に後れを取ったりしない」
オリビアとバルバトス三世の参加も決まり。
僕はラプラスにも出場するよう要請し、これで五人そろう。
「私に命を賭せと?」
「君の主人の一大事なんだから」
「はぁ?」
「後で僕の知り合いを紹介してあげるから」
「畏まりました」
僕の打診を受けたラプラスは即座に頭を垂れた。
姉さん、僕はこの悪魔が心の底から信用できません。
「で、初戦は誰が出る?」
オリビアは身を乗り出して戦意を高めていた。
彼女の意気に呼応するように、魔石の剣がやけに存在感を放っている。
「この試合は五試合制した方の勝ちと言ってたけど、出来れば王子達を圧倒したい」
「イクトと事前に話し合った結果、敵に恐怖を叩きつける戦法を取ることにした」
「そうすれば、今後同じ事態が起きることは少なくなると思うんだ」
サイラスと決めた作戦をみんなに伝えると、バルバトス三世が哄笑を上げた。
「よかろう、ならば先鋒は俺が引き受けるとしよう。大事なのはイクトの虎威を示すことにあると言うのなら、無論イクトは大将を務めるがいい」
僕達の出場順が決まると、王子達も選手を決めたようだ。
初戦のカードはバルバトス三世と、相手は――
「お初目に掛かる、確か其方が今回の誘拐事件の実行犯だったな」
「……強そうだな」
ガトーさんか、王子達は早速強力なカードを引いて来た。
僕らも彼らも、この初戦を獲りたいらしい。
しかし、僕は未だ二人の真価を知らない。
バルバトス三世の実力であり、ガトーの隠し玉を僕は知らなかった。
だからこの勝負、存外接戦するんじゃないか?
「オリビア様」
「何だクリス」
「私たち三人は念のため場外の警備に当たります」
「……お前らにも父上の雄姿を見届けて欲しかったのだが」
「この決闘でしたら、問題ないかと」
「まぁ……いいだろう、そう言うのであればお前らには周囲の警戒に当たってもらう」
「御意に御座います」
オリビアの家臣である三つ子は場外の警備に向かった。
あの三つ子は頑張り屋であるし、隠された実力を持ってるかもな。
「諸君! 只今より俺の私兵団『緋鷹』とイクト一味の決闘、第一戦を始めるぜ!」
ロキ王子はコロッセオの中央で対峙している二人の横に立ち、審判の真似事をしていた。
「行くぜェ! 盛り上がって行こうぜェ!」
王子の口上に鼓膜をつんざく歓声が巻き起こる。
歓声は円状のコロッセオの石肌に反響し、大気が割れそうだ。
「では第一試合、いざ尋常に、始めッ!!」
王子の裂帛の掛け声と共に、マリーを懸けた決闘は始まった。




